第22話 襲い来る悪魔
恒星ルーベックでは、ステーションからスサノオに次々と子供と老人が乗り込んでいた。
「子供の数は31名、老人は42名か…もう少し乗せれそうだな。次は、怪我人を優先に乗せて行ってくれ」
『畏まりました』
スサノオに乗った子供と老人の数を見て、まだスサノオに乗ると判断した真希は、次に怪我人を優先的に乗艦させ始める。
その時、
『緊急警報! 緊急警報! 電磁防壁展開、衝撃に備えてください!』
オルタが慌てた様子で艦内放送で話すと、その数秒後、スサノオとステーション全体が、謎の衝撃波と眩い閃光に襲われて、激しく揺れる。
「な、何事だ!」
衝撃に備えるため、咄嗟に艦長席にしがみついていた真希は、気を取り直してオルタに何が起こったのか尋ねる。
『原因不明です。衝撃波の威力と電磁パルスが発生しているため、近場で超新星爆発が起きたと思われますが…恒星ルーベックの近くに、死にかけの星はありませんので、本当に超新星爆発による影響かどうかは不明です』
「オルタ、方角的にどの恒星が怪しい?」
『方角的には、シルリア星系で起きた物だと思われます』
「不味い…シルリア星系は岩石惑星で構成されている…すぐに星の破片が来る!」
衝撃波が来た方向と、超新星爆発の影響を範囲から、オルタは超新星爆発を起こした恒星を割り出した。
「総員、第1種戦闘配置! 対空戦…いや、対艦戦闘用意!」
怪我人を収容しつつ、飛んでくるであろう星の破片に備えるためスサノオは戦闘態勢に入った。
そこに、
『跳躍完了反応。アリゾナとホウショウです』
デンクマール博物館から発進したアリゾナとホウショウが、恒星ルーベックがある宙域に跳躍してきた。
「オルタ、通信できるか?」
『電磁パルスにより暫くの間扱えません。ですが、発光信号で連絡を行って致します』
到着したアリゾナとホウショウに対して、オルタは発光信号で、今の状況を伝えると、スサノオへの避難民の乗艦を辞め、迅速にステーションから離れて行く。そして、スサノオが居た場所に、ホウショウが接舷し、残りの者達を乗せ始める。
『惑星の破片らしき物体が複数接近』
「何としてでも、ステーションを死守する! 主砲、発射用意! アリゾナにもそう伝えてくれ!」
ホウショウが生存者を収容する中、スサノオとアリゾナはステーションを守るため、主砲を飛来してくる隕石に向けた。
『目標ロック。全武装発射用意完了』
「主砲、撃ちー方ー始めっ!」
スサノオの主砲から次々と光線が放たれ、
「こっちも主砲を撃ちまくるんだ!」
それに続くようにアリゾナも主砲である40cm三連装汎用型粒子速射砲塔を撃ち始める。
2隻の主砲により、ステーションへと向かってくる破片は木っ端微塵に爆散し、そこから出てきた細かい岩は、それぞれの対空火器により完全に撃ち落とされる。
『更なる小惑星を確認』
「星間噴進誘導弾、全弾発射!」
人々を守るためにも真希は出し惜しみをせず、8発の大型星間噴進誘導弾を放つ。
放たれた大型星間噴進誘導弾は、1発ずつステーションに当たる軌道の破片を跡形もなく破壊し、更にその衝撃で後方の破片の軌道を変える。
『ホウショウから発光信号。我、要救助者ノ収容完了。破片群ノ飛来方向カラ反対方向ヘ跳躍ヲ行ウとのことです』
「…よし、アリゾナ、ホウショウ、スサノオの順で跳躍を行う。そのことを2隻に伝えてくれ」
『了解致しました』
跳躍先の安全確保のため、時間稼ぎで主砲を撃ち続けていたアリゾナは、火器を納めてホウショウより先に跳躍を行う。そして、その後にホウショウが、スサノオに護衛されながら跳躍を行い、最後にスサノオも跳躍を行った。
スサノオ達が去った後、無数の破片が恒星ルーベックに飛来し、それらの破片の一部はルーベックの重力に捕まり、ある程度の間隔を空けて周回し始める。これらの小惑星となった破片は、100万年以上の年月を掛けて、ルーベック星系という新たな星系を作っていくことになるだろう。
〇
空間跳躍をした3隻は、約8光年先の大小様々な星で形成されたシュトルバル星系に辿り着いた。
『跳躍完了。船体に異常なし。電磁パルスの影響も収まりました』
「…はぁ~…ようやく肩の力を抜ける…」
「僕も…流石に緊張したよ…」
定例となっているオルタの報告を聞いた後、艦橋に居た真希と碧は肩の力を抜き、リラックスする。
『アリゾナから通信です』
「分かった。繋げてくれ」
リラックスしていた真希だったが、アリゾナからの通信が来たことにより、姿勢と服装を正して通信を繋げた。
『こちらは、ペンシルバニア級航宙戦艦アリゾナ。そちらは大丈夫か?』
「はい、問題ありません。寺山さん、この度は助けて下さり、ありがとうございます。もし、寺山さん達を呼ばなければ、ホウショウに乗艦している人達の殆どは超新星爆発により、やられていました…」
艦橋のモニターに映し出された辰信と、真希はしっかりと目を合わせて、話し始める。
『何、困った時はお互い様だ。それより、何故超新星爆発が起きていたのだ?』
「それが、原因不明です」
辰信からの質問に、真希は首を横に振りながら答える。
「スサノオのAIであるオルタ曰く、シルリア星系で起きたと推測されているのですが…直接見て見ないことには…」
『そうか…しかし妙だな。恒星シルリアの超新星爆発は、数億年以上先だったはず…何故今起きたのだ…』
「それもあり、原因は不明です」
『謎が謎を呼ぶばかりだな…取り敢えず、スサノオに乗艦している人達をこちらで預かろう。幸い、ホウショウはまだ人を乗せれるとのことだからな』
「いえいえ、これ以上お手をわずわらせるのは…」
『構わん。避難民を届けるついでに、アリゾナとホウショウを地球政府に預けるつもりでいるからな。それに、君的には目的地に行きたいのであろう?』
「……ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
『では、ホウショウにそう伝えよう』
真希は辰信の厚意に心の底からありがたく思う。
そして、宙域に留まっていたホウショウは、スサノオの横付けするように接舷し、仮設通路を作ると、スサノオに乗っていた人達を艦内へと移し始めた。
「Hey、皆さーん! 慌てず騒がず、ホウショウへLet's Go!!」
『ホウショウへの道はこっちだべよ~』
「はい。皆さん、ここをお通りください。不安があるかもしれませんが、ご安心を…我々スサノオの優秀な作業ロボ達が作ってくれた通路ですので、安全は保証されています」
スサノオ艦内では、ナディアや碧、作業ロボ達が艦内に居る人達をホウショウへと誘導していた。
ナディア達がしっかりと誘導や呼びかけをしてくれたおかげで、避難民の乗り換えは安全に終わった。
「寺山さん…再びですが、助けて下さりありがとうございました」
『そこまで言うのであれば、また会った時に君達の活躍を聞かせてくれ。今後は、それを聞くために生きていこうと思っているからな』
「私共の話で良ければ、話させていただきます」
『嗚呼、頼むよ』
「それでは、失礼致します!」
『また会えることを楽しみにしておく……嗚呼それと、その帽子…老いぼれの元軍人である私から見ると、大変似合っているぞ』
「ありがとうございます…!」
『では!』
辰信と真希は、互いに席から立って敬礼し合いながら通信を切った。
そして、護衛のアリゾナが先に動き出して空間跳躍を行い、避難民を乗せたホウショウはアリゾナに続いて空間跳躍を行った。
その間、真希はホウショウが去るまで、敬礼をし続けた。
「いやー、子供相手は少し疲れるね」
「そうですカー? 素直でいい子達ばかりだったネー!」
「…色々と終わったら、保育士になったら?」
「それもいいネー!」
仲睦まじそうな会話をしながら、仕事が終わったナディアと碧が艦橋に入ってきて、それぞれの座席に座った。
「それで艦長、行先は例のシルリア星系でいいかな?」
操縦桿を握りしめた碧からの質問に、真希は少し考えた後、
「いや、引き続きマルバーゼ星系を目指す」
と答えた。
「シルリアの超新星爆発を調べなくて良いんですカー?」
「気にはなる。だが、行ったところで超新星爆発で全て消し飛んでいる可能性が高いし、超新星爆発の影響でまともに調査もすること出来ないだろうからな…それなら、向かう方がいいだろう?」
「確かに、その通りだね…それじゃあ…?」
「機関出力最大! スサノオ、全速前進!」
「「よーそろ~!」」
その場に留まったままだったスサノオは、噴射ノズルからプラズマを放出しながら、目的地であるマルバーゼ星系へと向かい始める。




