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ガルディナ王国興国記  作者: 桜木 海斗(桜朔)
第九章 歴史の幕開け
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幕間 とある熊人族のお話

この話を書く前、ハーピーを登場させる話を書いたのですが、書き終えてから見直したところ、人魚の話と思いっきり被った為、現在修正中。


繋ぎとして急遽書き上げたお話がこれである。


あと、前話をちょこっとだけ修正。思っていた以上に反響を頂いた為ですが、運営さんが怖いのでちょっとだけです。

私がこの街に来て、もう1年にもなるだろうか。

かつて、雪深い北の大地で過ごしていた日々は、もう遠い過去の事のように思える。

それほどまでに、ここでの毎日は色濃く、そして忙しないものだった。


「アガーテ! こっちの資材を馬車に積んどいてくれ!」


「はーい!」


いや、今も現在進行形で忙しないものなのですが。


熊人族の私は、女性でもそこらの人間の男より余程力が強い。それ故に、今はガルディナの中でも特に力を必要とする職場、建築部門の一員として働いている。


元々、帝国内の森の近くに集落を築いていた私を含めた30人程の獣人の中でも、私は木を登って果実を取ったり、薪や狩猟で得た獲物を運んだりと、力仕事を主に担当していた事もあって、今の職場でも特に苦労らしい苦労はない。


なにせ、ちゃんとした家も与えられ、給金も貰えて、そして皆が皆優しく、丁寧に仕事を教えてくれるのだ。これで不満なんて言ったら罰が当たる。文字ももう覚えたし、計算も……簡単なものなら特に支障もない。そもそも、普通に生活するだけなら、足し算や引き算が出来ればそうそう困ることもない。


<頭は良くないからなぁ……>


覚える事が苦手だからこそ、こうして単純な力仕事を選んだというのもある。

自分で選んだ仕事である以上、不満を漏らす訳にもいかない。いえ、不満なんて今のところない、というのが本当。


「さって、じゃあさっさとやっちゃいますか!」


気合を入れて馬車に積み込む資材を見やる。新しい建物の骨組みになるのであろう材木、鉄工業から送られてきた釘、そしてレンガ。山ほどあるそれらを数台の馬車に効率良く積み込むための方法を模索し、そして最適解を導き出して作業を始める。


重くて大きい物、傷が付き難い物を下に、軽くて傷つきやすい物を上に。そんな簡単なことではあるが、それも今までの経験があればこそ、すぐに理解が出来る。所属した当初など、適当に詰め込んで馬車の荷台に納まらなくなったり、バランスが悪くてグラついたりして、よく主任に怒られたものです。


「アガーテさん、主任に言われて手伝いに来ましたよー」


「おっ、良い所に。じゃあさっさとやっちゃうよ。御者の手配はどうなってるのかな?」


「主任が空いてる人回すってさ。俺たちはこれを馬車に積み込んだら、次は農業部門の新しい倉庫を建てる場所に視察だそうで」


「視察って……私達が見にいって何か分かるの?」


「さぁ? まぁ、経験を積ませる為に視察の見学、みたいなこと言ってましたけど」


「ふーん。まぁそれならいっか」


こうして、荷物を積み終えたアガーテは、建設部門の主任と合流し、次なる現場となる場所へと向かった。







「広……」


「ここには、今後更に拡張されるであろう農場、その作物を収める、今までにない大きさの倉庫を建築する予定だ。はっきり言って、これまでよりも時間、資材、そして人員を割く必要がある。そして、後々は同じサイズのものを複数建築予定だ。その為には、出来るだけ多くの者に現場、実際の作業、そして完成図を確認して貰い、記憶しておいて貰った方が良いと思ってな」


「はぁ……」


建築部門の主任の言葉に、どこか上の空で返事をしてしまう。


しょうがないでしょ、だって、こんなサッカー場みたいな広さの倉庫なんて、どんだけ大変なのよ!?


見せられた建設予定現場の縄張りは幅80m、長さ100mはありそうな広場。そして、その横には同じような縄張りがいくつかされている。


こんな規模の建物を、幾つも!?


「……本当に、やるんですか?」


「勿論だとも。今まで、大規模な建築は全てゲオルグ様頼りだったのだ。それがいよいよ、一端とは言え我々にも任された。ということは、それはゲオルグ様が我々に期待を寄せられているということだ。その期待を裏切るような真似が出来るか」


そういう主任の顔は、今まで見たことがないくらい活き活きと輝いて見えた。


<そう言えば、主任って第2期からの面子なんだっけ>


今、ガルディナでは第1期、第2期という風に、何回目の増員で来た住民か、無意識的に分けられている。それは差別というよりかは、古くから街に携わっている人程、この街に詳しく、そして往々にして経験豊富であるから、それを目安に困った時に頼りにしているのだ。


また、これらゲオルグ様との親しさのバロメーターとも言われている。


第1期の住民は僅かに60数名、その者達はほぼ何かしらの役職に就いており、その分ゲオルグ様と近しい地位とも言える。第2期もそれは顕著であるが、第3期以降になると、一気に一般住民の割合が高くなる。


これについては不平不満は少ない。当たり前だ。最初期からゲオルグ様に付き従い、ゲオルグ様の為に働き、ゲオルグ様に直接多くの教えを受けているのだから、基本的に頭も良いし信頼もされている。


信頼され、能力もそれに伴っているならば、それに不満など言えるはずもない。更に言えば。


<第1期、第2期の人達って、ゲオルグ様に心酔って言うか、どっか教会の信者に似てる雰囲気なんだよねぇ……>


彼らはゲオルグが手ずから教え、鍛え、守り、今に至るまで重用してきた者達だ。忠臣、と呼べば聞こえもいいが、そこはかとなく狂信的とも言える程の忠誠心は、どこか空恐ろしさすら感じる。これは、後期に住民となった者達の間では割とよく言われていることでもある。


<ゲオルグ様が一言命令すれば、それこそ命なんてかなぐり捨てそうだし>


自分はこの街に来て日が浅いが、ゲオルグ様と話したことなんてほとんどない。それこそ、すぐに彼が戦場に行ってしまったということもあるだろうが、それにしても、普段から彼の周りには誰かしらが侍っている。


妹のフェリス様に始まり、ニーナ様、ケイル様を始めとする首脳陣、そしてたまの休みには広場で古くからの住民に囲まれ、人が少ないかと思えば、正規軍の女性参謀がべったりとくっついていたりする。


<ま、今の生活は気に入っているからいいんだけどね>


ゲオルグ様に気に入られたからといって、必ずしも重要な役に就ける訳でもないし、就けられても困る、というのが本音だ。


それに。


「さぁさぁ、今まで一番の大仕事だ。気合入れていくぞ!!」


鼻息荒く次なる現場に目を輝かせている、このどこか子供っぽさの残る主任を支え、ともに仕事に励む事は、どとらかと言えば好きなのだ。


<遠くの憧れより、手近な上司、かな?>


自分より一回り小さく、それでいて誰よりも精力的に働く彼の事が気になり始めたのはつい最近だが、一度気になり始めたらずっと目で追ってしまうのは女心というもの。


それからおよそ半年後、彼女は見事彼の事を射止めてしまったりするのだが、それはまた別の機会に語るとしよう。

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