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スサノオ銀河航海譚 ~ゾンビが蔓延る大宇宙に、英雄神の名を冠する船が赴く~   作者: 焼飯学生
帝国死闘篇

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第21話 天使と悪魔

 デンクマール博物館の記念艦用ドック。そこでは、2隻の船のフライホイールの回転音が鳴り響いていた。

 そのうちの1隻であるアリゾナの艦橋には、辰信の姿があった。


『銀河間通信システム、複合型電探02号、重力管制システムなどの全システム並びに艦内全機構異常なし。核融合式タービン正常値へ』

『第5世代質量動力炉正常値へ…アリゾナ出航準備完了』


 艦長席の前で立っている辰信は、ロボ達からのアリゾナの出航準備についての報告を聞くと、無線機を手に取った。


「…ハーライ、そっちはどうだ?」

『もう少しお待ちください。後数分もあれば終わるので』


 辰信は、ホウショウに乗っているハーライから、ホウショウの出航用意がまだ終わっていないことを聞くと、通信をそのままにして、そのまま立ち続ける。

 現在、デンクマール博物館では、スサノオからの要請に応えるために、ホウショウとアリゾナの出航用意が急速に進められていた。このために、全盛期以降、電源を落として保管されていたロボ達を全て叩き起したり、本来なら不向きの球体ロボを無理やり使うほどである。


「少々早い出港となってしまったが…まぁ、準備運動として調度良いだろう。お前さんも、暴れたくてうずうずしておるだろうし」


 辰信は思い出深いアリゾナに対して、語りかけるように話す。

 ペンシルバニア級航宙戦艦二番艦アリゾナ元乗組員(・・・・)寺山辰信。第二次銀河間大戦時、機関員として乗艦しており、軍縮によりアリゾナが記念艦となった後でも、アリゾナの傍に居続けて愛した男である。


『こちらホウショウ、出航用意整いました』

「分かった。では、儂に着いてきてくれ」


 ハーライの報告を受けた辰信は、アリゾナの艦長席にどかっと座った。


「乗組員だった時は、艦橋に上がるのも無理だったが…今や当時のアリゾナ乗組員は、知っている限りでは儂だけだ。年功序列で艦長席に座っても誰も文句は言わんだろう!」


 少し艦長席の居心地を感じ後、辰信の目は軍人のような鋭い目へとなる。


「出航よーい!」


 辰信の号令と共に、アリゾナとホウショウが居る記念館用ドックが、エレベーターのように下に2隻ごと下がって行き、出入り用に用意された場所へと出てくる。


船舶用固定把持装置シップグリッパーロック解除』


 天井が閉められ、ロボの操作によって2隻それぞれの船舶用固定把持装置シップグリッパーロックが外される。そして、それと共に前方の分厚い扉が開き、外へと繋がる通路が現れる。


「微速前進0.5」


 辰信の命令に従い、操舵席に座っているロボが、アリゾナを微速で通路へと進ませ、それにホウショウが続く。


「機関の出力を徐々に上げていけ!」


 通路を進む中、アリゾナとホウショウは徐々に速度を上げ、更に機関の出力も上げていく。

 そして、通路から出ると同時に、


「アリゾナ、発進!」


 辰信が再び号令を出し、アリゾナとホウショウそれぞれの噴射ノズルから、炎のようにプラズマを放出し、2隻の艦は勢いよく通路から飛び出ていく。


「跳躍計算開始。計算が終わり次第、ステーションがある恒星ルーベックに一気に跳躍(ジャンプ)する!」


 アリゾナ、ホウショウのそれぞれで跳躍計算が始まり、計算が行われている間、2隻は最高速度の亜光速を出し、いつでも跳躍が出来るようにする。


『跳躍計算完了』

「よし、跳躍(ジャンプ)だ!」


 辰信は、計算完了の報告を受け取ってすぐ、アリゾナを恒星ルーベックに向けて跳躍させた。そして、その後に続いてホウショウもまた跳躍する。





 ニヴルヘイム小惑星帯地域から最も近い大宇宙共栄連盟と神聖ジークダルク帝国の国境付近にあるアルバンド星系。

 その星系は、数十年前はジークダルク帝国領だったが、第一次銀河間大戦後、地球政府が直接統治することになり、地球政府はアルバンド軍用基地をそこに建築し、その基地は第二次銀河間大戦時は補給拠点として役に立ったが、ゾンビパンデミック発生した今は、資料やデータを全て破棄され、基地のみならず星系は、完全に無人の状態となっていた。

 そのような星系に、1隻の大型艦と2隻の中型艦、複数の小型艦で編成されたトワイライトの艦隊が駐屯していた。


「ルインX…その威力、楽しませて頂きましょうか」


 大型艦こと、ミレニアム級宇宙戦艦四番艦サーヴァントの艦橋では、緑色の髪で眼鏡をかけている1人の男が、艦長席からモニターに映し出されている映像を見ていた。

 モニターには、あのジェスパーの同型艦である三番艦のアメシスト、四番艦のガーネットが、ミレニアム級を超える全長のミサイルをそれぞれ両舷から重力管制で接舷して、待機している様子が映し出されていた。

 ミサイルの名前はルインX。全長480m程の超大型ミサイルであり、トワイライトが現在、心血を注いで開発中の代物である。

 そして今回は、そのルインXの試射を行うことになっている。


「それでは皆さん。今回の試射はたーいへんに重要なものですので、失敗しないように注意してくださいね~」


 無線機を手に取った緑髪の男は、何処か人を嘲笑っているような口調で、全艦に話しかける。


「もし、もしも仮に人為的なミスを起こしてしまったら…皆さんの明日は保証できないので、要注意ですよ~」


 緑髪の男の言葉に、アメシストとガーネットの全乗組員は、冷や汗を流す。


「それでは! ルインX発射よ~い!」


 乗組員達の気持ちを無視して、緑髪の男はルインXの発射準備を命じた。


『僚艦トノデータリンク確認』

『二重跳躍計算開始』

『ルインX、機関始動』

『小型機関αII3基ノ起動ヲ確認。出力正常値ヘ』

『跳躍時間セット完了』


 アメシストとガーネットのロボ達は、淡々とルインX発射の準備を進めて行く。


『ルインX、発射準備完了致しました』

「ご苦労様、それじゃ~…カウントダウン開始!」


 アメシスト艦長からの報告を受け、緑髪の男は指をパチンと鳴らし、カウントダウンを始めさせた。


『10、9、8……』


 人工的な音声によるカウントダウンが進む中、ルインXの4つの噴射ノズルから勢いよくプラズマが放出され、いつでも最大速度で射出される状態になる。


『5、4、3、2、1』

「ルインX、発射!」


 緑髪の男の号令と共に、アメシストとガーネットは重力管制を切り、ルインXから離れて行く。

 実質的な錨となっていた2艦が離れたことにより、ルインXは物凄い速度で宇宙空間を進む。


 ――カチッ、カチッ、カチッ、カチッ!


 ルインXの内部の時限タイマーが、ゼロになると同時に、ルインXはミサイルにも関わらず、空間跳躍を行った。


「まずは、第1段階は成功…」


 無人のミサイルが単独で空間跳躍を行ったのにも関わらず、緑髪の男は恐ろしく冷静で、笑みを浮かべて何かを待っているようだった。

 そして、モニターの画面が切り替わり、彼らがいるアルバンド星系から2万光年程離れている恒星と15個の岩石惑星で構成されているシルリア星系が映し出される。


「さぁ来ますよ」


 緑髪の男の言葉に、サーヴァントの艦橋にいる人達は、一瞬首を傾げて疑問に思う。

 次の瞬間、空間跳躍をしたルインXが、シルリア星系内に現れ、亜光速を維持したまま恒星シルリアの方へと向かうと思ったら、そのまま恒星であるシルリアの対流層へと勢いよく飛び込んで行った。

 その光景を見た多くの者達が、失敗だと思い込み、恐怖に駆られるが、緑髪の男は狂気を感じられるような笑みを浮かべて、何かを待った。


「さぁ、来ますよ!!」


 緑髪の男がそう言った瞬間、先程まで何の変哲もない恒星だったシルリアが、一瞬小さくなった後、眩い光を放ち、乗組員達が声を出す前に、モニターはLOSTという文字が中央に映し出されている砂嵐の画面へと切り替わった。

 何が起きたのか乗組員達が分からず、唖然としている中、緑髪の男は1人拍手をする。


「素晴らしい! 実に実に素晴らしい! 皆さん、この瞬間、我々トワイライト教団は、核兵器を超える超兵器を手に入れたのです! さぁ、これを開発した救世主(メシア)様と、我々の同胞達に大きな拍手を!!」


 緑髪の男に煽られ、各艦の乗組員達は少し戸惑いながらも拍手をし始める。

 先程まで唖然としていた彼らだったが、緑髪の男の超兵器を開発したという言葉から、先程のルインXがそれに該当する物だと気づき、バラバラだった拍手が1つに合わさる。

 ルインX。正式名称、対恒星超大型星間弾道弾。超長距離空間跳躍ハイパーロングジャンプで2万光年先から跳躍して来て、そこにある予めセットした航路に従い、跳躍先にある恒星の深部へと突入し、人為的に超新星爆発(・・・・・)を引き起こす悪魔の兵器である。

 そんな兵器をトワイライト教団が手に入れた今、全宇宙にどのような影響を与えるか、神ですら予測不可能であろう。

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