友達です
「はい、祀木さん。これを着なさい」
俺を縄から開放した直後に金髪美少女が渡してきたのは服だった。
「ん? なんなんですか」
たたまれているためよく分からない。
とりあえず目の前で広げてみる。
「ウゲッ……マジですか……」
それは…………『メイド服』だった。
ヒラヒラ付きの露出度高めの。
「マジよマジマジ!」
若干テンション高めなのがムカつく。俺は拳を固く握りながらそれを突き返す。
「えぇー…! 先生にスリーサイズまで訊いたのにぃ」
「ソレ訊いたのオレだけどな! ドン引きされたわ!! 評価マイナスだわ!!」
赤城がツッコむ。
どうも赤城はツッコミで金髪美少女がボケらしい。
そういえば金髪美少女名前を訊いてなかったがタイミングを逃したので分からない。
とりあえずニックネームで充分だろ。
金髪美少女だと長すぎだし…………金さんで。
「とにかく着なさい! これはご主人様としての命令よ!!」
金さんがほざく。
俺は無視してひとまず撤退しようとする。
「あー、教室に鞄を忘れてしまったから帰らないとな」
「ならあたしもついていく」
もっとそこは『ちゃっちゃとしなさい愚民ども』ぐらいじゃないの?
結構律儀だな……。
「ソーいえばオマエ、まだジブンの名前言ってねぇんじゃねぇのか」
「あ、そうね」
はっとした様子の金さん。
『金さん』意外と気に入ってたんだけどなぁ――――。
「あたしの名前は『時坂 翔子』よ。あんたのご主人様になった天使か女神だと思えばいいわ」
名前が『翔子』だなんて純和風の名前だとは思わなかった(後の方は考えないようにする)。
金髪碧眼だから『セレスなんちゃら』かと思っていた。
「そういえば時坂って何所かで聞いた気が…………」
「オマエだって知ってんだろ、『時坂グループ』。コイツはそこの総取りの愛娘ナンだよ」
赤城は物知りだな……ヤンキーの分際で。
俺は自分の心の声が悪化していてるのを感じながらも、金さん改め翔子(キャー!! いきなり呼び捨てはダメだよな!? でもいいよな!!)に話しかける。
「えーっと、奴隷って具体的に何するの?」
「そんなの決まってるでしょ。あたしを完璧に満たすの。どんな手段を使ってもいいわ」
そんなことを言われればエロいことを考えてしまうのは仕方ないよな、男の『子』だもん(『娘』では断じてない)。
「アンマ気にすんなよ、コイツは友達が欲しいダケだから」
「なっ! バカ!! 何言ってんのよ!!!」
容赦なく翔子が赤城を殴りつける。
うずくまる赤城。今後はあれを注意していかなければならないのか…………。
「………………………」
俺の事をウルウルした碧眼で見つめてくる翔子。とても可愛かったので目は合わせられなかったが、きちんと返事をすることは出来た。
「あーと、俺と友達になってください?」
「ふんっ! そ、そこは『友達になってくださいませ、お嬢様っ!』でしょ!! ······はい!」
「可愛かったのでもう一度手本を―――」
「やるかバカ!!」
頭を叩かれる。
痛かったが赤城が受けたものほどではないだろう。
きっと赤城には心を許してるんだろうな……ケッ。
「えーっと―――」
俺は気合を入れる。普段わざと低くしている声を元に戻し、若干ハリを戻す。
よしっ!
「友達になってくださいませんか、お嬢様……?」
「「!?」」
赤城の顔まで真っ赤に染まるのが気にくわない。
俺はそこそこ素だったんだぞ!
「ま、まぁ友達になってあげなくもないわ!」
ツンデレ風に返してくれる。
俺も笑顔で普通に話す。
「ありがとう! 俺の友達になってくれて……」
「「!?」」
翔子はいいとして赤城が赤くなるのがどうしても解せない。
目を潰してやりたいが俺には度胸が無いのでやめておく。
度胸があればやっていただろう。
……………たまに自分が怖くなる。
「まだちょっとクラクラしますし、もう暗くなってきてるので……それでは」
声を先ほどまでの低い声(人からは男『っぽい』と言われる)に戻す。
「明日の放課後もここに来なさいよ。もし来なかったら退学させてやるから」
「オメェの場合はリアリティーがあるからヤメロ………」
赤城がジト目でツッコむ。
「それじゃあまた明日!」
俺は手を振りながら二人のいる部屋を出た。
「フンフフーン! フンフフーン――――」
俺は鼻歌交じりに下校する。
あの『教室として働けない教室』は理科室や美術室などがあるB棟の端にあるみたいだ。
死角になっていて、詳しく探検でもしないと見つからないような場所だった。
休み時間は友達がいなくて暇だから探検をしたりしていたので、もう少し後なら俺も発見していたかもしれない。
「だが、もうそんなことは無い…………俺に、この俺に友達がぁ!」
俺は満面の笑みを浮かべる。歩いているサラリーマン達が俺の笑顔を見てから顔を赤らめて一斉に目を下げるのが気になったが考えないことにする。
友達 友達! 友達!!
「これで俺もリア充どもの仲間入りだな!!」
あの二人はリア充っぽくないが深くは考えないことにする。
何はともあれ、俺に初めての友達ができた(しかも金髪碧眼の美少女!!)。




