陽光降り注ぐ園
以前から構想していたものが形になってきたので挙げてみました。
拙い文章ですが、それでも良いという方はどうぞ。
目を覚ませば、そこは冴えわたる緑。
木々から降り注ぐ穏やかな木漏れ日が、私を温かく包んでくれている。
新緑の薫り、風による木々のざわめき、時折聞こえる鳥の声が心地よい。
私が横たわっていたのは、木でつくられたブランコだった。
体を起こし、あたりを見渡すと、ある人影が目に付いた。
私のすぐ隣の木の下で、一人の少女が眠りについている。
その娘は黒髪に黒いワンピースを着ていた。メガネをかけており、端正で凛とした顔立ちはとても美しい。
何かを読んでいたのだろうか。大きな本を膝に伏せており、両手は律儀にもその上に重ねられている。
ふと、彼女の髪を見やると、そこにクロアゲハがついていることに気が付いた。
黒い服をまとう彼女にとても似合っているが、私はどうしてかそれが欲しくなった。
おそるおそる、彼女を起こさないように腕をめいっぱい伸ばし、蝶の羽根に指が届いた
―――と思った瞬間、私はブランコから転げ落ちた。
びくん、と体が震えた。
はっとして目を覚ますと、そこは見慣れた天井。
そう、私の部屋である。
すっかり覚醒してからも、自分はしばらく呆けていた。
夢とは思えないほどのリアルな感触。そして……
「あの子は、一体……」
ジリリリリリリリリリ……
はっ、として時計を止める。
「いけない、今日は始業式の日だった」
そう、今日から私は高校2年生になるのだ。
私は着替える間も惜しみ、一階へと降りて行った。