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『人助けの部』ですよねぇ……?

 「はぁぃい、お嫁ちゃん❤ 『ゲーム』作ってみたんだけどぉ、一緒にがっちりしっぽりやりましょぉ~~」

 「嫌です!(キッパリ)」


 8月に入りうだるような暑さの中、俺とトサカは毎日律儀に理科講義室に通っていた。今日は珍しく翔子も来ており、ここに先生も加わったことで、久しぶりにメンバー全員が揃ったことになる。

 「クズ先生こんにちは―――――で、ゲームってなんなの?」

 意外とゲーマだったりする翔子が、早速先生の話に喰いつく。

 先生は豊かな胸を張り上げ、朗々と説明を始める。

 「私が作ったゲーム、というか作ってもらったゲームはね、お嫁ちゃんの趣味の『自由度の高いグロ系アクション』なの!」

 「ツクってもらった、ってドーいうコトですか?」

 先生はトサカが反応したことが気にくわないらしく、トサカを深い隈のある瞳で睨みつける。しかしすぐに柔和でいやらしい表情に戻り、俺の目を凝視しながら返答する。

 「IT部に手伝ってもらったんだぁ。『サイちゃんにいろんなコスプレをしてもらう』って言ったら簡単にやってくれたわ」

 「………………ケッ」

 俺は盛大に舌打ち、ため息、ゴミ箱を蹴る、黒板を殴る、頭を壁に打ち付ける、などして平静を取り戻した後、額を赤く染めたまま、先生の話の続きを促した。

 「―――大丈夫? ――まぁ作ってもらったんだけどね、これがもう傑作中の傑作でね! サイちゃんを四六時中盗撮―――観察したから研究もバッチリ☆ お嫁ちゃん専用の神ゲーよ❤」

 壁に自分の頭を叩きつけよう―――と思ったが、さっきので頭が割れるように痛かったのでやめた。代わりに隣に座っていたトサカのホッペをつねって気を紛らわす。トサカは嫌がることもなく、少し頬を赤らめながら耐えてくれた。

 「サイ専用ってことは、あたしじゃ無理ってこと? そこんとこどうなのよ」

 「もちろん他人でも出来るけど、主人公のグラフィックはお嫁ちゃんよ?」

 「そんなの関係ないわ。むしろバッチ来いよ!」

 翔子は鼻息荒く立ち上がり、先生の目の前に立つと右手を差し出す。ゲームを出せ、ということなのだろう。

 先生は、


 「あんたなんかに貸すかバ~カバ~カ!! 調子乗ってるんじゃないわよぉ!」


 子供っぽいことを言うやいなや、人通りのない廊下へと消えていった。

 ポカンと口を半開きにしてその様子を眺めていた翔子だったが、すぐに「追いかけて殺しなさい!!」とスゴイ剣幕でトサカに命令する。

 トサカは初めからそう言われることが分かっていたのだろう。すでに席から腰を浮かしており、包帯のとれた足で地面を強く踏みしめ走り出す。


 先生は、1分もしないうちに首根っこを掴まれてあっさり帰ってきた。

 「ふん、遅かったじゃない」翔子はトサカの頭をグーで殴ってから、半泣きの先生へ視線を移し、憐みの交じった表情で蔑む。

 「―――で、どーいうわけかなぁ? 地球――いや、宇宙の最高傑作であるこのあたし様がぁ、『バカ』……『バカ』とはぁ!?」

 「す、すいません………。そのぉ…何と言いますか……親がお金持ちってだけで威張っているのが前々から気にくわなかった………と言いますか……」

 「あ゛ぁ゛ん!!?」

 「すいません!!」

 大人が子供に怒られている、という状況は、思っていた以上になかなかシュールなものだった。

 翔子の説教は思ってたよりも早かった。大体10分ぐらい。

 それが終わるやいなや、翔子は正座をさせられている先生の眼前に再度右手を突き出す。先生は何を思ったのか、顔をパァっと明るくしてその白くて綺麗な手を受け取る。

 「は、何してんの?」

 そう言うが早いか、翔子は掴んだ先生の手を握り潰す。

 みししししし………という奇怪な音を発しながら、先生の手が給食の春巻きサイズに成り下がった。

 「ははっ………はははははっ……」

 「どうしてあたしがあんたごときに手を差し伸べなきゃならないのよ。ゲーム出せゲーム」

 (一度精神科に行かせたほうがいいんじゃないだろうか………)そんなことを本気で考えつつも、先生がこれから出すであろう『ゲーム』に大きな期待を寄せていた。なにしろ『俺、専用!!』なのだ。過程にいくつかどころではない問題があったとしても、『自分専用の物』があるとういうことは、何だかとても嬉しいし楽しい。優越感がこみあげてくる。

 「ほれ早く」

 翔子は綺麗なのが逆に怖い右手を、もう一度先生の目の前にぐいっと押し出す。


 「ふっ…………ふわぁわはっはっはははっはっぁ!! これが『ゲーム』だぁ!!?」


 泣きながら笑う、テンションの狂った先生が白衣の裏ポケットから取り出したのは、一つの透明なCDケースだった。中には当然のごとくディスクが入っている。

 「ソレはナニでやるんですか? PS3? PC? XBOX?」

 「『PCだと重いからPS3にした』ってメガネくんが言ってたわ――――――で、これからお嫁ちゃん家に行こう!」

 「は?」

 俺はつっこむとかそんなんじゃなくて、ただ聞き返していた。どうして俺ん家でやることになる!? 他にも方法はいくらでもあるだろ?

 「私の調査では、『この中でPS3を持っているのはお嫁ちゃんただ一人だ』とでているわ。時坂さんはパソコンゲームが多いから」

 「だとしてもさ、ITのやつらもテストするために持ってんじゃないのか?」

 「皆の住所なんて知らないし」

 「電話しろ!」

 「番号知んないしぃ」

 「えっと~……………そのだな……あれだあれぇ…」

 必死に反論の糸口を探すが、いつまでたってもに見つかる気配はない。

 「―――クズながら天晴だわ………よし、サイの家に行こう!」

 何故か翔子も乗り気なせいで、余計に俺の集中力がどんどんどんどん削がれていく。

 ――――――そこに、一筋の赤い光が差し込んだ。

 「オイ、オマエら!? いきなりイエに押し掛けるなんてフツーじゃねぇだろぉが!!」

 さすがはまともで面白くないトサカ! ナイス!!

 俺はトサカにウィンクをかまして親指を立てる。

 だが……、

 「うっさいのよ、そんなの知らないしどうでもいいわ。あたしが行くと決めたら行く。これは自然の摂理よ。逆らうなら殺す」

 当然、翔子の発言力はトサカの数百倍であり、トサカの意見は風の前の塵に同じだった。

 「イヤッホーーーォ!! これでお嫁ちゃんの家で堂々とシーツの臭いが嗅げる!」

 堂々と………ってことは、前はコソコソとやってたんですか……ケッ。

 「ふふふっ、あたし友達の家に行くのって初めてなのよね……楽しそうだなぁ………」

 翔子が乙女すぎる! 可愛いよ……可愛すぎるよっ!!

 「オレはイってもダイジョーブなのかぁ? そのぉ……アレだよ………」

 「アレ? ―――まぁいいや。とにかくトサカは絶対に来てくれ! さもなければ俺の家と精神が崩壊する!!」

 「あ、アァ……ワカったけど……」

 とりあえず、トサカが居てくれればかはマシだ。


 「―――んじゃぁ、行きますぅ? 俺ん家」


 次はいよいよ『ご都合主義主人公』の本領発揮です!

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