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ガルディナ王国興国記  作者: 桜木 海斗(桜朔)
第十章 そして世界が廻り出す
147/153

閲兵

「そろそろか……」


「はい、皆さま席に着かれております」


「よし……全軍! 前へ進めぇっ!! 駆け足用意! 走れぇ!」


ガルディナの街、その練兵場において、全軍による公開訓練が行われている。

指揮を執るのはヨハン、その横にはジルが立ち、ゲオルグは木材で組まれた高台の上からその様子を眺めていた。スペースに余裕を持って作られたそこには、フェリスを始めとする議会のメンバーも立ち並んでいる。


練兵場周辺には興味をそそられ集まった住民達と、これまで新兵科の訓練に尽力した帝国の武官団の姿もある。無論、両者は離れているが。


「駆け足やめ!! 右向け前へ進め!!…………全体止まれ!! 整列!!」


練兵場の奥から指示通りに動き始めていたガルディナ軍が、ゲオルグらの居る前まで進み、そこで列を整え始める。


「これより、全軍による公開総合訓練を行う! ゲオルグ・スタンフォード閣下に、敬礼!!」


ザッ、という小気味の良い音と共に、全軍がゲオルグに敬礼を捧げ、起立していたゲオルグがそれに答礼する。そして。


「諸君、私は諸君らの日頃の忠勤を忘れたことはない。これまでの厳しい訓練、さぞ苦労と苦難の連続であったであろう。今日は、その成果を存分に発揮し、己の最高に格好良い姿を、ここにいる全ての者に披露して貰いたい。諸君らの今日までの努力の集大成に、期待する」


そう短な挨拶をすると、再びヨハンが号令を掛け、そして全軍が動き出す。


ガルディナに新兵科が出来て、二か月目のことである。



―――――――――――――――



「ふむ、中々どうして、見事なものだった。二か月であれだけ動けるとはな」


「それだけ、ガルディナ人の方々は優れた潜在能力を持っているということでしょう。すでに一部の者は、我らでは勝つことも難しくなって参りました」


「なに、諸君らの訓練の賜物であろうよ。我らは実戦経験もさることながら、指導者としての経験が乏しい者ばかり。千日の勤学より一時の名匠、とはよく言ったものだ」


オレグはゲオルグの言葉に一度首を傾げながらも、意味を理解したのか頷きながら言葉を返す。


「ほう、聞きなれぬ言葉ですが、スタンフォード公の故郷に伝わる格言ですかな?」


「まぁそんなところだ。所詮、俺の指導とて付け焼刃。それを本職とする者には及ぶべくもない。帝国からの武官団は教練の専門家なのであろう?」


「如何にも、ほとんどは騎士爵の次男や三男ですが、中にはサンドラ嬢のような者もおります。親から戦場への出征を許されず、その腕を腐らせれている者というものも少なくはありませぬからな」


「成る程。元より人の上に立つ家の生まれなれば、そういった事にも自然と慣れているということか」


「そういう事ですな。まぁ、帝国貴族とて全てが全て裕福な訳ではありませぬ。中には平民同然の暮らしを余儀なくされる弱小貴族もおります故、嫡男とは言え遊ばせておく余裕がない、ということもございましょう」


「……世知辛い話よな」


「まこと」


そんな取り留めもない話を一言二言交わした後、二人はその場を離れる。双方とも、いつまでも雑談に興じていられる程の暇はない。ゲオルグはヨハンやジル、オレグは武官団の元へと向かう。


「閣下、此度の演習、如何でしたか」


「これだけの数となってからの初の総演習です。ましてや住民や帝国人、そして閣下の御前、何かあってはとここ数日気が気ではなかったのですが……」


どこか不安そうな面持ちでヨハンとジルが問いかける。


「見事、と言う他あるまい。いや、これだけの期間でこれほどまでの練度になるとは思いもよらんことだ。帝国の武官団も勿論尽力してはいるだろうが、それ以上に二人は時間と労力を惜しみなく用いたことだろう。全く、頭の下がる思いだ」


「いえ、閣下の苦心、苦労を思えば、我らの努力など……」


「閣下は街の全てに目をお通しになるのですから、我らでは到底及ばぬところです」


そう言いながら頭を垂れる二人に、ゲオルグは苦笑を浮かべながら言葉を返す。


「人を持ち上げるのも良いが、たまには自分を誇ってみせよ。謙遜を度を越えては不遜というもの。二人の努力は街の皆が認めるところだ」


「いえ、我らにとっての本番はこれからですから」


「司令の仰る通り、これから再び戦場に赴かねばならない可能性があると思えば、今の努力など苦労の内には入らないかと」


「成る程……良い心掛けだが、だからといって自分の努力を自分が疑うべきではないし、否定するべきでもない。努力は時として人を裏切る。だが成功の喜びを知る者は、努力をした者だけだ。何事も努力の内に入らないと思えば、その喜びもまたないものとなる。そんな生涯、つまらんだろう?」


その言葉に、ヨハンとジルは顔を見合わせた後、破顔してみせたのだった。



未だガルディナの外では帝国とディナントが戦火を交えている中での、僅かばかりの余暇での出来事である。

 次回、幕間を2~3話挟んだ後、次の章へと移行します。


 また、急な話となりますが、書籍化作業に伴い、次章以降は縦書き小説に準拠した文章となるかと思われます。空行や文頭のスペース、各種記号などの用法など、これまでとは大きく変わることとなるかと思います。


 誠に恐縮ですが、ご理解賜れれば幸いに存じます。


 書籍化に関しては、本日、そして前回の活動報告をお読み下さい。


次回予告!!

幕 間「少年時代~ラシード編~」

 〃 「フェリス、恋のライバル?」

 〃 「サンドラの日常(ガルディナ編)」


の三つを予定しております。アンケートの結果を大いに反映させて頂きました。ご意見、誠にありがとうございます!!


 尚、幕間は予告なく変更になる可能性がありますので、予めご了承ください。

 出版記念、という訳ではありませんが、年内に三つ全ての公開、そして新年には新章を始められるよう努力致します。


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