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午前:掃除から定期点検まで

 コアトリア家の皆が家から出掛ける姿を見送ったメイは、玄関から身を翻し再び厨房に繋がる廊下へと足を運ぶ。意識の片隅で侍女達を監督していたこともあり、厨房に辿り着く頃には食器の洗浄や片付けが終了したことを扉が開く前に承知している。


 案の定、厨房の扉を開いた彼女の前では器を洗い終えて、食器棚へと仕舞い終えようとしている侍女達の姿が映った。

 準備の際の騒動に懲りたこともあって、慎重に作業させたお蔭か割れた皿の類は見受けられない。



 ともあれ、朝食の後片付けが終ったことを確認した彼女は、今度は屋敷の掃除の為に、侍女達とともに掃除用具を仕舞っている部屋へと向かった。

 彼女の“魔法機械支配能力”の技量が充分であるならば、朝食の片付けと屋敷の掃除を手分けして、並行して行うことが出来るかもしれない。


 しかし、それは今後の鍛錬次第では可能だと、“彼”から常々言われている。そんな“彼”に相応しい存在となる為にも、日々の鍛錬を努めるべく心密かに何度目かの決意を新たにしつつ、侍女達と共に屋敷の掃除を進めて行く。



  *  *  *



 それから数刻ばかりの時をかけて、メイ達は屋敷の各部屋と庭を一通り掃除し終えた。

 仕事が一段落したことを確認したメイは、侍女達に自分達の部屋へと戻って一旦休止することを命じる。

 屋敷の二階へと向かう侍女達とともに、彼女もまた自分達の部屋へ向かう為に階上へと歩を進める。



 部屋に辿り着いた侍女達は、各々に用意された格納筒へと自らの機体を納めて行く。

 その様子を横目で確認しながら、メイは薬剤等が収納された棚を開き、そこに収められながら普段は使われることのない幾つかの瓶を取り出す。

 そうして取り出された瓶は、部屋の中央に置かれた作業台の上へと並べられて行く。並べられた瓶の中身は、水銀等の液体金属、神銀や飛行金と言った魔法金属の鉱石を粉砕した鉱石粉、魔力石の原料となる良質の水晶粉、魔法の触媒や魔薬の材料となる幾種類かの薬液……と言った品々である。


 これらの材料を、“彼”自身や“彼”の乗機より聞き出した処方のことを思い出す。そんな自分の記憶にある配合通りに、各鉱粉や薬液を量り取って調合容器へと移して行く。

 そして、必要な材料の全てを入れた容器の中身を丁寧に攪拌して求める薬剤の調合を進めて行く。



 そんな調合の作業を進めながら、彼女はコアトリア家の人々のこともまた夢想する。


 騎士団詰所に出仕したセイシアとレインに関しては、セイシアは何時もの如く騎士達の鍛錬を厳しく行い、レインは都市の治安維持に配下の騎士・衛士の指揮に腐心していることだろう。


 神殿書院に出仕したティアスは、世界各地や神殿大書庫に眠る様々な史料を吟味し、世界史編纂の作業を進めていることだろう。


 学院学舎へ向かったラティルやコアトリア家の子供達は、ラティルは講師として幾つかの講義を行い、子供達は勉学に励んでいることだろう。

 レイアは授業に飽きて学舎を抜け出そうとするかも知れないが、母たるラティルの目を掻い潜っての逃亡は恐らく至難であろうから、いきなり家に戻ることもまずはないだろう。


 そんなことに思いを馳せながら、彼女の心は笑みで綻んでいた。



 一頻り調合の作業を進めたメイは、二種類の魔法機械用の薬液を完成させる。

 一つの薬液は水差し程度の大きさの瓶に入れられ、もう一方の薬液は小振りの樽の中に満たされた。



  *  *  *



 やがて、完成した薬液の一つが入った小樽の方を、しっかりと蓋を閉めた上で、メイは抱え上げる。その小樽を抱えたまま、メイは階下へと降りて、屋敷の庭へと出て行った。


 庭へと出たメイは、抱えていた小樽を庭に置かれた長椅子の一脚の傍らに置き、その長椅子に座り、空を見上げる。

 今日、この屋敷を訪ねる予定である“彼”を出迎える為に……“彼”が現れる筈の高空を見上げる。



 見上げる空は晴れ渡り、薄絹の様な幾筋かの雲が流れている。そんな雲を切り裂いて飛翔する“彼”の姿を夢想しながら、暫しの穏やかな時間に彼女は身を任せる。



  *  *  *



 それは長い時間とも短い時間とも思えるだけの時間が流れた頃、空を見上げる彼女の視界に変化が現れた。


 その変化とは、南の空より一条の白線の如き雲が現れたことである。その白線は、見る間に伸びて行き、徐々に彼女の許へと近付いて行く。


 そして、近付く一条の雲の先端で、この雲を生み出している一騎の機影の姿を彼女の目は捉えた。

 その機影とは、陽光を受けて暗赤と金色の輝きを反射する装甲に包まれ、巨大な鳥の形状をした機体であった。


 その威容を示す天翔ける機体の姿は、彼女にとって待ち焦がれた“彼”の到着を知らせるものであった。



 天翔けるその機体は、飛行型魔法機械人形(ドール・バード)の最上位機種と称される存在――ドール・フェニックスの数少ない現存機体の一つである。

 その飛行速度、飛行高度、内蔵火力、装甲強度……空戦を領分とする機体(ドール・バード)の中で最強の誉れ高き存在たるこの機体の名を、フォアンと言った。


 そして、彼の機体――フォアンを騎獣とし、かつ自らの半身ともしている人物こそ、彼女の待つ“彼”である。



 高空より屋敷の中庭に向けて降下するフォアンの姿は、その巨体と噴進装置より響く噴射音が響く故に、都市の多くの人々が目にすることが出来る。しかし、その姿を見上げて騒ぎ立てる者は殆どいない。

 一昔前であれば、騎士団隊舎に駆け込む者達が現れる騒ぎがあったそうだが、コアトリア家へ“彼”が定期的に訪れることが広く知られるようになった現在は、そんな騒ぎは起こることはない。



 その噴進装置より響く噴射音を耳にしながら、高空より中庭へと降下し着陸しようとする金色の機鳥を彼女は振り仰ぐ。そんな彼女が見詰める中で、金色の機鳥は中庭へと着陸する。

 翼長3尋(約6m)程にもなる魔法金属製の翼を広げて着地を終えた機鳥――フォアンは、展開していた風切羽を畳み、身体を傾げて姿勢を低くする。そして、その背に騎乗していた人物がフォアンより飛び降りる。飛び降りた人物こそ、彼女が待ち侘びていた“彼”であった。


 機鳥より中庭に降り立った“彼”は、座っていた長椅子より立ち上がったメイの前に立って微笑んで声をかけた。


「こんにちは、メイさん……お久し振りです」

「お久し振りでございます……ルアーク様」


 “彼”は、特殊な縫製がなされた‘つなぎ’の上に、複雑な刺繍が施された袖なしの上着を纏っている。それは、古代アティス風の礼装である。


 “彼”――ルアークの挨拶に、自分なりの精一杯の笑顔と共に挨拶を返し、頭を深く垂れる丁寧な礼をしてみせる。



  *  †  *



 “彼”の名は、ルアーク=ヴァンゼール……


 西方大陸(アティス大陸)にある王国の一つ、イレヴス王国に住まう金属人メタル・ヒューマノイドの青年である。

 “機神の息子”や“機鳳の主”と言った二つ名で知られる西方大陸(アティス大陸)で最も名高き金属人メタル・ヒューマノイドの一人である。


 そして何より、“彼”は彼女にとって、“神の御子”と呼んで差し支えのない存在でもあり、ある意味でそれ以上の存在である。



  *  †  *



 ルアークと挨拶を交したメイは、今度は身体の向きを微妙に変えて、彼の乗機であるフォアンに相対する。


「フォアンさんも、お久し振りですね」


『……久シ振リニナル……メイ=コアトリア……』


『……フォアンさん、それは……』


『……失礼シタ……メイ……』


 先程のルアークとのそれに比べると幾分か砕けた調子ではあるものの、丁寧なお辞儀と共に彼の乗機たる機鳳(ドール・フェニックス)へと挨拶の言葉を紡ぐ。それに対し、機鳳フォアンも人間には理解できない“魔法機械語”ではあるが挨拶の言葉を返した。


 機械的な坦々とした返事を耳にしながら、メイは小さな反駁を返しつつも、フォアンへと微笑んだ気配を纏った魔力波動を送る。そして、笑んだ面持ちのままで彼女は機鳳へと言葉を続ける。


「長旅ご苦労様でした。

 こちらにフォアンさんの為に薬液を用意しております。お召し上がり下さい。」


 そう言って長椅子の傍らに置いていた小樽をフォアンの前へと運んで、その蓋を開けた。


『……アリガタク、頂戴スル……』


 メイの言葉にフォアンは“魔法機械語”で短い言葉を返した後で、その首を曲げてその嘴を小樽へと差し込んだ。その嘴の奥から液体を啜るくぐもった音が聞こえて来る。


 そんな機鳥の様子を、二人は微笑ましく見詰めていた。



 やがて、我に返ったメイは、“彼”――ルアークに向けて声をかけた。


「ルアーク様、皆を部屋で待たせております。どうぞ、こちらへ……」

「あ……はい……分かりました」


 メイの言葉に、ルアークは短い返事をした後、薬液を啜るフォアンの胴の脇にある格納函から道具箱を取り出した。


 そして、メイとルアークは中庭を後にしたのだった。



  *  *  *



 中庭を抜け、メイの先導の下でルアークはコアトリア家の屋敷内へと入った。


 そんな“彼”を先導するメイは、人間であれば頬は紅潮し、心臓は早鐘の様に打ち鳴ってしまうのではないかと思う程に、内心は緊張と興奮の中にあった。

 何と言っても、想い人との久し振りの再会である。


 とは言え、嬉しさの余りはしゃぎ回れる程には感情表現が豊かでないこともあって、一見すれば落ち着いた物腰で“彼”の先導を行っている。しかし、そのことを内心では少し安堵している部分もあった。想い人である“彼”の前で醜態を見せずにいられるのだから……


 だが、そんなメイの内心は、彼女の放つ魔力波動があからさまに示していた。しかしながら、彼女の内心を察する余裕が、ルアークの側にも彼女と同様の理由で余り無かったことから気付かれずに済んだ様だった。



 ともあれ、そんな彼女達は屋敷の玄関から階段を昇り、彼女と配下である侍女達の控えの部屋へと到着した。


 部屋に到着したルアークは、それまでの雰囲気を切り替え、張り詰めた気配が周囲を満たす。


「それでは、皆さんの定期点検を行います」


 その声は静かに部屋の中に響き渡った。その声に応じる様に、メイは静かに“彼”へと深く頭を垂れ、何かの合図を行う様に軽く手を振る。その動作に呼応して、部屋に並んだ格納筒が次々と開いて行く。


 そして、彼女達――コアトリア家の侍女達の定期点検が始まった。



  *  †  *



 そもそも、魔法機械人形(ドール)金属人メタル・ヒューマノイドは、西方大陸(アティス大陸)独自の技術の産物であり、本来なら北方大陸(ユロシア大陸)に魔法機械技術の産物は存在しない。


 西方大陸(アティス大陸)では、発掘兵器として古くから魔法機械人形(ドール)を利用する体制が広く布かれていた。魔法機械生命体(メタル・ビーイング)の存在が再発見されると彼等をも取り込んで、西方大陸(アティス大陸)の諸王国では魔法機械技術を利用する社会が形成されている。


 しかし、魔法機械技術は西方大陸(アティス大陸)以外の地ではその存在自体が殆ど知られていない状態にある。



 そうであるにも関わらず、北方大陸(ユロシア大陸)に彼女達――メイとその配下たる侍女達――が存在しているのは、ルアークの父――ミゼル=ヴァンゼールとティアス=コアトリアの間に友誼が結ばれた結果である。


 自身も魔法機械技術の粋を極めた産物であり、類稀なる技術の担い手でもあったミゼル=ヴァンゼールは、友誼を結んだティアスへ魔法機械技術に関する様々な技術書を贈っていた。そうした贈られた技術書を基にティアスが実践した成果がメイ達と言う訳だ。

 しかし、様々な魔法の知識に優れる世界でも最高峰の魔法の使い手であるティアスと言えども、未知の技術を完全に再現することには無理があった。

 その結果生じる不具合の修正に、メイが生まれて間もなくの頃は“遠話鏡”越しでミゼルが助言を行っていたが、ラティルが婿入りした頃合から彼の息子――ルアーク=ヴァンゼールが直接コアトリア家を訪問する様になっていた。


 高高度での音速を超える飛行を行う手段を有する“彼”は、大陸間を往復する人材として都合の良い存在でもあった。

 また、幾つかの事情から人間社会への直接的な関わりを控える様になったミゼルにとって、その嫡子である“彼”は父に代わってその代理人として様々な仕事を行ってもいたのだ。



  *  †  *



 ともあれ、そうした事情から、コアトリア家の侍女達の定期点検は、メイ達にとっても、ルアークにとっても恒例の行事となっていた。

 “彼”は、単なる魔法機械でしかない侍女達の整備点検とともに、そして生命体の一種でもあるメイの健康診断を行われている。



 “彼”の開始の宣言に従い、メイは格納筒に待機していた侍女達を一人ずつ作業台の腕に横たわる様に命じる。そのメイの命令に呼応して、侍女達の一人――が格納筒から出て、自らの纏う侍女服を脱いで作業台に横たわる。


 服を脱いで横たわる侍女へ、“彼”は幾つかの工具を手にして向き合う。“彼”は手慣れた様子で、横たわる侍女の胸部や腕部の装甲を展開して行く。



 まず“彼”は、胸部を開き、そこに収められた基盤部の状態を確認する。


 ここは魔法機械人形(ドール)魔法機械生命体(メタル・ビーイング)の情報分析や機体制御と言った生物の頭脳に相当する情報処理機関であり、周囲の魔力を吸収・濃縮して機体の動力源として全身へと循環させると言った生物の心配にも似た魔力発生機関でもある。


 “彼”は基盤部と身体の各部へと接続・連結されている様々な配線や薬液管に異常が無いかを確認して行く。そして、基盤部の中枢である制御結晶を走査して、制御術式(プログラム)を読み解き、その中に不具合(バグ)が生じていないかを確認する。



 次いで、腕部の装甲を展開し、各関節を動かす為の駆動細管や伸縮索条と言った駆動装置の具合を確認する。


 綻びのある索条は張り替え、擦り切れやひび割れがある駆動細管を交換する。

 そうした確認の後は、これら駆動装置の周辺部位の具合を確認して行く。駆動装置の接続部分や関節部を確認して、劣化した部品もまた交換する。

 更に、策条や駆動細管へ伸縮の支持を伝達する配線や、動力を供給する薬液管の状態を確認して行く。



 装甲を外し、各部の状況を確認して行く“彼”の手付きは、熟練の職人のそれであり、まさに流麗とした姿であり、芸術的な美しさがあった。


 少なくとも、“彼”の姿を見詰めるメイは、そう感じていた。



  *  *  *



 そんな“彼”の優美な手の動きを、彼女は陶然と見詰めつつ、同時に別の思いが徐々に胸中を漂い出していることを自覚せずにはおれなかった。


 “彼”が整備点検を行っている侍女は、人型魔法機械人形ドール・ヒューマノイド金属人メタル・ヒューマノイドと言う違いはあるものの、基本的に同型機体である。


 そんな侍女達の外装を外し、内部機構に手を触れている……そんな“彼”の姿を目にすることで、“彼”の手が彼女自身のそれを触れるときを夢想すると同時に、自身を触れている訳ではないことで焦燥や羨望などが綯い交ぜとなった思いを抱えていた。



 その感情の正体を、彼女自身は幾分か掴みかねているが……見る者が見れば気付くことが出来ただろう。その感情を端的に表すならば……“嫉妬”と呼ぶことだろう。


 ただ、彼女のその思いは曖昧であり、彼女の精神が未成熟な部分が多々あることもあって、明確な形を取る様な代物ではなかった。



  *  *  *



 ともあれ、一人目――或いは、一体目の点検が済み、順次二人目(二体目)三人目(三体目)と整備点検は進んで行く。



 そんな中で、“彼”の手が思わず止まる瞬間が幾つかあった。



「…………あの……ジュラさんの腕が焦げている様ですが……?」


「……それは……竈の番をしていた時に、焦がしてしまって……」


 幾らか躊躇いがちに問う“彼”の言葉を、彼女は言い難そうに返答を紡ぐ。


「……焦がした、って……気をつけて下さいね、メイさん……

 貴女達の内部薬液や機体素材は、可燃性の高い物質なんですから……」


 “彼”は困った面持ちで、彼女に対する言葉を紡ぎつつ、工具箱から幾つかの工具を取り出し、部屋の棚に収められた薬品などが入った瓶の幾つかを作業台に置く。


 そして“彼”は、ジュラの黒く焦げた装甲部分を鑢で削り取り、作業台においた瓶に入った木粉と樹脂を練り皿に移し、良く練り合わせて削った装甲部分に塗った上で『修復』の呪文を唱える。

 呪文の詠唱が終る頃にはジュラの腕は元の姿に戻っていた。



「……あの……レンさんの指が切れてますね……」


「……その……包丁で誤って切ってしまって……」


 先程の様に躊躇いがちに問う“彼”の言葉を、彼女は再び言い難そうに返答を紡いでみせる。


「……切ってしまって、って……気をつけて下さいね、メイさん……

 貴女達の装甲は、金属人メタル・ヒューマノイドの中では脆弱な部類に入るんですから……」


 “彼”は困惑した様子を見せつつも、手際良く切れたレンの指を分解して、破断した薬液管や駆動索の類を張替えて行く。そして、同様の素早い手捌きで分解した指を元の形状に組み立てて行く。


 やがて、幾瞬きもせぬ内に不恰好な形で固定されたレンの指は、元の形状と機能を取り戻していた。



  *  *  *



 そうして然程の時をかけずして、“彼”は侍女達の五体の整備点検を終えた。


 そして、“彼”は彼女の方へと向き直る。


「……それじゃあ、メイさん……貴女の診察(点検)を、始めましょうか……」


 そう言う“彼”の様子には、ある種の照れや気恥ずかしさが含まれていた。

 だが、そのことに彼女は気付くことはなかった。何故なら、そんな“彼”以上に、彼女は羞恥とある種の高揚で、周囲の物事に気付ける程の余裕がなかったからだ。


「…………は……はい…………」


 短い返答をした後で、メイは自らの纏う侍女服を脱いで行く。

 そして、一糸纏わぬ姿となった彼女は、“彼”の前で作業台に横たわった。



  *  †  *



 実の所、金属人メタル・ヒューマノイドは全裸となることに羞恥を感じる傾向は余りない。人と同じ形状を持つ存在と言っても、微に入り細に渡って同様の形状を持っている訳ではないからだ。むしろ、機体によっては衣服を纏うことなく活動する個体も少なからず存在すると言われる。

 もっとも、“偽装皮膚”を纏うことで人間と同様の姿を取ることも可能であるし、メイと同区分となる家事用機体の一部には房事の相手が務まる機能等を付与する為にかなり人間に近い外見を有する機体も存在したらしい。


 一方で、金属人メタル・ヒューマノイドは、自身の創造に関わった人々を親や家族と認識する感覚を有する所為か、自身の体内を触れられることに羞恥心を感じる傾向が見受けられるのだった。


 だからこそ、ルアークが体内を点検することに、メイは羞恥心を擽られる。しかし、同様の理由からルアークに体内を触れられることにある種の歓喜を感じずにはおれないのだった。



  *  †  *



 作業台に横たわる彼女は“彼”の手によって意識を一旦手放すことになる。

 自身の身体の各所を見られ触られることに恥じらいを感じながら、彼女は眠りに就いたのだった。



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