1話 転生・異世界 人生・もっ回
俺、黒瀬愛斗 29歳
電気系の職に就いてる。
独り身だが、まぁ結構いい生活を “してた"。
現在は家なき子っつうか家なき大人状態だ。
え?じゃあなんでそうなったかって?
まぁ、早い話借金だよ。
別に俺がしたわけじゃねえぞ。
連帯保証人になったんだよそれも妹の。
そしたらあいつバックレやがって。
いやわかってるよ、自己責任だって。
でもちょっとぐらい愚痴ってもいいじゃないか。
まぁ、せっかくだしちょっと俺の身の上話でも聞いてくれよ。
俺ん家はな、昔は結構裕福だったんだよ。
親父が工場を起業してたからな。
家族の仲も良かった。
妹と年の離れた兄もいた。
小学校の今考えたらめちゃくちゃ簡単なテストで百点ばっか取って、母さんに「すごいねー」って褒められるそんな普通の家。
変わったのはあれだ。
小2のとき公共の福祉かなんかで親父の工場の土地が買収されてからだ。
もちろん土地やらに見合った金は貰った。
でも、近くに丁度いい土地もなかったらしい。
そのまま2年もせずに親父の工場は潰れた。
父さんが倒産ってな。ガハハ
親父は酒に逃げた。ついでにパチンコも。
それにボートレース。あっ あと競馬も。
今考えたらあのクソ親父なんでもしてたな。
俺のこともよく殴ってたし。
下校中 、若い女とホテル入るとことか見たし。
仕事にも就かず、プラプラして酒ばっか飲んで長生きできるはずもなかった。
高血圧拗らせてまともに動けなくなった。
三ヶ月くらい家族全員で世話してた。
そんですぐ死んだ。
正直言って俺はおろか、母さんも嫌嫌世話してた。
もうちょっと正当な理由で病気になったんなら態度も違ってたのにな。
親父の晩年は本当に苦しそうだった。
あんな死に方は、生き方は絶対にごめんだと思った。
母さんも変わった。
親父が酒に逃げだしてから俺達に当たるようになった。
そりゃそうだ、一人で家事やって、仕事して、子供の世話して。オーバーワークだ。
でもガキの俺達には理解できなかった。
反発した。常時反抗期だった。
もうちょっと母さんに優しくしてたら何か変わってたかもな。
何より優秀だった兄には親として接してたのが一番ムカついた。
いや、親としてではなく金づるとしてだったのかもしれない。
さっさとカネを稼いでもらおうって寸法だ。
なけなしの金で兄貴には塾に行かせてた。
兄貴は嫌そうだった。
兄貴との会話はほとんどなくなってた。
んでもってこっからも地獄だ。
親父の子供を妊娠したって言うイカれた女が来た。でも確かにお腹は大きい。
ってか下校中に見た親父とホテルに行ってた女だった。
兄貴と同じくらいの歳で綺麗な人だった。
ただ、かなりやつれてた。
マジか 親父お前 エンコーしてたのか。
いや、薄々知ってたけど。
親父が死んだって言ったら青い顔してた。
堕ろせばいいのにって思った。
でも本人は産むって。
あっちにも色々あるっぽい。
不義の子でもいいから家族の温もりでも欲しいんだろうか。
その女は部屋の奥で母さんと話し合った。
5分したらヒステリックな2つの叫び声が聞こえた。
そしてバチィィインって清々しい音も。
女はほっぺを押さえたまま外へ走っていっ
た。
目と頬を赤くしながら。
何も解決してないのは明らかだった。
まぁ母さんも一番つらい時期な上、女や妻としてのプライドをズタズタにされたんだ。
それから結構経った。
結局、女は子供を産んだ。女の子。
名前はマナだ。
顔も見せてもらった。
正直、我が家の遺伝子は感じられなかったが、まぁもうどうでもいいだろう。
あれから例の女と兄貴はたまに会っているらしい。
公園でその瞬間を見たけど、あれはあれだ。
完全にカップルの雰囲気だ。
もうラブラブだ。
妹の次、今度は甥っ子か姪っ子ができちゃうぜって感じ。ケシカラン。
ある日だ。珍しく兄貴と過ごした。
あんまり会話は続かなかった。
けどあっちが続けようとしてるのはわかった。
久しぶりに兄貴を感じた。
家族を感じた。
兄貴はまだ兄でいてくれたのだ。
嬉しかった。
これからも兄でいてくれると思った。
次の日の朝だ。
机のうえに紙が置いてあった。
“エリカとマナと一緒に生きていきます。
今までお世話になりました。
身勝手でごめんなさい。
そして、今までありがとう御座いました。”
親父からしたら酷いNTRだ。
いや酷いのはオヤジだし、なんなら
母さんもNTR被害者だろう。
手紙の下には俺、妹、母さん、への思いがびっしり書かれた紙もあったが内容はよく覚えていない。
とにかく兄貴にも裏切られた。
俺はそう思った。
母さんはもちろん荒れた。荒れに荒れた。
金をつぎ込んだ金づるが女と逃げたんだ。
それも夫の子供を産んだ間女と。
でも俺はもう気にしなかった。
俺は学費も安くて将来も安定した高専に入った。
バイトをめっちゃした。
母さんは学費を払ってくれないから。
勉強もめっちゃした。
奨学金をもらえなくなるから。
でも交友関係を疎かにしたわけじゃない。
家族との繋がりが薄い分、他人との繋がりが欲しかったのだ。
こうして無事高専を卒業。電気系の仕事に就いた。
ある程度働いた。ある程度金は溜まった。
その金を母さんに渡した。
この金でもう俺達の家族は終わりだと。
それでもたまに何処からやってきては金の無心をしてきた。
俺も甘い。
毎回少しくらいの親孝行はした。
さて、満を持して妹のことを話そう。
何ていうか不思議な関係だ。
正直言って嫌いだ。
ほぼ会話しなかったし、すぐ舌打ちするし、俺の物勝手に使うし、蹴ってくるし、 プライド謎に高いし。
でも、一緒に暮らしてたからか愛着はあった。
絶縁はしてたが、ラーメンぐらいはたまに奢った。
過酷な子供時代を共に過ごしたんだ。絆ぐらいはあった。
そう思ってたのは俺だけだったけど。
妹は家事ができない。だからまだ母さんと暮らしてた。
だから警戒するべきだった。
妹が俺のアパートにやってきた。
借金の連帯保証人になってくれって。
400万円の。
流石に断ろうと思った。
でも妹はとても必死に見えた。
「お兄ちゃん助けてって」子供の時みたいに。
幸せだったあの頃みたいに。
だからつい甘くなってしまった。
家族だって思ってしまった。
俺は借金の連帯保証人になってしまった。
でもどうやら巧妙に騙されたらしい。
あれは400万じゃなく4000万だった。
流石に無理だ。
今頃 、女2人仲良く、あいつ騙されてやんのとか思ってるに違いない。
それからはもういろいろと転落をたどった。
で、冒頭に戻る。
訴えれば勝てるかもしれない。
でもなんかもう、どうでもよくなった。
何より裁判起こす金なんてないし。
あーどうしよっかなー。
友達にも流石に頼れないしな。
普通こういうときって家族に頼るもんなんだけどな。
うちの場合はなあ…
叔父さんが生きてたらなあ…
叔父さんはいい人だった。
よく外に遊びに連れてってくれた。
叔父さんとの釣りは楽しかった。
そうだ、釣りに行こう。
俺は京都に行くぐらいの感覚で釣りに行くことにした。
「釣りならやっぱ海だよなあ…
釣り竿はどうしようか…
糸と木の枝で作ればいいか…」
俺の頭の中は釣りのことでいっぱいいっぱいだった。
だから信号を渡るとき居眠り運転したトラックに気付かなかった。
幼稚園の時は信号機の前で一々言ってたろ。
“右見て 左見て もう一回右見て
手を上げて渡りましょう1"って
皆もこれからはそうしよう。
まぁ俺はこれからなんてないわけだが。
いやだって下半身とんでってるもん。
泣き別れだよ。
もう一周回って痛くないもん。
けど、我が愛刀と共に最期を迎えられないなんて悲しいなあ。
借金返済しないといけない人が死んだら、そいつの相続者に返済の義務が行くんだよな。
じゃあ借金あいつらに戻せるじゃん。
ザマア。 まぁ知らんけど。
もう…どうでもいいしな。
俺は結局何したかったんだろうなぁ…
あぁそっか
俺は家族に飢えてたんだ。
だから、妹のことを家族だと思った後....
裏切られて…
こんなにショックなんだ……
もっとオヤジに寄り添えばよかったなあ…
もっと母さんを労って、手伝えばよかったなあ……
妹や兄貴ともっと遊べばよかったなあ………
もう………
遅いかぁ………
「ナリナ様 もう一踏ん張りです。」
「ひっひっふー ひっひっふー」
「そっ そうだぞ 頑張れ!ナリナ」
「バイク...アタフタしないで邪魔....」
「ハッハイ!」
.......あれ.....
俺、死んだはずじゃ.....
俺は気がつくと、木造の建物の中にいた。
なんだか目がぼやけて見にくいが、
目の前では、メイドみたいな人と、
夫婦であろう若い2人がいる。
3人は、西洋系の顔立ちに見える。
そして、絶賛出産している。
.......おそらくここは病院だろう。
俺は助かってしまったらしい。
にしても、やっぱ下半身はないだろうなあ。
体曲げられないんだよね。
麻酔かな?
我が愛刀とはもう会えないのかぁ。
俺は結構、性に関しては自由だったからなぁ。
いや、本番は一回しかしたことないけど。
てかやっぱあの人出産してるよね?
それってどうなん?大丈夫そ?倫理的に?
生命の誕生に愛刀のない俺が携わっていいの?
なんで俺同室?
よっぽど緊急だったのかなぁ?
「オギャアアアアアアア」
うおっ びっくりした。
無事生まれたかぁ。
良かった良かった。
若い2人は愛刀のなくなった俺の分まで子供をたくさん作ってくれたまえ。
とかなんとか、すっげーモラルのないこと を考えてたら
「お二人とも、無事生まれましたよ。」
俺はメイドさんに抱きかかえられた。
このメイドさん力強っなんで俺持てんの?
いや俺体重半分になってんのか。
下半身ないから。
あんときの親父みたいな生活するの
かな俺?
やだな.....
とかなんとか将来に不安を感じてたら
生まれた赤ん坊と一緒に夫婦にまで抱きかかえられた。
「ナリナ頑張ったな...」
「うん....」
え?なになに?
俺のことまで養ってくれるの?
いやぁ悪いよ〜子供ができてこれからってときの夫婦に割り込むのは流石になぁ......
「でも、大丈夫かしら。
女の子の方は元気だけど、男の子の方は全然泣かないし....。
やっぱりこの子達は....」
「ナリナ、子供が生まれてきたんだ。
もうそれについて話すのはやめよう。」
「分かったわ」
「ナリナ様、大丈夫です。
お二人とも息はしていますし、ご子息はむしろ大人のような目をしています。」
「そう....キリエが言うならその通りね。」
........いやこの人達さっきから何語喋っとるん?
喉もまともに開かないし。
せめて英語で喋ってくれよ。
こちとら英検準2プラスだぞプラス。
....あ やばい
眠くなってきた。
この夫婦の腕のなかにいるとすごく落ち着くんだよなあ........
なんで......だ.....ろ..........
「2人とも寝ちゃった。やっぱり双子ね。」
「じゃあそろそろ名前つけてやるか。」
「まだ気が早いんじゃないの?」
「ある程度決めていただろ。」
「それじゃあ.......そうね........
よし!
生まれてきてくれてありがとう
"シンデロア" "ライレック"」




