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ガルディナ王国興国記  作者: 桜木 海斗(桜朔)
第二章 建国へ向け
22/153

布石

「あっ、兄さん、あっちにも出店があるよ」


「また食べ物か?」


「違いますよ~だ。木彫りのアクセサリーだってさ」


「ほう、ならちょっと見ていこう」


「うん!」


一晩明け、二人は街中を練り歩いていた。昨日はあれから、「そういえば日用雑貨の類を注文してなかったな」、などと言い出したゲオルグが商館に再び赴き、既に忙しさから顔を青くしていたエドの顔を更に青くさせたりしたが、その他は特に何事もなく終わった。


適当な宿に泊まり一晩明かし、今こうしているのだ。


もちろん只歩いている訳でもなく、こうして色んな店を回っては将来的に参考になりそうなものを探してみたり、或いはとある噂をしきりに振り撒いている。


その噂に関しては、今朝思い立ったものである。


今朝、宿の一階にあった食堂で、人々がとある噂をしていたのがきっかけだ。曰く「あのゴルトベルク商会が亜人を買い漁っている」「とある名のある貴族か何かが、大枚を叩いて集めている」「亜人を普通じゃ考えられない高値で買い取っているため、亜人を持ってた奴は随分懐を潤している」などなど。


それを最初は聞き流していたが、ふと思い付いたのだ。


これは上手くすれば、この街に亜人を集められるのではないか、と。


そこでゲオルグは、その噂に一部付け足してやったのだ。


「どうやらこの街で集めるのはこれが最後ではなく、また買いに来るらしい。そして、健康的で若い亜人ならば男女問わず相場の10倍から20倍で買い取ってくれる。まだ売り物にならないような子供でも、通常の大人と同じくらいの値段だそうだ。次に来るのは三ヶ月から半年後くらいで、その間に集めてしっかり健康状態をよくした亜人を手にいれておけば、ちょっとした小遣いになる」と。


それは最初は、場末の小さな宿の中の噂でしかなかったが、ゲオルグが歩き回る先々で同じ噂を発し続けた。街中の観光もしながら、至るところでそんな噂を流せば、当然より多くの者が知るところとなり、やがて真実味を帯びてくる。


果たしてどれほど効果があるかは知れないが、やってみる価値はあるだろうとは思った。


<ま、思ってた以上の効果はありそうだがな………>


二人が宿を出てはや半日、昼食を取りに入った大衆食堂などでは、すでにその噂で持ちきりだった。


「早く近くの街からつれて来ねえと……」

「早いもの勝ちだからな、遠けりゃその分費用がかさむ」

「健康的ってのはどれくらいならいいんだろう………」

「太らせてやるほど余裕はないしな………」

「病気とか怪我がなければいいんじゃないのか?」


とまぁ、こんな具合である。


「……………案外、最初の基礎固めの人口は早く確保できるかもな」


「うん………なんかここ怖いよ」


獣人であるフェリスにとって、ここの喧騒はどうにも気分が悪いらしい。然も有りなん、と言ったところではあるが。


「ではもう行くか。この街ももう大分歩いたし、目ぼしい工芸品なども手に入った。あと少しばかり歩いたら、宿に戻って明日に備えよう」


「うん………」


やはり何処か元気のないフェリスを連れ、食堂を後にする。住民達の喧騒は、まだ暫くやみそうにはなかった。

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