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ガルディナ王国興国記  作者: 桜木 海斗(桜朔)
第二章 建国へ向け
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夢に向け

内政パートは今回で一旦終わりです。

「ん~…………」


大規模な開拓を行った翌朝、ゲオルグは唸っていた。


「なんか………ゴーストタウンだな」


昨日、大量に確保した木材や石レンガを使い、およそ500もの家屋を作り上げ、綺麗に整備された町並みを完成させたのだが、なんせ人口はたったの2名。畑に果樹園、将棋盤のように整備された道に、家屋。200人程度が収容可能な学校となる予定の物や、いずれ行う予定の酪農に向け、牧草(まだ土しかないが)地帯に家畜小屋、木工加工や金属加工を行う工芸区画なども作りあげたが、無人の町並みは、どうにも寂しさばかりが募る。


ちなみに、家屋の組み立ては最初は結構苦戦した。木材を風魔法で加工、鉄を土魔法で加工し釘にして、それらを風魔法による圧縮空気の打ち出しを用い組み合わせる、という方法を思い付くのに時間がかかった。失敗もしたが、一度成功して慣れてしまえば後は楽なものであったが。家屋は、家として作った物は木材で作った後に外側を石レンガで補強し見た目を整え、土魔法と火魔法を駆使して作りあげたガラスを窓として嵌め込んである。その他も大体は同じだが、火を使う予定の金属加工用の家屋は石材だけで作ってあったり、学校は逆にほとんど木材だけで作ってあったりと(石で作ったら異様に物物しい感じになったから)、微妙に差異はある。


「町並みはほぼ完成………明かりもなんとか確保したいが……光魔法をガラス玉かなにかに付与してみるか?………だが長持ちさせようと思うと巨大になるしな……魔結晶が大量にあれば………だがあれもそうそう数は揃わないし………」


一人で頭を抱えているが、どうにも直ぐには解決できるようなものでもなさそうだ。


「ま、でもこれで多くの獣人を受け入れる第一段階は整ったと見ていいか。後はどこから確保してくるかだな………」


「あ、兄さん!!畑見てきたけど、問題はなさそうだったよ!」


と、そこへフェリスがやってきた。彼女には、森の中から植え替えた果樹や野菜などの様子を見に行かせていたところだった。


「そうか、なら、これで食料問題も良し、と。あと、何か足りなそうなものはあるか?」


「ん~………水に食べ物、家もあるし、畑っていう職場もあるから、もういいような気もするけど………」


「ふむ………では、そろそろ、次の段階にいくか」


「次って、じゃあもしかして………」


「あぁ、人間が亜人と呼び虐げる者達をここへ集め、街に人をいれよう。最初は50人くらいだな、俺が文字や計算を半年くらいかけてみっちり教える。その間は畑の様子などは俺が見るから、勉強に専心して貰う。三ヶ月くらいして体力的に余裕が出来たら、運動も取り入れて体作りも行うし、それらを全部終えたら一人前に働いて貰う。そこから更に、今度は可能なら100人単位で増やしてみよう。その時は最初の俺の教え子達に、教える側になって貰う、俺も勿論補助はするが、あくまで主体はそちら、自立した生活を出来るようになったかの確認も込みだな。後はこれを繰り返し、人口が増えれば街も拡張していこう。最終的には、俺がいなくとも何の問題もないくらいの文化レベルの形成と生産能力を手にいれる。ま、100年くらいは見越しているし、町を守る為の戦力としてはまだ俺が一人でなんとかすることが当然になるだろうが、人口が増えれば治安維持の為の警備兵や、人間から町を守るための軍も組織しなきゃならないだろうがな」


軍を持てる余裕が出来たら、現代ばりに高度に組織化された軍にしてやろう。などとも考えてたりするが。


「ひゃ………百年………」


今立てている計画を、一気に巻くし立てるようにフェリスに語ると、フェリスは目を点にしていた。


「言っただろう?世界を変えると。獣人やエルフ、ドワーフ。人間に蔑まれ虐げられた者達が、真に自由を謳歌できる楽園のような場所、いや、国を作る。文字通り、国家百年の大計だ。千年、二千年先にも残る強き国家を築き上げ、人間の傲慢を打ち砕いてやろう」


拳を胸元で強く握り、そう語るゲオルグの瞳は、爛々と輝いていた。


「………お供します、死が二人を分かつその時まで」


その拳をそっと包み込むフェリス。


「なに、フェリスが死ぬ時に、もっと生きていたいと願うくらい、未練を大いに残すくらい、この場所を、未来を、発展させてやろう」


「ひ………酷い……枕元に立っちゃいますからね」


「それが狙いだとも、死してなお、俺から簡単に離れられると思うな」


そう言って、笑った男の顔に、フェリスは胸がざわつくのを感じた。その感覚は一体なんなのか、まだ何か分からないし、分からないほうが良いような気もした。


「兄さんは束縛がお好きなようで、私、とんでもない人に助けられちゃったかも?」


「今さらなにを」


二人は笑い合う。その笑顔は、この先何も不安などないのだと言わんばかりの、明るい笑顔だった。

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