幕間2 妹フェリス
なんだかPVと評価がスゴいことになってる・・・
日間ランキング1位!!
週間ランキング8位!!
PV55万突破、ユニーク1万突破!!
破竹の勢いですが、かえって恐ろしいです・・・
ゲオルグの妹となってからというもの、毎日が真新しいものばかりで楽しみが尽きなかった。
ろくに見上げたこともない青空にすら感動し、今までは農作物を荒らす厄介者でしかなかった虫でさえ、いや、やっぱり虫は嫌いである。
蝶々やバッタくらいなら可愛いと思えるが、芋虫や蜘蛛は嫌である。
そんな、年頃の少女らしさと感情を取り戻しつつ、ゲオルグと二人で旅をした。最初は母や兄弟姉妹のことを思うこともあった。だが思い出そうとしても顔が出てこない兄弟、姉妹に、最後に声も掛けてくれなかった母、それら血の繋がった家族をどうでもいいなどとは言わない、勿論、大切な存在に変わりはない。それでもやはり、自分を救ってくれた上に、こうして今も側で自分を守り続けてくれている兄の方が大事である。今の自分にとって、この兄だけが家族であり世界なのだ。
「フェリス、疲れていないか?」
それに、今でもこうして心配そうに声を掛けてくれる彼を見ると、すでに失って久しい家族のことを引き合いに出すのは、なんだか失礼な気がした。
「もう、兄さんは心配性ですね、ついさっき休憩したばかりじゃないですか」
「兄が妹を心配して何が悪い」
兄と妹、まだこの関係に違和感がない訳ではない。なにせ相手はドラグニル、それに恩人だ。そんな人を兄と呼び慕うことに、僅かながら抵抗がある。
「それに、いくら怪我は治ったと言っても、フェリスはまだ体力もしっかりついてはいないだろう?、あまり、無理はさせたくない」
「………全く、本当に過保護です、心配性です、甘やかし過ぎです」
「おう、俺はフェリスにはとことん甘くすると決めたからな」
「………もう」
ちょっと不満げな表情を浮かべてみても、彼はただ朗らかに笑みを浮かべるだけ。
いつだってそう、疲れて休むときも、食事の時も、眠る時も、まだたったの二日間しか共に過ごしていないが、彼の無条件で無制限の優しさは、確かに自分の酷く冷たくなった心を暖めてくれている。
<太陽みたいな人………>
或いは白馬の王子様でもいい。危地にある自分を颯爽と助けて守り続ける彼を、本当に信頼し慕う日は、そう遠くないような気がした。
そうして日々を過ごし、やがて魔の森と言われる場所に着いた日、彼はとんでもないことをやらかした。たった一時で、この広大な森のど真ん中に街を作り出したのだ。彼が獣人やエルフ、ドワーフだけの生きる国を作ると聞いた時、確かに胸は踊ったが、まさかこんなことまで出来るなんて、正直思わなかった。
ドラグニル、その力を恐ろしいと思う前に、頼もしいと思った。この人なら、本当にやってくれるに違いない。そう思うくらいには。
そして今度は68人もの住民の受け入れに教育、街の再構成や新しい住民達との交流など、目まぐるしい日々が始まった。自分も一緒に勉強を学び、それ以外では常に兄と共にあったが、新しい住民達がここを受け入れ、兄を受け入れていく姿は感動すら覚えた。
これはまだ一歩でしかない。
兄は自分で作った自分の屋敷で、そう静かに語った。今目の前に広がる、亜人にとっての理想郷とも言える姿。フェリスからすれば、これだけでも恐ろしい程の変化であるのに、兄はこれっぽっちも満足した気配がない。
よく一人で「組織化が………」「食料自給率を………」「警備の人員に………」「運営に携わる文官の育成………」とかよく言っているが、流石にまだ私には難し過ぎる。
やがては本当に、人間と対等に張り合える国家をつくるつもりらしいことだけは分かった。そしてそれが、今の、今までの人間の文化に真っ向から喧嘩を売る行為だとも分かっている。分かっていても、全く止まるつもりがないのが、なんとも兄らしいことだ。
「兄さん………ちゃんと休もうよ」
「ん?………あぁ、なに、心配するな。ちゃんと後でお前の髪も梳いてやるから」
「そ………そういうことじゃないんだけど」
最近、兄と呼ぶことに抵抗がなくなったフェリスは、毎晩ゲオルグに髪を梳いて貰っている。最初は狼人族や兎人族にやってあげていたのを羨ましげに眺めていたばかりだったが、他の者達もお願いするようになった頃、流れに乗じて自分もお願いしたのだ。
<あれは癖になっちゃう………>
そう、他の者達もそうらしいのだが、ゲオルグに髪や尾を梳いて貰うと、暖かな日溜まりの中にいるような気分になって、気がつくと眠ってしまっているのだ。
安心感、その一言に尽きる。
心から信頼する者に体を預けるその行為は、仔猫が親猫に抱かれ眠るような、そんな感覚に違いない。今は生死すら分からない母に抱かれて眠っていたあの頃の幸福感と安心感それそのものだ。
今では兄と自信を持って呼べるようになったとはいえ、気恥ずかしさはあるが。
そして間もなく、また新たな住民を迎えようという段階にまできていた。
兄の話では、300人程度は集まるだろう、とのことだったが、それは嬉しさと寂しさの両方を感じる話だ。間違いなく兄はもっと忙しくなる。それはつまり自分との時間が減ることを意味する。だが、これが生き甲斐だと言わんばかりに奔走する兄を見て、また多くの期待を抱いている住民達を見れば、やめて欲しいなんて口が裂けても言えない。
それに、自分だって心のどこかで期待しているのだ。亜人と呼ばれ蔑まれた者が、等しく自由を与えられ日々を楽しく暮らせる街が、国が出来ることを。もう会えないと覚悟していた兄弟姉妹に母もそれに入っていたならば、どれだけ幸福なことか。
そして兄はいつかこう言うのだろう、「ほら、為せば成る」、と。
あまりに偉大な兄だ、誇らしい兄だ。隣に立つのが気後れしてしまうほどに。
でも離れてなんかやらない。それが自分の意志だから。
いつしか心のどこかに抱いた、兄としてではなく異性としての彼に対する想い。もしそれがその願いの妨げになるのなら、そんなものも要らない。ただ、彼の側に居続けたい。
それが、今のフェリスという存在を構成する願いの形。
まもなく、この街と世界に大きな転換点が訪れようとしていた、ある日のことであった。
前話と今話は、フェリスの性格についてご指摘がありまして、それを受けて突っ込みました。
もうちょい後出しの予定でしたが、タイミング的には有りかと判断した結果です。
そしてひとまず幕間はこれで終了です。次からは本編となります。




