第28話 反乱の海賊達
アンドロメダ銀河某宙域。
そこにカラスのマークが施されている武装船が1隻、あちらこちらから黒煙を上げながら航行していた。
「ほんと、親衛隊の連中容赦がないわ~…たかが1隻にあれ程の火力をぶつけることはないやろ!」
船の艦橋にて、操舵手らしき銀髪で黒色の瞳をしている女性が、愚痴愚痴と文句を垂れる。
「そんな口を悪く話していたらモテないぞ~」
文句を垂れている女性を通信士らしき小太りの黒髪で碧眼の男がおちょくる。
「だぁ~れが、モテないじゃ!」
「そりゃあ、その気の強さだよ! 黙っていたら美人なんだけどな~」
「あ゛ぁっ?! 言ったなこのおデブ!」
「おデブじゃありませーん! 皆より蓄えが少し多いだけでーす!」
「それをデブって言うや!!」
それぞれのしないといけない仕事をしながら、2人は口喧嘩を始める。
「おーい、夫婦漫才はそこまでにしろー」
「「誰がコイツと夫婦や(だ)!!」」
2人の喧嘩を副艦長の黒髪黒色の瞳をしている男が、呆れながら止める。
「お前もアイツらになんか言ってくれよ~」
「と言ってもなぁ…あの二人は言ってもすぐに始めるからな…」
副艦長に頼られた艦長の紺色の髪に碧眼をしている男は、2人の喧嘩は止められないと吹っ切れていた。
彼らは、ラーベン海賊団。神聖ジークダルク帝国へ反旗を翻した者達が作りあげた反乱軍の1つである。
――ピコンッ
操舵手と通信士が喧嘩していた時、レーダーに何かが反応した音が鳴り、全員の顔つきが変わる。
「本艦、後方。複数の機影を確認! 恐らく近くの基地から飛んできた奴だ!」
「機関最大、振り切れるぞ!」
「無茶言わんといて! 今の状態で、無理矢理最高速度を出し続けたら、機関部がボカーンッ! って逝くで?!」
神聖ジークダルク帝国の航宙機が迫ってくる中、艦長から命令に、操舵手は後ろを振り返り、声を大にして言う。
「……機関部、修理はどうなっている?」
何かを閃いた艦長は、通信機を手に取り、機関部へと連絡を取る。
『今全力で修理中! 出力は出せて精々7から8割!』
通信機からは様々な物音と共に、女性の声で返事が返ってくる。
「そうか…なら行けるな。機関部、総員退避! これより、超光速推進を行う!」
「ほんと! うちらのキャプテンは無茶ばっか言うなぁ!!」
「まぁ、それに答える俺らも俺らだけどな!」
一部壊れている状態のまま、船は機関をできるだけ出力を出し、超光速推進の体勢に入る。
「敵機からミサイル接近!!」
「速度十分! 機関過給増進機起動準備完了ぉ!」
「よし! 超光速推進だ!」
「よっしゃぁ!!」
追っ手を振り切るため、船は急加速を始めた。
船が行ったのは、超光速推進という物で、スサノオや地球艦は亜空間を通る空間跳躍による超光速航法を使用しているが、神聖ジークダルク帝国製の船は主に、機関過給増進機と呼ばれる物で、機関の出力を何倍にも上げて、実際に船を光速を超える速さで飛ばすという超光速推進を使用しているのだ。
超光速推進を行った船は、迫ってきていたミサイルをあっという間に引き離し、何処かへと消えていってしまった。
『目標ノ追尾不能。ラーベン海賊団完全ニロストシマシタ』
船を追っていた帝国の航宙機に乗っているロボは、基地に現状報告を行い、基地へと戻って行った。
〇
目的地である宇宙空間を進みながら、スサノオは航宙機発艦場から、一定間隔にソノブイを投下していた。
その理由としては、帝国艦隊の早期発見である。ソノブイに帝国艦が引っかかれば、スサノオはすぐに別の方向に逃げたり、迎え撃つことができるようになる、そう言った理由で、スサノオから使い捨てのソノブイが投下されているのだ。
そして、そのスサノオを操舵している碧は、
「…早く試し撃ちがしたい…」
とボヤく。
「そう言っても、艦内に射撃訓練場なんて無いし。目的地はもう少し先だぞ?」
「そうそう、今は大人しくStayネー」
「小惑星でも良いから試し撃ちしたい…」
同じく艦橋に居る真希とナディアが、碧を宥めようとするが、碧は変わらなかった。
「…当分の間、必要ない時以外は俺が預かっといた方がいいかな?」
「私としても、お願いするネー…」
「撃ちたい撃ちたい撃ちたい撃ちたい撃ちたい撃ちたい撃ちたい撃ちたい撃ちたい撃ちたい撃ちたい」
呪言のように撃ちたいと、何度も呟き続ける碧の姿に、真希とナディアは若干引く。
『警告。ソノブイに感あり。本艦後方方向に、超光速で飛行してくる物体を確認』
「っ! 奴らの超光速移動か…! 第1種戦闘配置! 回頭90度!」
戦闘配置を知らせる警報が鳴り始め、スサノオは左を90度に回頭にし、向かってくる物体に主砲を向け、待ち構える。
そして、スサノオの左舷上方に、黒煙を複数箇所から吐きながら、1隻の船が現れる。
「…撃ち方待て!」
帝国軍ではないと判断した真希は、船に向けられていた火器を制止する。
「…オルタ、呼びかけてくれ」
『畏まりました』
真希の指示に従い、オルタは船に対して無線で呼びかける。
『相手から返信です。どうやら、ビデオ通信を求めているようですが…』
「分かった。繋げてくれ」
船からの要望に答え、真希は顔を合わせて通信を行うことにし、スクリーンの方を見る。
『――ら―ちら――こちら、ラーベン海賊団。スサノオ、聞こえているか?』
「聞こえていますよ」
『そうか。それなら良かった…何せ今の我が船は、あちらこちらが壊れていてな…申し遅れた。私はラーベン海賊団船長フランツだ』
「私は、この独立傭兵艦スサノオ艦長、山明真希です」
フランツと真希の2人は、互いに目を合わせながら自己紹介を済ませる。
「フランツ船長。もし、ご迷惑でなければ、こちらの修理ロボを数体其方に派遣しても宜しいでしょうか? 見たところ、貴艦の損傷はかなり酷いようですが…」
『それは有難い。何せ、我が船は数十人の人間と10体ほどロボしか居なくてな…人手が足りんのだ。それを貸してくれると言うのであれば、是非お願いしたい』
「では、貴艦の横に本艦を付けた後、すぐに作業班を向かわせます」
『よろしく頼む…』
「では失礼します」
真希は通信を切り、
「火器納め! 碧、あの船に横付けしてくれ」
と、命令を出した。
「…よーそろー…」
いつもよりもやる気を感じられない返事をした碧は、手を抜かずにいつも通りの技術で、スサノオを海賊船の真横に止めた。
停泊したスサノオから、編成された作業班が工具を片手に出てきて、1人のラーベン海賊団の修理員の指示の元、作業を始めた。
船体装甲に空いている穴を防いだり、めくり上がった装甲を切断したりなど、修理が進むが、
「そうか…完全な修理は無理か」
『んだ。どっかで停泊せんと無理だべこりゃあ』
海賊団の者と修理班の指揮を執っているヨサクからの報告に、真希は頭を抱える。
『機関部も見せて貰ったが、だいぶ酷いありさまだったよ』
「もし、ここに帝国軍が来たら、ラーベン海賊団は対応できるか?」
『ありゃあ無理だ』
「そうか…」
ヨサクから海賊船の状態を聞いた真希は、何かを決めた。
「オルタ、ラーベン海賊団に打電。応急修理が完了次第、我々は貴艦を近くの惑星まで牽引すると伝えてくれ。もし、相手が何か言って来たら、悪いが対処も頼めるか?」
『分かりました。それでは早速、お伝えいたします』
「頼む。それとステラ…」
『既に調べ終わりました。本艦から11時方向の約50億km先に、惑星『ハルシュタイン』があります。そこは荒廃惑星ということもあり、帝国の影響が比較的に低いので、修理をするには丁度良いかと…』
「ありがとうステラ、オルタ。このことも伝えてくれ」
『畏まりました』
真希は海賊船を直すためにステラが勧めた星まで、牽引することを決めた。
そして、その後にスサノオからの提案にフランツは、
「そこまで手伝ってもらう訳には…」
と、言って迷惑をかけたくないという気持ちから、断ろうとしたものの、
『いえ、我々は手を伸ばし助けた者は、最後まで助けるという助け合いの精神で動いています。我々が安心して前に進むためにも、最後まで手助けをさせてください』
「だが…」
『やらせてください』
「………申し訳ないが、頼む」
オルタの圧に負けて、提案を受け入れることにした。
数十分程で、海賊船の装甲板の穴を塞ぐ応急修理は完了し、機関部や電子機器と行った移動をしながら行える修理が始まると、スサノオは後部両舷のハープンを海賊船に巻き付けて固定すると、そのまま惑星ハルシュタインに向けて牽引し始めた。




