前編
小さな村の召喚場。
この村は12歳になると精霊と契約を結ぶ事が出来る。
光に当たると紫っぽく見える長い黒髪に茶色の瞳の平均的な顔立ちの平均的な身長のキール。
彼女は12歳の時に召喚場には行かなかった。
と言うよりも行けなかった。
「この子はここに近付いてはいけないわ。」
と生まれた時に召喚場を取りまとめる精霊カルーナに言われてしまったからだ。
パートナーがいない事は残念だけど諦めた。
でも弟の様に可愛がってきたシェカラートの儀式がどうしても見たくてキールは禁を破る。
もうすぐ20歳になるのに禁を破るのは些か問題であるが、この歳まで大人しくしていた反抗もあるのだろう。
全くもって遅すぎる反抗期である。
シェカラートが精霊を呼び出してる最中に何故かキールも淡く白い光に包まれて、そこでキールの意識はホワイトアウト。
「ごめんな。」
その時に聞いた事のない男性の切ない声が聞こえた気がした。
泣かないでと言おうとしたがキールはふわふわとした浮遊感と腰の辺りに何かが思いっきり抱きついているのを感じ、若干パニックになりながら覚醒する。
目を開けると村とは全く違う景色が広がっていた。
腰の辺りに抱きついているのは艶やかでふわふわした緑色の髪にキールよりも背が低そうな女の子。
「会いたかった…マーベリー。」
会いたかったと言われたがキールの名ではなく全く違う名を言う女の子は更に強くキールを抱き締めた。
「柔らかい?」
あっているが的外れな事を言う女の子は漸く顔を上げてキールの事を見た。
瞳は山吹色で愛らしい顔立ちをしている。
「マーベリー…いつの間に女の子になったの?」
とんでもない発言をする女の子にキールは動転しながらも突っ込みを入れるしかない。
「いや私はキールだし、生まれてからずっと女よ?」
キールがそう言うと女の子は何かがプツンと切れたように火が付いたように泣き出した。
「ずっと…ずっと待ってたのにー!色んな人に妨害されても耐え忍んで待ってたの、マーベリーだけを。また一緒にいたいだけなのにー!」
女の子はぼろぼろと大粒の涙を溢して泣いている。
悲痛な叫びで何も分からないキールの心までも痛くなった。
「そんなに泣かないで、シュロ。」
「!?」
自然と出た言葉は女の子をシュロと呼び、頭を撫でた行動にキール自身混乱していた。
逆にシュロは泣き止み瞳を輝かせている。
「私…名乗ったかしら?」
「名乗られてないかと…急に自然と…」
物凄くシュロは綺麗に笑うと再びキールに抱きついた。
「ふふっ。キール、ずーっと一緒にいて。」
抱きつかれシュロの今の表情はわからないが声から満足そうな感情がわかる。
もう好きにしてと思いつつキールは抱きついているシュロの頭を撫でるのだった。




