第27話 帝国流対処法
目的地をフラリアの故郷であるアイルス星系に定めたスサノオは、巡航速度で共栄連盟と神聖ジークダルク帝国の国境を越え、神聖ジークダルク帝国の領域に当たる宙域を進んでいた。
「やはり、跳躍なしだと移動時間が掛かるな…」
宇宙空間をスサノオが進む中、真希は艦橋から宇宙を眺めながら、そう呟く。
現在スサノオは、跳躍に伴う次元共振で、神聖ジークダルク帝国側に位置がバレるのを防ぐため、跳躍を可能な限り制限している状態であり、そのため通常より時間がかかっているのだ。
「…それにしても、奴らはどう出てくる…」
真希は両腕を組んで、神聖ジークダルク帝国とトワイライト教団がスサノオにどう対処してくるか、脳をフル回転させて予測することにした。
(トワイライト教団に関しては、神聖ジークダルク帝国で活動していない…はずだ……神聖ジークダルク帝国で、ゾンビパンデミックが起きたという話は、あまり聞いたことがないからな………だから、問題が神聖ジークダルク帝国だ。あの国は、物量や圧倒的な火力を好む。もし、それらを使って来たら、今のスサノオだと太刀打ち出来ない……FC計画と前に許可したSW計画を進めるしかないな…)
今自分達ができることが、対帝国艦隊の切り札を作るということだと、判断した真希は、今、一番進んでいるであろうFC計画の進捗をサポートウォッチで確認することにした。
「……必要な石油が足りない…か……石油か〜…」
必要な物の1つである石油が足りないと知り、真希は少し悩む。
「石油と言われても、そういうのが出てくる場所は、基本的に奴らが拠点を作り、押さえ込んでいるだろうし…どうしたものか……」
『それでしたら、破棄された油田に行ってみては如何でしょうか?』
「そんな所があるのか?」
『はい。大戦後の講和条約を結ぶ際、地球政府はいくつかの軍港や油田を租借地にしました。そして今、そこの油田はゾンビパンデミック発生後に破棄されています』
「成程…なら、そこに行ってみるか…油田の租借地は何処にある?」
『近場になりますと……本艦5時方向、約100光年先にあるノーゼル星系第4惑星『ミラッテル』ですね』
「よし、オルタ。進路変更、ノーゼル星系第4惑星『ミラッテル』!」
『畏まりました』
ステラの提案を採用したことにより、スサノオは150度程艦首を右に回頭させ、惑星ミラッテルへと進路を取った。
その間、スサノオ艦内では、デイムが兵器開発生産工場に、碧を呼んでいた。
『よう来たな! 待っとたで』
「僕をここに呼んだということは、頼んだ奴が出来たのかい?」
工場内に入って早々、碧は少し興奮気味にデイムに尋ねた。
『おうよ! バッチしに仕上げてある!』
と言い、デイムは作業机の上に置かれていた一丁の銃を手に取り、碧に差し出した。
銃は、前部は口径が66mmと大口径になった散弾銃に持ちやすいようにフォアグリップを付けたような見た目をしており、後部は6つの長方形が表示されているモニター付きの機械が着けられていた。
「これが、僕の…」
差し出された銃を手に取った碧は、グリップをそれぞれ持ち、構える。
『名付けて! 66mmSD型対物光線ランチャーAOIカスタム! 第一次銀河間大戦時の戦車なぞ、バラバラにしてしまう威力がある物だがや! それに、しっかり構えてみてちょ』
「こうか?」
『何か不思議に思うことは無いか?』
「そうだね…銃全体の大きさが、丁度いいと思う。肩に乗せたら安定しやすいし、フォアグリップだったかな? それが持ちやすい位置にある」
『そうだろそうだろ? 俺に掛かれば、使用者にビッタな銃を作り出すことは朝飯前ってもんだ!』
碧に完璧に合わせて作ったランチャーをデイムは胸を張って自慢する。
『それによ、ちょいと顔を横に向けるだけで、残り弾数が見れるように工夫してあんだ。ちょいと見てちょ』
「…うん。見やすいよ…! それで、これがゼロになると、撃てなくなるのか?」
『いやいや、連続で撃てるのが6発までってだけで、1発撃って30秒くりゃあ待てば、再チャージされるってだけだ』
「連続で撃つ時、どのくらいの間隔で撃たれるの?」
『3秒くらいだな! 20秒もあれば、全弾撃つことくらい可能だ! まっ、その分フルチャージには、3分ほど居るが』
「まぁ、ランチャーはそんな物でしょ…でも、本当にありがとう。これで、戦闘にも参加できるよ」
『お易い御用よ! また何か頼みたいことがあったら、頼ってちょ。物作りなら、誰よりも強いからよ!』
「嗚呼、その時はそうするよ。それじゃあ…」
『おう! あっ、くれぐれもソイツの試し打ちは艦内でやるんじゃねーど!』
「流石に分かってるよ。それじゃあまた!」
専用ランチャーの仕組みをある程度教えてもらった碧は、デイムに例を言って工場を後にした。
〇
先程、真希は神聖ジークダルク帝国で、ゾンビパンデミックは起きていないと言っていたが、あれは間違った認識である。神聖ジークダルク帝国領内でも、確かにゾンビパンデミックが起きているのだ。では、何故共栄連盟のように流行っていないのか…それは……
神聖ジークダルク帝国領ブルヘルト星系第6番惑星『ヴァルゲン』。帝国政府が、第2階級民族と定めたヴァルゲン人の母星であり、帝国政府管轄の軍需工場地帯が多く広がる場所である。
しかし、その首都ではゾンビパンデミックが発生してしまい、主要都市を中心にパンデミックが広がっている状態である。
そして、惑星ヴァルゲンの衛星軌道に、帝国艦隊が広がっていた。そこに所属する全ての艦艇の船体色が灰色で統一されていた。
ブルヘルト星系に今居る艦は、正規軍である帝国軍ではなく、全て親衛隊直属の艦隊である。
「さて、全艦定位置に着いたか?」
親衛艦隊『ノルトファーレン』旗艦ルベロクス級打撃型重装戦艦8番艦ランヴァートの艦橋では、オールバックの金髪で茶色の瞳をして、葉巻を吸っている男、艦隊司令長官フリール・オルトフ親衛隊大将が、長官席に座りながら、前方に居るランヴァート艦長に、艦隊の状況を尋ねていた。
「はっ、全艦準備完了致しました。オルトフ長官のご命令があれば、すぐさま行動に移ります」
「よろしい」
加えて吸っていた葉巻を部下が持ってきた灰皿に、押し当てて火を消したフリールは、長官席から立ち上がった。
「さぁ諸君…進行せよ!」
フリールが指を鳴らすと、リヒャルト・ワーグナーのヴァルキューレの騎行とよく似た神聖ジークダルク帝国の曲が、親衛艦隊の全艦に流れ始める。
そしてその曲に合わせて、親衛艦隊が事前の作戦通りに動き始める。
まず、集束焼夷弾を大量に詰め込んだ大型弾道弾が、次々とゾンビパンデミックが発生している主要都市のみならず、ゾンビから避難してきた人達が集まっている工場などへ過剰に落とされ、衛星上からでも分かるほどに星が燃え始める。
「第2幕、爆撃隊全機発艦…! 徹底的に殲滅しなさい!」
惑星ヴァルゲンが激しく燃える中、4隻のグランツェーラ級複合型補給母艦から、親衛隊色の爆撃機、急降下爆撃機ステュースとステルス爆撃機ゴルテン229が、それぞれ発艦して行き、惑星へと降下。そのままステュースはゾンビや逃げ惑う人々に向けてクラスター爆弾を投下、ゴルテン229は、弾道弾では過剰攻撃と判断された小さな街や小規模な工場を完膚無きまでに叩き潰す。
「そして、終幕…空挺軍団、降下を開始せよ」
弾道弾と爆撃により一部地域では、地形が大きく変形している中、フリールはダメ押しと言わんばかりに、メドール級攻撃型強襲母艦20隻、ロベッド級輸送型強襲母艦100隻で編成された強襲部隊から、次々とロボと改造された人で編成された親衛隊所属の空挺軍団が、次々とへ破壊され尽くした街や工場地帯へと降下し、生き残ったゾンビやヴァルゲン人の殲滅を始める。
「実に、実に素晴らしい! 前の時以上に、素早く、そして正確になっている! 諸君! これであれば、皇帝陛下にも胸を張って君達を誇れますよ!」
ランヴァートの艦橋にあるモニターから、今までの殲滅爆撃と、現在進行形で行われている空挺軍団による残党殲滅の映像を見ているフリールは、親衛隊の隊員達に向けて拍手を行う。
そして、フリールの言葉を聞いた手隙の者達は、お互いに喜び合い、皇帝万歳、帝国万歳と三唱する。
これが、神聖ジークダルク帝国にて、ゾンビパンデミックが拡がらない理由である。
ゾンビが確認されると、ハインツと親衛隊本部のみに報告され、親衛艦隊が出撃。そして、先程のように惑星ごとゾンビと生存者を殲滅し、情報操作を行っていたのだ。これにより、帝国の国民のみならず、帝国軍の軍人達にも、ゾンビパンデミックが起きていることを知るものは誰もおらず、多くの者がゾンビは哀れな共栄連盟の者達にしかかからない、歴代皇帝からの天罰だと思い込んでいる。
だが、勘違いしないで欲しい。このような狂気に支配されている神聖ジークダルク帝国でも、目を覚ましている者達も居るということを…




