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ガルディナ王国興国記  作者: 桜木 海斗(桜朔)
第一章 新生ドラグニルと運命の出会い
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出会い

まだ獣人に出会えない・・ッ!

「ド………ドラグニル……」


「なんでこんなとこに………」


「それよりこの死体は……」


ざわつき始める村人達に、やや居心地が悪くなるゲオルグだが、ここで立ち去るという選択肢はない。食事と休息を取り、今後の方針を考える時間の捻出をしなければならないし、この死体の山もそのままとはいかないだろう。


「あー………簡単に状況だけ説明する。俺は訳あって放浪している、食糧を欲してたまたま目に付いたここへ先ほど来たが、こいつらがここを襲撃しようとしていたのを見つけたからついでに叩きのめした、以上」


いかにも面倒臭いと言わんばかりの態度であるが、事実面倒なのは変わりない。


村人達はしばらく困惑していたようだが、代表らしき人物が皆を一か所に集め何やら相談し始めた。


<あれ?………なんか自演とか疑われたりしてんのかな?>


確かにこいつらの(盗賊)の襲撃タイミングが見事に被っていたのは事実だが。


だがしかし、それは杞憂であったとすぐに思い知らされる。


村人達が相談を終えたか、ゲオルグの前に横一列に並ぶ。その頃には、様子が気になって出てきた連中も加わり人数も増え、ざっと30人近くにまで増えていた。そして。


「「「我らの村をお守り頂き、ありがとうございます」」」


地面に平伏し、一斉にそう言いながら頭を下げる。それはもう、地面に擦りつける勢いで。


「いや………頭を上げてくれないか?」


「「「ははー」」」


<なんでより深く下げる!?めり込むの!?めり込みたいの!?>


これがドラグニルという存在に対する人間の反応なのか、と、身を持って体感させられた。


「………そう畏まられては、話も出来んじゃないか……」


「どうぞそのままお続け下さい」


「我ら如きが貴方様のご尊顔を拝するなど………」


「恐れ多くてとても……」


もうやだこいつら。


「良い、と言っているんだ。早く上げろ、埋めるぞ」


最早、脅しであるが、こうでもしないと頭を上げなそうなのだ。


ゲオルグのその言葉に、村人達もようやく恐る恐る顔を上げた。その表情は、一様に青ざめている。恐怖か不安か、或いは後ろの死体のせいか、判断つきかねるが。


「とりあえず、この死体は俺が処分しておく。それと、2、3日の逗留の許可と食糧を少し分けてもらいたい。対価となるような物は………こんな鎧でも売れば多少の金になるとは思うのだが……」


そう言って、自らの着込んだ鎧をコンコンと叩いて見せると、村人の一人が青い顔を更に青くして首を横に振った。


「ままままさか、そのような物は頂けません!!」


「む、足らんか」


「滅相もない!!ただそのような見るからにご立派な鎧など、余りにも……」


「なに、俺にとっては大した価値がないのだから気にするな。所詮は鱗、瞬きする間に再生する」


ゲオルグはそう言うが、実は村人の心配しているのはそこではない。竜鱗の鎧。それは純粋な竜という生物が滅んでこの方、精製する素材も技術も失われたものであり、現存する物は片手に数える程しかないのだ。そしてその鎧は、あらゆる攻撃に耐え、魔法すら無力化し、身に着けた者に多くの恩恵を与えるという伝承があり、かつてはその鎧の所有権を巡った戦争すら起きたことがあるのだ。


ゲオルグにしては無価値に等しいものでも、人間にはそうではない。ゲオルグに与えられた知識や価値観は、あくまでドラグニルとしてのものだという事による弊害とも言える勘違いである。


そして村人がここまで強く拒否する本当の理由もそこにある。そんな物を与えられても、始末に負えないのだ。売ろうにも恐らく値段が付けられないし、所有しているという事実がどこかに漏れただけで、何が起こるか分からない。


国が兵士を出してきて渡すよう要求してくる、くらいならまだいい。まずいのは、国にばれないよう手に入れようとする連中が現れる可能性が高いことだ。


貴族や商人、盗賊や他国の間者など、そんなのが現れたらこの村は滅んでしまう。証人を生かしておく理由などないのだから。


「伏してお願い致します。どうかそれだけはご容赦を……」


それゆえの懇願である。


「そこまで言われてはな………」


ゲオルグがそう言った時に流れた安堵の空気を、誰もが共有したことだろう、元凶ゲオルグ以外は。


そしてその元凶は再び頭を悩ませる。


<一方的に施しを受けるというのも嫌だしなあ………他になにかあったか?>


そう思いながら辺りを見渡す。簡素、というかくたびれた家屋に、塀どころか柵もない敷地、岩や地中に固い部分でもあったか歪な形の畑。


<………これならいけるか?>


物はなくとも、力で以て与えられるものならあるはずだ。


「まあ、それにはまず全員の了承を得ねばならない訳だが………」


そう呟きながら村人を見渡す。相も変わらず不安げな表情だ。


「よし、明日、明るい時間に皆を集めて貰えないか?」


「皆を……ですか?」


「ああ、生憎と、分け与えられるような対価が他に思い浮かばない。だからまあ・・・なんだ、せめてもの心尽くしと言うか、暮らしを少しでも楽にできるよう力を貸そう。それで構わないか?」


そう問いかけると、村人達は顔を見合わせ困惑していた。


「詳しいことは明日話す。今日は、とりあえず寝床だけでも貸して貰えないか?」


「は…はあ?………そんでしたら、あ~……デリック、お前んとこ、毛布余ってなかったか?」


「え?……へえ、こないだ街に行った息子のが」


「ならそれをお貸ししよう、場所は俺んとこが一番広いからそこにして………あの、ドラグニル様」


「ゲオルグかスタンフォードで構わんぞ」


「で………では、スタンフォード様、今夜は我が家でお休み下さい。狭くて汚いところではございますが……」


「なに、こちらは好意に甘える身、文句などない」


「か……畏まりました………ではこちらへ」


そう言い立ち上がった男が、ゲオルグを先導するように歩き出し、ゲオルグはそれに続く。


こうして、ゲオルグの異世界一日目の夜は更けていった。

次かその次までに獣人を出したいと思います

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