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ガルディナ王国興国記  作者: 桜木 海斗(桜朔)
第五章 北の大地と来訪者
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成長期

更新再開……なのですが、来週は更新が滞りそうです…

仕事が…仕事が…(泣)


そして300万PV、ユニーク30万、ありがとうございます!!

ニデアの街を訪れかれこれ180日程。


ガルディナの街は、その様相を大きく変貌させていた。


畑は大きく拡張され、その全てに作物が植えてあるわけではないが、広さだけなら半年前の倍近くにもなるだろう。拡張そのものはゲオルグが行ったが、その維持、整備は農業部門の者達がすでに限界を迎えつつあった人員を奮い立たせて受け持ってくれた。特に苦労をかけたニーナやヘレンに、ゲオルグが深く感謝の念を抱いたのは言うまでもない。


畜産では乳製品の開発が始まり、また家畜の数も順調に増加傾向にあり、こちらも人手がかなり厳しくなりつつある。それでも上手く稼働しているのは、ひとえにクルトの手腕によるところだろう。


水産の方も、現在は船の配備数を増やし、順調に軌道に乗りつつある。今まではその規模の小ささ故に人員を遊ばせてしまっていたのが、ようやくフルで動けるようになったこともあり、今や魚介類はこの街での主要な食品となりつつある。しかし、新たに人員を配する際にはまた水泳の訓練から入らねばならないので、少々効率が落ちる可能性があるのが不安要素でもある。そこはティナが上手くやってくれることを信じるしかないだろう。


繊維工業は現在、綿花や麻、染料となる植物の栽培の規模を拡大し、住民の増加に併せて供給の滞ることのないよう指示してある。レオナはよくやってくれているが、それでも1000人規模の増加に対する十分な生産はまだ目処が立たない。なにせ、繊維加工業部門そのものが他の部門より遅れて設立されたのもある。こちらはもう少し長い目で見なければならないだろう。


木工業は専ら家屋の建築に励んでいるが、その技術力の向上は明らかである。数多の家屋の建設をすれば嫌でもスキルアップしようと言うものだ。現在では釘を使わず木材だけで組み立てる工法を考案、試作し、鉄の消費を抑えようという動きまでみせている。彼らはその内、人員を増加したならば別の組織として独立させてもいいかもしれない。今でも木彫りの置物であったり家具作りはしっかりとやっているが、もはや用いる技術や規模が完全に別物だからだ。


鉄工業では最近は金や宝石を用いた装飾品や調度品ばかりを作らせていたが、これもすでに必要とされるであろう数の作成が片付き、今は再び貨幣の製造に取りかかり始めた。次の大規模な住民確保に併せ貨幣制度の導入をゲオルグが検討しているためだ。人口が2000人を超えれば街としての体裁はようやく整うが、それで物々交換や善意での供給などしていてはいつか問題を抱え込むことになるはずだからだ。物と物では時期などによって交換レートに変動が生じてしまうし、収穫出来た作物をただ平等に分配などしていては農業部門の負担が大きい。それ故の貨幣であるが、現在はすでに量産体制に移行した。小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨という項目での生産を確定させた為だ。


ちなみに、それぞれの貨幣の価値としては、日本円に例えると。


小銅貨→十円

銅貨→百円

小銀貨→千円

銀貨→五千円

小金貨→一万円

金貨→五万円


上記のようなレートとなるようにしたいと考えている。貨幣は全般的に人間が用いる物より小振りとしており、その価値を抑えることにしている。あまり額が大きくなっても、まだそれを持てるだけの者はいないであろうからだ。いずれは十万円程度の人間が使っている金貨とほぼ同じ物を大金貨として製造することになるかもしれないが。本当は「円」や「ドル」のような通貨単位を定めたかったのだが、この世界では馴染みがないこと、それ故に浸透に時間がかかる可能性があることを踏まえ断念した。


ちなみに、頭に「小」が付く貨幣はすべて真ん中に穴が空いている。大きさやデザインだけでなくパッと見て判別がつくようにという工夫だ。言うまでもないだろうが、日本の五円玉や五十円玉をモチーフにしている。


彫刻のデザインは、各種族の耳や尾だったり花や作物をモチーフとされたものである。


目下、現在の住民、そして新たにやってくる住民に対しどの程度配布するかを検討中である。また、レート決めや税率の決定などもせねばならず、それでなくとも多忙なゲオルグはその時間をますます削りつつある。


生産が完了した金細工から順次ニデアのエドやレイモンドの元へ運び込み、そのついでに亜人集めの進捗状況の確認や詳細な打ち合わせ。街に戻れば各部門の視察に指導、会議、また新たな土地の開発に資源の確保。そして新たな住民のための衣類、住居、教育カリキュラムの作成に、各部門への人員増加に対する対処法と改善点の洗い出し、と。兎に角時間が不足気味であった。


「………ドラグニルも過労で死ぬのだろうか」


「死ぬには最悪のタイミングだと思うよ?……」


夜、とっくに日も暮れた頃にようやく自分のベッドに寝転んだゲオルグが、フェリスの耳を撫でながら呟き、そして突っ込まれていた。


「まぁな。そもそもこんな状況になっているのも俺自身の行動の結果だからな……故にこの苦労からくる憤りには行き場がない。だからこそこうして癒されている訳だ」


「んっ……でも、ここを乗り切ればここももっと大きく……あっ…ゆ、豊かになるもんね」


時折悩ましい声を上げるフェリス。しかしゲオルグの手がそれで止まることなど有り得ないことをよく知っているため、諌めるようなことも言わない。


「そうだな……しかし、これでしばらく王国では派手な動きが出来なくなるのも確かだ。その間に街の施設や機能を整備し、そろそろ他の国にも伝手を作るべき段階だな」


今はまだエドとレイモンドが入念に計画を練り、国やハルミット教の連中から上手く隠れつつ動いてくれているが、それもいざ1000人超えの亜人を動かせば数日の内に露呈するだろう。彼らも今回ばかりは自分が表立つようなことをせずに、幾つもの仲介を通した上で更に慎重に各地から亜人を集めている。己の立場を守るためには致し方ないだろうし、それ故に200日という期間も設けたのだ。


だが、恐らくこの計画を完遂した後には国内で亜人の動きに注目する連中が出てくるであろうことは自明の理だ。ともすれば、如何に3年や4年の月日を空けた所で効率的かつ秘密裏に集めるのは難しくなるだろう。


それ故、他国へと目を向けるのだ。


「他の国って?…」


「そうだな………エドやレイモンドと話した結果だが、最も多くの亜人が存在すると言われる、北のヴィルヘルム帝国で動いてみようかと思う」


「ヴィ……ヴィルヘルム帝国って……んふっ……あの大国の?」


ヴィルヘルム帝国。大陸北部を一手に握る大国で、人口はおよそ700万から750万人、常備軍は6万近く、最大動員兵力は10万とも15万とも言われる、文句無しの強国。南側各国は互いに協力することで今はまだ凌げているが、どこか一国が崩れればその均衡も破れるだろうと言われている。ただ、帝国はその国土の広さ故に完全な中央集権とは言えず、いざそれだけの戦力を動員しようと思っても準備に数ヵ月かかるという欠点もあるようだが。


「あぁ、獣人やエルフ、ドワーフ、合わせれば8万は下るまい、とのことだ。そこからここへ呼べるのは精々1万が限度かもしれんが…それでも、ここの発展の為には帝国内の者達を無視することは出来ない。故に、早いうちに伝手、あるいは情報源を確保しておきたい」


「成る程……」


「ま、今は目先の1000人だがな……あぁ…どうにもしばらくは楽にはなれそうにない」


「ふぁ…ファイト?…って、はうんっ!…あっ…やっ…んん~!」


他人事のように気安い言葉を掛けてきたフェリスの耳と尾をこれでもかと揉みしだくゲオルグと、それに悶えるフェリス。


これは、束の間の休息。嵐の前の静けさであることは、二人ともよく分かっていた。



新たな住民、新たな制度、新たな土地、何もかもが変わらずにはいられない、そんな、正しく激動の日々であった。

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