3.私は
いつも唐突に思い出す。
昔の記憶が蘇ってくる。
幸せだった頃の。
まだ幼かったけどわかってた。
あの生活がどんなに尊いものなのか。
姫様と呼ばれていたあの頃に戻りたい。
何も不自由しなかった。
あの頃に戻りたい。
周りの人がみんな笑顔だった。
あの頃に戻りたい。
何も知らなかった。
あの頃に戻りたい。
しかし。
果たして私は何を知ってるのか。
今私は何を知ってるのか。
私は外がどうなっているかすら知らない。
今が昼なのか。
今が夜なのか。
外の世界がどうなっているのか。
希望の星に溢れているのか。
絶望の雨にまみれているのか。
何も知らない。
忘れてしまった。
父の名も。
母の名も。
いつも私のそばにいた人の名も。
もうみんな忘れてしまった。
忘れてしまえば幸せだと思ったけど。
違った。
忘れてしまったらもっと苦しかった。
もう二度と思い出せない。
何故こんなにも過去に惹かれるのか。
一度手放してしまったら。
手に入れることなど出来やしないのに。
希望がどれだけ儚いものかよくわかった。
だからもう。
許して。
お願い。
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