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プロローグ的なもの

 はがない見てから書きました。

 「クッソガァァァァーーーーーーー!! ······ぜぇぜぇ······」

 夕日に染まった人のいない小さな公園で、俺は一人、何周も何周も死にもの狂いで走っていた。

 何者からか追いかけられて逃げているのではなく、ただたんに発狂していた。


 それは今日の昼飯時におきた。

 俺はいつもの如く自分で作った簡素な弁当を一人っきりで突っついていると、突然後ろから女の声に話しかけられた。

 「祀木まつりぎさん? だよね。ちょっと訊きたいことがあるんだけど······」

 振り返ると、そこには眼鏡をかけた大人しそうな女の子がいた。確かとなりの席の娘の友達だ。

 「は、はいっ! ···いいよ」

 今日初めて発した言葉だったので細いし裏返る。赤面するのを必死で抑えながら「俺に何か用かな」と二枚目ぶって返し、元から無い威厳を取り戻そうと試みる。

 「えっとー、訊きづらいことなんだけどね······その······」

 切り揃えられたボブカットの髪をいじりながら、眼鏡少女は俺に問いかける。

 告白などという淡すぎる期待をしてしまうのは仕方ないよな、男の子だもん。

 「······祀木さんって彼氏いるの?」

 ··················は?



 「俺は女じゃねぇっつーのぉぉぉーーーーー!! ······ぜぇはぁぜぇはぁ······彼氏ってなんだよ······」

 俺はひとしきり叫んでから、この公園唯一の置物(オブジェクト)である石でできたベンチに座るというか倒れこむ。

 かれこれ5分近くも叫びながら全力疾走していたので喉が痛い。足もプルプルだ。きっと明日は厳しい筋肉痛だろう。

 「俺は、はぁはぁ、女じゃねぇ······」

  石の冷たさをズボンごしに感じながらそう呟く。

 もう高校生活が始まって早2ヵ月半。俺は男子の制服をビシッと着こなしているし、身長も165センチある。目つきは鋭い方だと自負しているし、この一週間前に「一番かっこいい髪型で」と美容師に頼んでカットしてもらったところだ。「一番かわいいですよ」等と言われたが今時(いまどき)は何にでも「かわいい」をつけるのできっとその類いだろう。ブサカワイイやらハゲカワイイ等の。

 「そろそろ帰りますか···」

 もう散々叫び終わったので家路につくことにする。

 テンションが上がってから下がると妙に虚しい気持ちになってくる。愚痴を言える友達も居ないしな···…ケッ。





 家に帰る途中に『汗でペッタリと張り付いた制服をきた男装女子がいる』的な目で仕事帰りのサラリーマンたちに見られたが気にしない。いつもの事なので一々気にしていたら身が持たない。

 くたびれながらドアの鍵を開けて赤い屋根をした一軒家に入る。

 「ただいまぁ···」

 いくら待っても返事は返ってこない。

 それもそのはず、俺は絶賛独り暮らし中である。

 父親がイギリスに転勤となり、全く英語の出来ない俺は日本に残された。かれこれ1ヶ月も一人である。友達すらいない俺は彼女を家に呼ぶなどという高等技術は使えないし、女の子が転がりこんで来て居候なんてことにもならない。ただ、母親に代わって家事をしなければならないというだけ。世の中とは世知辛いものだ。初日に「ウッヒョー!」となっただけである。

 「体ベタベタだな······」

 洗面所に向かい給湯器の電源をいれてから湯船に湯を張る。

 服を取りに行くにしてもベタベタな半袖カッターシャツは邪魔だ。一気に上半身から剥がしておく。

 一度、何となく洗面台に取り付けられた鏡で自分の姿を確認するが、そこには目つきが少し鋭くて胸がない黒髪ショートの美少女がいるだけだった。自分でもドキッとしてしまうのが情けない······。


 「プッはー! やっぱり運動した後のお風呂は最高だな!」

 湯船に体を沈めながら親父臭いことを言ってみる。

 あっ! 今度から親父口調で話せば男っぽくなるんじゃないか? ······そもそも誰も話す人がいなかったな······。

 「友達かぁ···」

 女と話すとこっちが緊張するし、男と話すと相手が緊張する。そんな感じで会話は弾まないし、俺は自分から話しかけられないタイプだしで一向に友達ができる気配は無い。

 「何か起きないかなぁ···」

 あくまで人頼みというところが情けない、悲しくなってくる。

 だが、何かアクションをおこせる行動力もないし度胸もない。よってそれしかない。

 「はぁあ······」

 俺はため息をつく。

 その声がちょっとエロかったのでもう一度ため息が出る。

 当人が『男の娘おとこのこ』だと良いことは無い。

 男に好かれてなんだってんだ! ······はぁ······。

 俺は自分の股の間に性器が付いていることをしっかり確認してから湯船を出る。いつかは無くなっちゃうんじゃないかと内心怯えてしまっていた。

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