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ガルディナ王国興国記  作者: 桜木 海斗(桜朔)
第二章 建国へ向け
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旅 2

日常編その2です。ストーリーに大きな影響は(多分)ないので、読み飛ばしても大丈夫です

旅に出てからかれこれ5日、ガルディナ大森林までは、このペースではまだ幾日かかかると思われる。なんせ、ゲオルグがとにかくフェリスを甘やかし、道草ばかりを食ってあっちへふらふらこっちへふらふらと、そもそも真っ直ぐに向かっているのかも怪しいのだが。


だがしかし、これは必要なことだともゲオルグは思っていた。この先、多くの獣人を保護していくことになるだろうが、その獣人達が皆、初めて出会った時のフェリスのような状況だとしたら、その心を開かせ自分の意思で生きたいと思わせるのは中々難しい。まさか、全ての獣人達にフェリスのような方法は取れないし、仮に出来たとしても、それではフェリスに投げ掛けた言葉の数々が酷く軽いものになってしまうような気がしたのだ。


それ故の、このフェリス甘やかし作戦である。


彼女に心の底から信頼され、ゲオルグという存在が本当に自分達獣人を守り導き得るものなのだと、そう思って貰う。そして、彼女を介して事に当たれば、きっとゲオルグ一人で説得するより遥かに楽になるだろう。そうやって少しずつ人数を増やしていけば、それだけ目標に近づけるのだ。


<とかなんとか言っても、フェリスと仲良くしたいと思う心に偽りはないんだがな>


この世界で見つけた愛すべき家族を利用しているような気がして、少々心苦しいのだが、全ては理想の為、獣人達の未来の為、そして、フェリスの為。これらの行いがまだ見ぬ未来に、多くの幸福をもたらすのだと信じて、突き進む。それくらいしか、自分にしてやれることはないのだ。


ただフェリス一人を大切にしてやることは簡単だ。だが、それは将来的な彼女の幸福には繋がらないのだと思っている。この優しい少女は、きっと、もしこれから先二人でただ旅を続けたとして、その旅先で自分と同じような境遇の獣人を見るたび、こう言うだろう。


「彼、彼女らも、助けてあげて下さい」と。


それは、最初の何人かならまだ良いだろう。それが延々続いたら?


旅をしながら持てる物には限りがある。まして、人数が増えれば増えるほど、隠れることも難しくなる、人間の目につく、手が届き難くなる守りきれなくなる。


そんな未来が、容易に想像できた。


<やはり、しっかりと家屋や城壁を作り、自給自足できるだけ生産能力を持たせた拠点の建造は必要不可欠、そしてそれに最も適した場所は、ガルディナ大森林、まぁ、俺がいる前提だが>


計画としては、まず森林の奥地の湖近くの木々を伐採、整地、以前村でやったように堀と壁を作り出し、堀には湖から水を流し込み水堀とし、壁内には畑や家屋、果樹園、ゆくゆくは酪農や鉄鋼産業なども推進したい。


<安全地帯を作り出し、そこに保護した獣人達を住まわせて、ゆっくりと時間をかけて信頼を得る………我ながら、気の長い話だな>


それでも、実行することに躊躇いはない。モフモフの為ならば、もとい、獣人の為ならば。


「あ、兄さん、あれ!あれ!狐!!子供もいる!!」


「ん?………お、本当だな、珍しいな、これだけ近付いても逃げないのは」


「そう言えばそうだね………兄さんがいるのに……私ちょっと見てくる!」


「おう、気を付けろよ。子供のいる動物は気が荒いからな」


今日も今日とて、こうして脇道に逸れながら、少しずつ目的地へと近付いていく。この平和で長閑な光景は、ゲオルグにとっては幸福の一時である。無論、フェリスにとってもそうであって欲しいのだが。


<幸福の形は人それぞれ、押し付けるものではないんだろうが、な………>


またしばし頭を悩ませた訳だが、ここ最近はいつも、答えを出す前にフェリスの行動に驚かされて中断させられるのだが。


「兄さん!!この子、足を怪我してる!!」


そう言いながら、怪我した子狐を抱え上げるフェリスは、親狐と激しい戦いを演じたのか、顔や腕などの露出部分に引っ掻き傷などを負っていた。そして現在進行形で、今も親狐はフェリスの足に噛みついている。竜皮の服のお陰でダメージはないだろうが。


「全く………ほら、纏めて治してやるからこっちへ来い」


「はい!!」


「あぁ足元足元!!親も怪我させる気か!!」


「キャッ!!ごごごごめんね痛かった大丈夫!?」


この虎耳少女、相当に好奇心旺盛で、いつもこんな感じである。最初はゲオルグに対する遠慮もあってか割りと大人しかったが、一昨日くらいからは徐々に周囲に興味を示し、今ではこうして、興味を持ったものへ迷わず突撃してしまう。


<これまでの生活を考えれば、その束縛から解放された反動、なんだろうがな………>


ゲオルグはそれを好意的に受け止めていてたしなめる気もない。これは間違いなく彼女にとっての前進だろうと言うのは誰の目に見ても明らかだから。何かあっても、自分がしっかり見ていれば心配はない、それが兄としての役割だろうとも思っている。


「兄さ~ん………指思いっきり噛まれちゃいました~………」


「………出血大サービスだな」


涙声になりながらも、怪我した子狐を離さず連れてきたその根性だけは誉めてやろう。と、内心で思いつつフェリスと狐を治療した。


まだ少しばかり、先の長い旅になりそうである。

次回から少しずつまた話が進む予定です

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