加奈子さん
英雄さんをいたぶっている翔子は置いておいて、俺はトサカと加奈子さんを尾行する。見失っても先生がつけてくれたGPSによって、二人の居場所はすぐに分かる。
「いやぁ、それにしてもカップル共の多さには呆れるばかりだな! 殺しつくすぞ❤」
華やかな遊園地にとっては少し無骨すぎるコンクリ製の電柱の影に隠れながら、俺はリア充どもをどうやって惨く、凄惨に殺そうかと考えていた。もともと俺は失恋したばかりだ。こうしてイチャついていやがる糞野郎どもを見ていると、腹が立って仕方ない。爆殺がセオリーか………爆死でもして俺にリアルを分けやがれ。
これ以上考えていると人間としてダメな気がしたので、いちゃつくトサカ達へと視線を向ける。もちろんトサカは『まっさきに殺すリスト第一号』だ。翔子だけならまだしも加奈子さんにまで手を出している。これは殺すしかないよね❤ この屑ラブコメ主人公がっ……!!
「どうしたの? 赤城君」
「イヤ、サッキまで消えてた殺気がフッカツしたというかナンと言うか………翔子イジョーにネットリとした殺気が……」
死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーー!!
こんな感じでトサカと加奈子さんのデートは終了した。
次の週のまた次の週の月曜日、俺とトサカと翔子の三人は、いつもの如く理科講義室に集まっていた。
期末テストも終了しほっとしたところではあったが、クラスで聞きそびれていたことをトサカに訊いてみる。
「あの……加奈子さんとはどうなったんだ?」
松浦さんから聞いた限り、加奈子さんとの仲直りは成功したらしい。
しかし、最後がキッパリ終わらない話が嫌いな俺は、そのことが気がかりでしょうが無かったのだ。(出来れば嫌われていろ)そんな事を思いながら、トサカの重い返事を待った。
しばらく包帯で包まれた右手を顎に当て考えこんでいた風のトサカだったが、5秒ほど経ってから薄く口を開く。
「―――メールが……メールがヤバい…」
それだけ言って頭を下げてしまった。
「「?」」
俺と聞き耳を立てていた翔子は首を傾げる。
「どういうこと? あれ」
翔子はトサカにではなく俺に訊いてくる。今のトサカではいくら訊いても無駄だと分かっているからだろう。
「きっとあれじゃないか? 加奈子さんがストーカー化したってことだろ」
トサカの肩がビクッと跳ねる。図星だな。
「自分の好きな人が松浦さんを好きだから、っていう理由で友人を辞めちゃうような人だ。嫉妬深かったりそういうのがあるんだろ」
「ふ~ん、そういうもんなの」
翔子はゆっくりと優雅にトサカの前まで行くと、
「ケータイ貸しなさい」
ドスを効かせてそう言った。
「ムリだムリ。ケータイなんてミせれるか」
トサカはポケットに手を突っ込みながら拒否をする。
もちろんそんなことで翔子が諦めるはずも無く、トサカを地面に叩き伏せてからケータイ電話を奪い取る。
「どれどれ……って、ゲッ…」
翔子は画面を覗き込んだまま動かない。
俺も気になったので覗いてみると、
「―――そ、想像以上に…これは、ねっ?」
それは想像以上どころではなかった。
『7/14 12;20
From 加奈子
Sub Re;
今、赤城君の家の中に居ます
独り暮らしなんだね 合鍵つくっちゃった☆
エロ本が一冊だけだけどあったよ?
処分しとくね
あなたのベットはいい匂いがするね
シーツもらっちゃった
同じ歯ブラシ使わせてもらったよ
一緒に暮らしたらそうしようねっ❤
ご飯作って待ってます
お風呂一緒に入ろうね❤』
………………。
サイレントマナーモードにしてあるのでバイブ音などは聞こえないが、こうしている今も、大量のメールが送られている……。
「最っ高じゃねぇかぁ!!!」
これはストーカーじゃなくて押しかけ女房じゃね? ヤンデレっぽいの可愛すぎね?
「おい、トサカ!! 俺と代われよ! いや、代わってください!! お願いしますっ!!!」
「ハ?」
ポカンとした表情のトサカ。
「加奈子さん可愛すぎだろ!? 翔子だけでもクッソ羨ましいのにこんな可愛い娘まで………てめぇには翔子がいんだから俺に譲れ!! どうせ翔子が好きなんだろうが!」
「――ちょ、い、いきなり何言ってんのよぉ!!」
翔子が顔を真っ赤にする。
「そ、そうだぞサイ!? お、オレが翔子をすすすすすすs――――す~は~、スキなわけねぇだろ!!」
トサカは後ろを向いて顔を隠す。
「はぁ~~~~…………」
自分の存在が虚しすぎて悲しくなる。
「はぁぅあ、早く世界終わんねぇかな………」
こうして俺は、今日も今日とて嘆くのだった。




