部の方針
「うぅ、ごめんなさい……」
俺は全身包帯グルグル巻きの赤城に対して頭を下げていた。こんな大けがを負いながらも登校出来ていることに多少の驚きを覚えるが、翔子が「来なかったら殺すから」みたいな圧力をかけているのだろう。顔の曇り方がハンパじゃない。
「アァ………構わねぇよ。モトモトの原因はオレだしな……………」
苦笑いで赤城が返す。『世の中にはキボウってアリますか? アリませんねっ!』的な顔をしている。
俺も苦笑いを浮かべながら自分の席に戻る。
「ハハハッ、ハァ…………」
赤城は窓の外を眺めたまま力なく笑っている。
翔子がマジで怖い……今度からは気を付けることにしよう………。
「ヨォッス!」
赤城が元気に『理科講義室』に入る。
松葉杖をついてるし、その松葉杖を支える手も親指とそれ以外といった感じでボロボロである。
「こんにちは……」
俺は赤城ほど元気にはなれない。翔子が怖くて仕方ないのだ。どうして赤城が普通に翔子と会えているのかが不思議でならない。
やっぱりこいつは『M』なのだろうか…………『ど』がつくほどの。
「二人とも遅いわね。このあたしを1分も待たせるとはどうゆうこと? 次からは24時間前に行動しなさい」
斜め上をいく意味の分からないことをほざきながら、翔子が机の上に立ってふんぞり返っていた。豊な胸が強調されていてかなりエロい。
「24ジカン前ってイったらイマだぞ? ガッコーで暮らせってか!?」
「そうね、このあたしに仕えるならそれくらいはやってもらわないと」
「ナンでそうなる!?」
はぁ………どうしてこの二人は何事も無かったようにしてるんだ? 明らかに何かあっただろ!? 赤城のケガから鑑みるに何かあったろ!!?
そんな俺の考えなど分かっていない翔子と赤城は、教室の真ん中辺りに隣り合って座る。
俺はきょろきょろと首を動かして自分の座るべき席を探す。
『二人の前も良いけどやっぱり後ろが良いかな?』と、人と向き合って話せない恥ずかしがりやな俺は赤城の後ろの席に腰を下ろす。
「……………」
「………………」
「……………………」
誰も口を開かない。
やっぱり二人の間でギクシャクしたものはあるようだ。
そこで痺れを切らした翔子が口を開く。
「えぇ~、こほん…………あぁそのぉ、あたしたちの部はできたわけだけどぉ、その、何の部とかはまだ決めてないのよねぇ…………。だから、あんたたちの小さな脳みそから汁出してでも考えなさい!」
いつもより喋りにキレがないが、いつものように人を馬鹿にする。
そういえば俺はまだ着物を着てないぞ、男子制服のままだ。これってつまり、俺は女装から開放されたってことかぁ!?
「っとその前に…サイ、着物の着付けするからこっち来て」
そうですよね………さいですか……。
「ああ、トサカは部屋の隅と合体しときなさい。こっち見たら左目も潰すから」
赤城は左目を両手で隠してから、右目が眼帯のため両目とも見えなくなったことを思い出しすぐに外す。
「―――って、結局オレのあだ名は『トサカ』にケッテイかよ!?」
気まずさを逸らすように赤城が吠える。
「そうよ。でもまぁ『クズトサカ』の方でもいいけど? もしくは『駄不良』」
「……『トサカ』でイイです………ハイ……」
しょぼんとした赤城が可愛らしかった。
「俺もトサカって呼んでいいか?」
「ムリに決まってんだろ!!」
「なら俺のことをサイって呼んでいいから。ねっ?」
「―――ポッ……。イクラでもヨんえでくれぇぃ!!」
「何よこの格差……死ねばいいのに」
「で、部活は何にする?」
翔子が声を張り上げて言う。
俺は花柄の黄色い着物を着ていた。簪ではなく、でこが見えるようにゴムで前髪をくくられている以外はいつも通りである。ゴムになった理由は翔子曰く、「可愛いから」だそうだ。簪やるのが面倒なだけだと思うけどな、いっつも時間かけてたし(可愛いは無視)。
「ヤッパ運動部はムリだろ」
赤城改めトサカが口を開く。
俺もその意見には賛成だ。三人でできるスポーツなんて全然無いだろうし、二人でやるものでも大半は既に部が作られているはずだ。俺たちの入り込む余地は無い。
「じゃあ文化部なんだけど、あんたたちのやりたいのって何なの? ちなみにあたしは茶道」
着物の着付けとかも出来るしそういうのをやったことがあるんだろうな……金持ちめが!
「オレは図書部かな。中学んトキは『全員部活に入るように!』ってイわれてたから図書部にユーレー部員としてハイってたんだよ。ケッコー楽しかったぞ、スグに帰れて」
「あたしたちは放課後に集まりたいから幽霊部員は黙ってろ。―――で、サイは何がいい?」
翔子が目を輝かせて訊ねてくる。
俺も図書部を推薦したかったんだけどな……サボれそうだから。
しかし、今はとても本当のことを言える雰囲気ではない。ここは考えろ、考えるんだ! 祀木祭司!!
――――――――――――、
「『人助けの部』ってのはどうかな? 定番だし」
結局は定番、王道だ。
人の為に働けて充実感もある。最高の選択だと思う。
「エェ~~! オレはカクジツに働けねぇぞ、コワがられてるから」
だから髪でも黒に戻せばだいぶ普通だと思うんだけど……まぁいっか。
「トサカも人を助けて人望を得るんだよ。そうすればお前も怖がられなくなるだろ?」
「っ! 祀木…じゃなくてサイ………オマエってやつは!!」
涙を堪えてトサカが左目で見つめてくる。右目には眼帯を着けているため、見つめられることに慣れていない俺でも受け止めれた。
偉いぞ俺! 成長がけたたたましい!! あれ、けたたましい?
俺が頭を捻っていると、
「(そんなことをすればあたしたちの名が学内に知れ渡るわよね……そうすればあたしを崇める宗教ぐらい出てくるかしら…となると二人と一緒にいれなくなる………)―――その人助けの部ってのは無理ね。クッ、あたしのスター性が仇になるなんてっ!」
「「いや無いから」」
俺とトサカが揃ってツッコむ。
「へ!? なんでよ?」
「だってオマエを崇める宗教なんてデキる訳ねぇだろ」
「漏れてたの? あたしの心の声!」
漏れてなくてもツッコまれてただろうけどね……。
「まぁ『人助けの部』ってことでよくないか? 良いことあって悪いことなしだし」
「ソーだな、オレも賛成だ。(これでオレもモテモテにぃ!!)」
二人とも心の声が丸聞こえだ。逆に扱いづらいんだけど……。
「う~ん、そうねぇ………確かにそれでいいわ。あたしを崇めるのは下民の自由なんだしね」
まだ言ってんのか……。
でもまぁ、これで俺達の活動方針は決まった。
『人助け』
リア充感がパンパない!!
赤城は『トサカ』になったのでよろしくお願いします。
トサカの方が語呂が良い(気がする!)ので。




