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ライオンのそれ

 「今日もやっぱりこうなるんだな……」

 俺は着物を着せられていた。

 昨日のとは違い水色だが、女物であることに変わりはない。

 こいつらはちゃんと俺を男だと認識しているのだろうか? かなり心配になってきた…………。

 「ん、どうしたの? サイ」

 「な、何でも無い!」

 翔子が俺を『サイ』と呼んでくれる。俺の初めてのニックネームとしてはなかなかのクオリティーだ。不安が軽く吹き飛ぶほどマジで嬉しい。

 「で、ドウすんだ?」

 「何を?」

 首を傾げる翔子にウンザリとした様子の赤城が答える。

 「このアツマリだよ。ここにはナニもねぇしヤルこともねぇ。どうせなら部とか作りゃイイんじゃね」

 その意見はもっともだ。

 俺も一昨日から一緒にいるが、俺たちはただダラダラと時間を浪費しているだけだった。折角せっかくの高校生活だし何かしらしてみたい。

 「無理ね」

 翔子は金色の髪を掻き上げながら言い切った。

 「ナンでだ?」

 「だって部の設立には4人も必要なの。その他諸々やらなきゃいけないことがあるし――――正直メンドくさい」

 「後半のヤツが本音だな! ……でもまぁ確かにメンドウか………。」

 赤城も納得したようだ。

 俺も含めてこの三人は面倒くさがりのようだ。

 「でも、だからといって何もしないわけにはいかないだろ? そうだな…………例えば既存の部活に入るっていうのは?」

 「却下。リア充は生理的に受けつけないの」

 俺はリア充じゃないから選ばれたのか………喜んで、いいんだよな?

 しばらく思考を巡らせていた様子の赤城だったが、5秒ほどしてから答えをだす。

 「―――オレもムリだな。アイテに怖がられる」

 真剣な顔をしているのが面白い。『ならそんな格好しなければいいじゃん』と言いそうになるが、ちょくちょくトイレで髪型をセットしていたりするので、きっと自分なりのこだわりがあるのだろう。あまり他人の趣味をどうこう言うつもりはない。

 「なら、名前だけの部に入ればいい。そうすれば部室は手に入るし他に誰もいない。俺たちにピッタリだと思うんだけど……どうかな?」

 翔子は満面の笑みですぐに答える。

 

 「いいわねそれ! 二人で早速探してきなさい!!」

 

 やっぱりそうなりますよね………。


 俺は赤城と一緒に『教室として働けない教室』を出る。

 「何でこうなるんだろうな……」

 「オレにもワかんねぇよ………」

 「「はぁ…………」」

 二人で大きなため息をついてから、重い足取りで職員室へ向かった。





 「な、何で君は着物なのかな!? こ、校内では制服以外ちゃ、着用禁止だ!!」

 頭の禿げかけた教育指導の先生が俺を見て狼狽うろたえる。先ほどから目を合わせてくれないので「どうしたんですか? 先生」と顔を覗き込んで言うと顔を真っ赤にして職員室から走り去ってしまった。

 「何だったんだろ? 今の」

 俺は首を傾げる。

 「センセイ! そのキモチ、痛いホドよく分かります!!」

 何故か赤城が涙を流して共感しているが面倒なので無視をする。

 「で、どうすんの?」

 俺たちは教育指導の先生を頼りに部を探そうと思ったが、肝心のその先生が消えてしまった。

 職員室には他の先生方もいらっしゃるが、俺らの学年の先生は誰一人として居ない。

 俺たちの人見知りはかなりのものである。

 よって話しかけれない。

 学年の先生がいても話しかけれないんじゃないだろうか?

 「……グスッ、カエるか」

 涙を拭いながら赤城が言う。

 「そうだな……」

 どうしようもなので、俺たちは翔子の元へ戻ろうと職員室のドアに手をかける。

 と、その時。


 「ちょっと待ちなさい、そこの女子!」


 張りのある若い女の声が背後から聞こえた。

 「はい?」

 俺はなんとなく振り返る。

 ここには女子はいないはずだ。オバサンならたくさんいるが。

 振り返った先には、銀縁眼鏡をかけた白衣の30歳前後の女の人がいた。その人の人差し指は、正確に俺をしていた。

 「お、俺?」

 「そりゃオマエしかいねぇだろ、女子ってイやぁ」

 「…………」

 戯言を並べる赤城は無視する。

 その白衣の女性は、ヒールの音を響かせながら俺に近づいてきた。

 近くで見るとメチャクチャ美人だ。ライトブラウンに染められた髪が眩しすぎる。

 「あなた、可愛いわね……」

 女性は、自分の顔を俺の顔面ギリギリまで近づけて、張りのある声でそう言った。最初は理解できなかったが、『年下の男の子が可愛い!』という肉食系の人なのだと判断し、俺は少し距離をとる。


 顔が近くて恥ずかしかったんじゃないんだからね!


 ―――ちなみにこれはツンデレではない。

 本当に恥ずかしかったわけではなく、とにかく怖かった。

 お化けをただ漠然と恐れているような、そんな恐怖。

 「なんで離れるの? 私と一緒にお話しましょ―――」

 「遠慮しときます!!」

 俺は本能的に危険を察知し職員室から飛び出す。

 赤城はいつの間にか姿を消していた。あの薄情もの!!

 「ねぇ待ってたらぁ! ――――ちょ、何で本気走り!?」

 俺はその白衣の女性を置いて『教室として働けない教室』へと向かう。

 あの女の人は怖い! 俺を見る目が『アニマルプラネッタ』に出てきたシマウマを追い回すライオンのそれだった!!

 教室に着くまで3秒とかからなかった―――――気がした。

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