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一番大切なモノ

掲載日:2014/09/22

 誰もいない暗闇の中、ただ一人震えながら歩く青年がいた。血みどろになり、全身は傷だらけ。

 十字軍遠征。

 それは異教徒から聖地を奪還するはずだった尊く清い戦。しかし、回数を重ねる度に内容は醜く変容してしまった。

 異教徒の街ならば虐殺をも厭わない。女子供老人でさえ斬り捨て犯し、弄ぶモノへと。

 青年は分からなくなったのだ。

 何が正しいのか、何を信じればいいのか。そして、自分は何をすればいいのか。

 闇へと落ちる寸前。

 彼は、答えを求めた。

 道ゆく人に尋ねて回る。

 返ってくる返答は、虐殺に加担した奴に教えたくない。青年は絶望した。

 異教徒であろうがなかろうが、人に違いなかったのだから。なぜ自分は虐殺に加担してしまったのだろうと。


 雨の中青年は叫ぶ。心の底からの慟哭はとても悲しいモノだった。涙も溢れて止まらない。


「どうしたのですか?」


 青年が振り返るとそこには、傘を差す女性がいた。みすぼらしい服を着ているが、顔は非常に明るい。


「この世で一番大切なモノは何ですか……?もう何も分からないんです……」


 なんだそんなことですかと女性はにこやかに笑う。太陽を見ているように青年は感ぜられた。この人なら答えてくれると思って、女性を青年は見つめた。


「簡単ですよ? それは『人を信じること』それ以上に大切なモノなんてありません」


「そして、自分が思い描く正義を執行すればいいんです。子供の頃に想っていた心は誰であろうと尊いモノなのですから! 」


 青年は忘れていた。子供の頃の夢を。


『俺は正義の味方になるんだ!』


 ああ、なんで忘れていたのだろうと彼は涙を流す。冷たい涙ではなく暖かい。


「ありがとう、俺は俺が正しいと思ったことをするよ。このちからを使う理由ができた。守る、誰かを守るために俺は戦う」


 青年は立ち上がり雨が降る中、次の遠征地へと向かった。自らの正義を貫くために。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 誰かを守る、幼い頃の記憶、それを持ち続けるのは困難な事でしょう。物凄く共感させられました。レビュー書かせて頂きます。
2014/11/23 02:28 退会済み
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