第20話 ステーション救出作戦
「それで――」
『真希様、オルタからスサノオの修理が終わったとの報告が…』
長時間に渡って話し合っていた真希達に、ステラは少し気まずそうに報告をした。
「時が流れるのは早いな…すぐに行くと伝えておいてくれ」
『畏まりました』
ステラからの報告を聞き、真希は返事を伝えながら席から立ち上がった。
「楽しい時間を過ごさせてもらい、ありがとうございました」
真希は辰信に対して敬礼をしながら礼を述べる。
「儂も久々に楽しかった。お礼と言ったらなんだが、何かあった時は儂を頼ってくれ! こう見えても人脈は広いからな。何か役に経つかもしれん」
「分かりました。その時はお力をお借りします。それでは、また!」
「おう、武運を祈る!」
辰信との別れの挨拶を済ませた真希は、ホウショウから降りて、小走りにスサノオに向かう。
そして真希は、碇泊しているスサノオに乗り込み、艦橋に上がった。
艦橋には既に、碧が操舵席に、ナディアが通信席にそれぞれ座っていた。
「悪い、遅れた」
「遅いよー艦長」
「me達はいつでもOKネー!」
艦橋に居た2人に遅れたことに謝りつつ、真希は艦長席に座った。
「それで、オルタ。スサノオは出港できるか?」
『はい。損傷箇所の修理は完了。乗組員全員の乗艦も確認致しました』
「よし、出航用意!」
『了解致しました』
碇泊所中に響く程の大きな警告音が流れ、それと同時にスサノオのエンジン音が鳴り響く。
『…機関出力良好。デンクマール博物館からの出港許可を確認』
スサノオの出航用意が着々と進む中、碇泊所内では生物がいないことを確認された後、中の空気が抜かれて真空状態になったあと、外へと繋がる天井の扉が開かれた。
『船舶用固定把持装置解除』
「解除確認。スサノオ、浮上開始」
スサノオを固定していたアームが無くなり、碧は操縦桿を手前に引き、スサノオをゆっくりと浮上させ、スサノオを碇泊所から離陸させて行く。
『質量動力炉正常値へ』
「メイン回路接続、点火!」
「スサノオ発進!」
碇泊所から十分な距離を取ったスサノオは、真希の号令と共にメインノズルから勢いよくプラズマを放ちながら、デンクマール博物館を背にして離れて行く。
「跳躍準備!」
『了解致しました。座標確定、電磁防壁展開』
「機関出力最大、最大戦速!」
『「「…跳躍!」」』
デンクマール博物館からある程度距離をとったスサノオは、そのまま次なる場所に向けて、跳躍を行った。
そして、その光景を辰信は、ホウショウの艦橋にあるモニターから見ており、
「君達の活躍が、これから楽しみだ」
と、微笑みながら一言述べた。
〇
『跳躍完了。艦内に異常なし』
「機関の再起動を確認。スサノオ、巡航速度へ」
デンクマール博物館があるニヴルヘイム小惑星帯地域から跳躍をしたスサノオは、碧の操縦の元、宇宙空間を巡航速度で進む。
「スサノオの扱いにも、大分慣れてきたんじゃないか? 碧」
「お陰様で! 今なら、メテオトップですべての賞を総取りできる!」
「それ程までに慣れてもらって良かったよ。これからも、スサノオの操縦を頼む」
「うん! 任せて!」
「……」
楽しそうに会話をする真希と碧とは対照的に、ナディアはその光景を不服そうに聞き流していた。
「…そろそろ腹が減ったな」
いつもと比べてナディアが大人しい、と思った真希は、少しわざとらしく空腹になったことを伝える。すると、ナディアは、
「っ! なら、私が作ってくるネー!」
出番が来たと思い、勢いのあまり席から立ち上がりつつ、喜んだ。
「嗚呼、頼んだよ。ナディア」
「お任せあれデース!」
真希に任され、ナディアはウキウキで艦橋から出ていき、お手製の料理を作るために食堂へと向かって行った。
「ナディアって、案外扱いやすい?」
「うーん。俺的な感覚としては、大型犬のイメージがあるな。褒めたら喜ぶし、頼んだら喜んでやってくれることが多いし…」
「大型犬って……ちなみに、僕は?」
「まだ分からないけど、今のところ柴犬かな?」
「柴…犬…か……」
予想外の真希の指摘に碧は少し戸惑う。
「取り敢えず、オルタ。今日は跳躍をこれで終える。夕食を食べたら、俺は寝るつもりだから、寝ている間は基本的に任せていいか?」
『はい。お任せ下さい』
「それじゃあ俺は、食堂に行って夕食ができるのを待っておく」
「僕はもう少し、スサノオの操舵を味わった後に行くってナディアに伝えておいて」
「分かった」
オルタに軽く明日までの事を話し、碧からナディアへの伝言を預かった真希は、艦橋を後にして食堂へと向かった。
その後、真希達はナディア特製カルボナーラを食べて、それぞれが就寝の準備に入る。なお、2人しか居なかった時は、真希との同衾を許されていたナディアだったが、アルベルタ達が来た時にはアルベルタと寝るように言われ、そして今は、フラリアと同室で寝るようにとされていた。最初言われた時、ナディアは駄々を捏ねたが、「別に仲間なら、一緒に寝れるだろう?それに、同性なら色々と気にしなくていいだろうし」と、真希に正論を言われ、少し不服そうに承諾した。
そして翌日、寝間着から着替えた真希が、朝食を取るために食堂へと向かうため、通路を歩いている最中だった。
『緊急報告。緊急報告。本艦1時方向、12光年にてSOS信号を受信。艦長、至急艦橋にお戻りください』
突如、オルタから艦内放送を通して、SOSを受信したという報告を聞かされた。
「…こればかりは仕方ないな」
食堂へと向かっていた真希は、朝食を諦めて小走りに艦橋の方へと向かって行った。
「状況報告を頼む」
艦橋に上がってきた真希は、艦長席に座って詳細をオルタと既に来ていた碧に尋ねた。
『はい。本艦1時方向、12光年先にある大型居住ステーション506からのSOS信号を受信しました』
「よし、分かった。先程のは前言撤回だ。今から跳躍を行う。準備が終わり次第、ステーションに向かうぞ!」
『畏まりました』
「よーそろー!」
状況報告を受け、真希は迷うことなく助けることを選び、オルタと碧は命令に従って、跳躍の準備を進め、
『「跳躍!」』
スサノオを12光年先へと飛ばした。
跳躍したスサノオが出てきた場所は、恒星ルーベックだけが、1つぽつんとある少し寂しい星系だった。数千億km程離れた場所にある15個の岩石惑星で構成されているシルリア星系に、惑星を全部もっていかれたとも呼ばれる程だ。
だが、今回はそのおかげもあり、目的のステーションを直ぐに見つけることが出来た。
ステーションの形は、まるでカジノのルーレットのような円盤の中心に塔が建てられていた。
「LR型ステーションか…」
ステーションの形を見た真希はそう呟く。
LR型ステーション。円柱で大人数が住めるコロニーの建設が始まる前、地球政府が宇宙空間で人が住める場所として、建造していた円盤型ステーションであり、千人前後で住むことを想定されている。コロニー建設が始まった後も、コスパの良さから、コロニーの代わりとして建造されることが多い居住型ステーションである。
「オルタ、ステーションに通信。我、独立傭兵艦スサノオ。其方のSOS信号に応えるため馳せ参じた」
『了解』
オルタは真希の言葉通りに、ステーションに対して電文を打つ。
そして、そう時間が開けずに、
『貴艦ノゴ厚意感謝スル。現在、我ガステーションデハ、ゾンビパンデミックガ発生シテオリ、居住区画ノ6割ガ奴ラ二占拠サレテイル。至急1284名ノ救出ヲ求厶』
ステーションから返事が帰ってくる。
「1284名か…」
ステーションから聞いた救助を必要している人数に、真希は頭を抱える。
スサノオはあくまでも探索をメインとして設計、建造された船である。200名程度であれば、廊下で待機などを我慢してもらえば、ギリギリ乗せることができるが、1000名以上となると、スサノオの食料庫や倉庫を全て空にしても乗せるのは難しい。
「………」
真希は目を瞑り、両腕を組んで頭をフル回転させて、どうしたら全員を欠けることなく助けることが出来るか考え始めた。
そして、ある船を思い出して、目を開いた。
「オルタ、至急デンクマール博物館へ打電。恒星ルーベックにて、1284名の要救助者を発見。本艦では全員の輸送は不可能、至急貴館のホウショウをお借りしたい、と!」
『了解致しました』
ホウショウが使えることを思い出した真希は、一か八かでデンクマール博物館に頼み込むことにした。
『デンクマール博物館から返信。貴艦の願い、承った。至急、ホウショウ及びアリゾナを出港させ、其方へ向かう。今暫く待って欲しいとのことです』
「ふふっ、寺山さん大分張り切ってるな…これなら、何とか収容できそうだ。オルタ、このことをステーション側に伝えておいてくれ、スサノオに動きがなかったから、捨てられるのではないかと思って、ヒヤヒヤしていることだろうし」
『畏まりました』
デンクマール博物館からの返信を聞き、真希は嬉しそうな笑みを浮かべつつ、ステーションにしっかりとそのことをオルタを通して報告しておく。
「それじゃあ、ステーションに接舷だけして、スサノオに乗せれる人数を可能な限り乗せよう。子供と老人を優先的に乗せる」
『畏まりました。そのようにもステーション側に伝えておきます』
「それじゃあ、碧。接舷作業を頼む」
「よーそろー!」
アリゾナとホウショウが到着するまでの間、スサノオはステーションに接舷し、ホウショウやアリゾナが来た時、迅速に避難ができない子供と老人を優先して、艦内に収容を始める。
その間、予想もしない出来事が、恒星の近くで起きているとは知らずに…




