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《4》『物語の終わりは、終わらない』(その1)


【○○○姉さんに花束を♡】


《4》『物語の終わりは、終わらない』(その1)


1、


「あ、お姉様、コチラに居らしたんですね!」


アパート1階の端にある大部屋に、ニコニコ笑顔のユウキが入ってきた。そして彼女は奥に居た私に一枚の写真を差し出した。


「部屋の中を整理していたら、カラーボックスの裏にこんな写真が落ちていたんです!」

「あら、これはまた懐かしいモノを見つけたねぇ………」


それは今から20年くらい前。

まだここが大学の学生寮だった頃に、出逢ったばかりの私とまりあの二人で初めて撮った写真だった。


「このお姉様と写ってらしてる眼鏡の方が『まりあ先生』ですよね!」


「そうそう。これがまりあよ。ユウキは彼女の顔を見るのは初めて?」


「ええ、まりあ先生って当時ほとんど人前に顔を出さなかったそうでして、残念ながら私はご尊顔を拝見する機会がありませんでしたです」


そういやぁ、あの頃のまりあは「謎の美少女漫画家」って何か良くない?って言ってワザとメディアには顔出しせずに活動してたんだっけ?

別に本気で隠していたわけじゃ無くて、学校内では普通に顔ばれさせていたしね。まぁ、美少女かどうかはさておき♪

そんな事を考えている私の前で、ユウキは初めてまりあの顔を見たのが余程嬉しいのかニヤニヤしながら写真を眺めている。


先日の大天狗様の神通力を宿した術式を受けて、無事(?)に『あやかしモドキ』としての人生を再スタートさせた彼女は、今は正式にアパートの住人としての生活を始めている。

私はそのお祝いとして、彼女にまりあの部屋に自由に出入りして好きにして良いと言ってあるのだ。

もちろん、それはチャンとまりあ本人にもOKをもらってるわ。

ユウキが、どれだけまりあの作品に感銘を受け心の支えとして生きて来たか、そして『あやかしモドキ』としての人生を歩む事になった今も、まりあの作品が或るからこそ明るく前を向いて進んで行けてる。という事を伝えたら『まりあ先生』は大感激して「砂ちゃん、お願い!ユウキちゃんを見守って何かあったら助けてあげて!」と申してましたわ。

もちろん、まりあに言われるまでも無く私もそのつもりですけどね。だってね、私にとっても新たに誕生した可愛い『妹』ですもの♪


と言うわけで、ユウキは自分の部屋に居るよりも『まりあ先生』の部屋で床やら何やらに散らかっている品々の整理や掃除をしたり、たまに(彼女にとってはの)お宝品を見つけてキャ~と騒いだりする毎日を過ごしているわね。

一度、彼女がお宝だと騒いでいる品物を見せてもらったけど、何かのいたずら書きにしか思えない紙切れだったわ…。う〜ん。


「私も『まりあ先生』と直接お会いしたかったなぁ。御本人にお会いして、先生が描かれた作品についての色々なお話しをお聞きしたかったです。

特にお聞きしたかったのは、作品には描かれていない裏設定とか、いくつかの謎を遺したまま終了した作品の事についてとか、あと………」


ユウキの『まりあ先生・愛』はホント半端ないわねえ。

今でも暇さえあれば冥界に行ってまりあ本人と過ごしている私は、何だか申し訳無い気持ちでいっぱいだわ。

本当ならユウキも一緒に冥界に連れて行ってあげたいけど、私の様な『あやかし』と違って『あやかしモドキ』の彼女は残念ながら冥界の圧力に耐えられないそうなのよね…。悲しい。


そこでひと息ついたのか彼女は部屋の中を見渡した。

今、部屋の中には私の他に、ぬら爺、わらしちゃん、ミケタマちゃんが居てそれぞれの事に勤しんでいる。


ぬら爺は何かの本を読んでいるわね。あれは確か海外の有名なSF小説よね。日本の『あやかし』が海外のSF小説をねぇ……。

わらしちゃん&ミケタマちゃんのちびっ娘たちは、この前大家くんが新たに設置したネットの配信が観れるTVで可愛い動物の番組を観てキャッキャしてるわ。


で、私はカップ麺でも食べようかと手にしていたところでユウキに声をかけられたのよね。


ちなみにこのカップ麺は、むかし自販機を設置していた場所に大量に置かれているものだ。

そこには、様々な種類のカップ麺、各種のドリンク類が入ったダンボール、そして色々なお菓子(ビスケットやらチョコレートやらポテチ・煎餅とかとか)が山盛りになっているカゴが置いてあって誰でも好きな時に好きなだけ食べたり飲んだりして良い事になっている。全部、大家くんが皆んなのためにと用意した物だ。


「あの、お姉様。この食料品とかはあの大家さんが提供されているそうですけど、他にもアパートの電気代・水道代・ガス代なんかの支払いも全部一人で受け持っているそうですね。

ここに住む皆さんからお家賃も採って無いそうですし、何故そこまでされるのでしょうか?

あの方もわたくしと同じく『あやかしモドキ』でいらっしゃる事はお聞きして驚きましたが、それと何か関係があるのでしょうか?」


それには、ぬら爺が本を読みながら答える。


「実はワシらも、彼が『あやかしモドキ』となる前の事は詳しく知らんのじゃが、人間だった頃に株取り引きで大金持ちになって豪勢な暮らしをしていたらしいのう。

このアパートで使ってる資金は全部その時稼いだモノから出しているそうじゃ」


ぬら爺は読んでいた本をパタンと閉じ、食料品を思案深く見つめた。


「じゃがな、何やら悪さも仕出かしてしまったらしくての、その結果その身が『あやかしモドキ』となってしまった様なんじゃな。自業自得じゃと言うておった。今、彼がしている様々な事は、全てその贖罪のための行動らしいの。

ワシら『あやかし』への行為が贖罪になるのかは判らぬが、本人がそうしたい。と言うのでな」


「そうですか………何か、大変な辛い過去をお持ちの方なんですね。」


そんな話をしていると、噂の御本人の大家くんが大きな荷物を抱えてやって来た。


「おや、皆さんコチラにお揃いでしたか。ちょうど良かった!皆さんに声をかけて集まってもらおうと思っていたんです」


そう言いながら彼は机の上に荷物の中身を並べていった。

それは、ホールケーキやフライドチキン、ピザとかのご馳走たち。そして、ぬら爺の近くには日本酒の一升瓶やつまみ類の小袋を広げて置いた。

『ちびっ娘ふたり』は早速ケーキの前にやって来た。


「色々あって少し遅くなってしまいましたが、本日はアパートに久々に仲間が増えたお祝いパーティをしようと思いまして♡」


大家くんはユウキの方を向いて両手を拡げた。


「ユウキさん、ようこそこのアパートにいらっしゃいました。

突然に色々と大変な状況に遭われ、今は混乱、そして多くの心配事やお悩み事も抱えていらっしゃると思います。

でも、ここにはあなたのチカラになる仲間が居ます。決してあなたは独りではありません。

どうぞ、安心してこの場所でこれからの生活を始めてくださいね。

ユウキさん、このアパートはあなたを心から歓迎いたします♪」


彼はそう言うと静かにお辞儀をして、そして顔を上げてニッコリ笑った。


最初、呆然としていたユウキは、しかし口元を抑えてボロボロ大粒の涙を流して泣き出した。


「あ、あの……あり、ありがとうございます!

ほんとうに、ありがとうございます。……みなさん、改めてよろしくおねがいします(涙)(涙)(涙)」


私は涙が止まらないユウキを静かに抱きしめた。

(もう、やるじゃない大家くん。あんた最高だね!)


「それとユウキさん!今日はあなたに特別なゲストをお呼びしました。」


「ゲス…ト?ですか?」


「ハイ。それでは入っていただきましょう!どうぞ〜大変お待たせいたしましたあっ!!」


そして部屋に入ってきた人物に私は驚いた!本当に驚いた。


「ヤァヤァヤァ!いやぁ、18年ぶりにコッチに来ちゃったよぉ!ココは変わってないねえ。ビックリだよ!」


『まりあ先生』があらわれた!

18年前にこの世を去って、今は冥界の黄泉の里で暮らしているはずの、まりあ本人。

『あやかし』の私は頻繁に彼女に会いに行っているとはいえ、ただの人間が『魂』となった彼女がコチラに来れるわけないのに!

こっちこそビックリだわ!!


すると、まりあの後ろからもう一人現れた。死神の婆さまだ。


「まったく待たせ過ぎだわい!様々な面倒くさい手続きをして連れて来てやったんじゃからな。良いか、期限は明日の朝までだからな。忘れるでないぞ!」


「ほんとうにありがとうございます!さ、コチラにどうぞ!」


そう言って彼はぬら爺の隣りの椅子に案内した。


「なんじゃい、お前さんも黄泉の里から『魂』を連れて来るとはまた面倒くさい事を引き受けたもんじゃのう。しかも見たところ実体化させとる様じゃないか」


「あぁ、冥界王に無理やり頼み込んでの。あたしゃ、ヤツとは永い付き合いしとるでな。ちょっとだけ特権を使わせてもろうたのさ」


「ちょっとだけ。のう(笑)」


「そう、ちょっとだけ。じゃ(笑)」


まりあは私の隣に居るユウキの前までやって来た。そして、満面の笑みを浮かべて手を差し出した。


「あなたがユウキさんね。どうもはじめまして、まりあです!

あなたの隣に居る砂ちゃんから、あなたの事は色々聞いてます。色々と大変だったみたいね。

でも負けずにガンバってるって聞いたわ!そして、私の作品への気合いの入った応援、本当にありがとう!心から感謝するわ!」


ユウキは信じられない!と言う表情でまりあの手を握った。そして、一度は治まっていた大粒の涙をまた流し始めた。


「感激です!先生とこんなふうに直にお会いできるなんて嬉しくて、嬉し…」


ユウキは感情が昂りすぎて、もう喋るどころでは無くなった感じになってしまった。

私とまりあは彼女を優しく抱きしめてあげるだけだった。



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