第18話 来訪の大銀河
天の川銀河から亜空間に入り、空間跳躍を行ったスサノオは、亜空間からアンドロメダ銀河の最端へと出てくる。
『跳躍完了。報告、艦内にて問題発生。機関部の第3コンデンサーに異常を確認。高エネルギーを一度に放ったことにより、融解してしまったようです』
「不味いな…機関停止、補助エンジンで進む。それと、作業班に詳しい状況確認だけ頼む。応急修理ができそうなのであれば、やってくれ」
『畏まりました』
初の|銀河間超長距離空間跳躍を行ったことにより、スサノオの機関部付近に問題が発生し、真希達は直ちに応急修理に取り掛かった。
そして、ヨサク率いる修理班が融解してしまっているコンデンサーの修理に取り掛かるが、
『ダーメだやこりぁ…完全に溶けてるだ。1回、どっかで安全な場所で泊まらんと、直せだーぁーよ』
「そうか…何とかしないとだな…」
ヨサクからの現状報告を真希が聞いていると、
『親方ー! 第3コンデンサーから溶け落ちたた金属が、第4コンデンサーにかかりましたー!』
『タカラモノ! 何故止めんかっただ!!』
『無茶言わんといてください!! あんなの触ったら、俺達の身体溶けますって!』
『あーわかったさ! すぐ行くべ。ちょっと待ってけ! という訳だ。出来るだけ早く、場所を探しでほしいだーぁーよ!』
「あ、ああ…何とかしてみるよ」
忙しくなったヨサクとの艦内通話を切った真希は、1人で頭を抱える。
何しろスサノオの現在位置は、アンドロメダ銀河の最端、天の川銀河と比べると惑星や恒星などが多いが、真希が覚えている限り、近くにスサノオが停泊できそうな星はなかった。
「ステラ、何処か良さげな場所はないか? 幾ら星間物質が少ない銀河の端とはいえ、修理中に小惑星や宇宙生物などに襲われたら、対応できないからな」
『分かりました。少々お待ちください…………確認致しました。スサノオから1時方向、ニヴルヘイム小惑星帯地域のデンクマール博物館が、約49億kmにあります。そこであれば、船を止めることができると思われます』
「ふむ…確か、あそこには記念艦があったよな?」
『はい。ペンシルバニア級航宙戦艦アリゾナとホウショウ級航宙母艦ホウショウの2隻があります』
「一度行ってみたいとは思っていたが、こういう形で行くことになるとは…」
ステラからの提案に、真希はその場所について思い出す。
デンクマール博物館。かつて、第一次銀河間大戦と第二次銀河間大戦の戦場となったニヴルヘイム小惑星帯地域に、ドイツ系企業が主体となって建造した戦争博物館である。博物館には、大戦時に使われていた戦車や航宙機などが飾られており、そのうちの1つとして、老朽化で退役した航宙母艦のホウショウと、軍縮により退役したアリゾナが記念艦として置かれているのである。
「よし、分かった。オルタ、聞いての通りだ。ニヴルヘイム小惑星帯地域へと進路を取れ!」
『了解致しました』
船の心臓である主機をこれ以上壊さないようにするため、スサノオはニヴルヘイム小惑星帯地域にあるデンクマール博物館へと進路を取った。
主機が使えないため、少々時間がかかったが、スサノオは無事にニヴルヘイム小惑星帯地域に辿り着くことが出来た。
ニヴルヘイム小惑星帯地域。青色巨星ニヴルヘイムを中心に、大小様々な小惑星帯が広がっている宙域である。
その小惑星帯のうちの一つであるニヴルヘイムγ小惑星帯。ニヴルヘイムのハビタブルゾーンにある小惑星帯に、準惑星で建造されたデンクマール博物館があった。
「あれが、ペンシルバニア級航宙戦艦の二番艦アリゾナと、ホウショウ級航宙母艦の一番艦ホウショウか…」
デンクマール博物館に到着したスサノオの艦橋の窓を通して、真希は記念艦の用のドックに碇泊している2隻の船を見つめる。
ペンシルバニア級航宙戦艦アリゾナ。第二次銀河間大戦の中期から後期にかけて、米国系企業によって建造され、各戦役で活躍した航宙戦艦である。大戦後は、軍縮に伴って退役が決まり、デンクマール博物館で、記念艦として保存されることになった。
ホウショウ級航宙母艦ホウショウ。第一次銀河間大戦前に建造が進められていた航宙母艦。戦歴としては、第一次銀河間大戦時に、ニヴルヘイム小惑星帯地域で、当時の帝国主力艦隊と激戦を行い、また第二銀河間大戦時には、装備の旧式化により時代に少し遅れていたが、兵士や航宙機などの輸送艦として活躍して生き残った幸運艦でもある。しかし、老朽化や搭載装備の旧式などにより、同型艦や同じ設計で建造された艦は、一般企業に輸送船として売られたり、解体されている。
『こちら、独立傭兵艦スサノオ。本艦は現在、機関が不調。修理のため、貴館の停泊所に一時的な碇泊の許可を求む』
『………承認。管理者権限により、貴艦の一時碇泊を許可致します。誘導ドローンに従ってください』
『感謝します』
オルタは、博物館を管理しているAIと取り合い、スサノオの入港許可を得る。
そして、入港許可が出てから1分程すると、博物館の方から赤く点滅しているライトを抱えている2台のドローンが飛んで来て、オルタはそのドローンに案内されてスサノオを動かし始める。
「僕の勝ちだったねー!」
「うう、負けたネー…」
ドローンの案内で、スサノオが動いている中、トレーニング室で競い合っていた碧とナディアが、汗をシャワーで流したあと、艦橋にやってきた。
「…仲良いな君達…」
「「良くない(ネー)!」」
口を揃えて仲良く真希の指摘を否定するナディア達に、真希は
(仲良いじゃん…)
と思った。
スサノオはドローンに案内されて、博物館の隣接するように造られた宇宙船碇泊施設に向けて、降下して行く。
『接舷を開始します』
オルタは補機の出力を弱め、方向転換スラスターでスサノオの位置を調整しながら、屋根が開けられている碇泊施設へと降りていく。
『碇泊所に入港。船舶用固定把持装置による艦の固定を確認』
碇泊施設の中にある1隻ずつが止まれるようになっている桟橋に、スサノオが入ると、桟橋の両側から固定用のアームが出てきて、スサノオが動かないようにしっかりと挟み込んで固定する。
スサノオが止まると、空いていた屋根が締まり、真空状態となっていた碇泊施設に、館内で作られた空気が注入され、あっという間に満たされる。
『補助エンジン停止…修理班、主機の修理を開始せよ』
オルタは補助エンジンを止めると、修理班に指示を出し、修理班はそれに従って、溶けたコンデンサーの修理並びに、それによって起きた二次的な損傷の修理にも取り掛かる。
「修理完了まで何時間かかる?」
『そうですね…コンデンサー及び、融解物質によ一部部品の損傷…そして、ヨサク達の腕前…それらを含めますと……大体5時間くらいかと思われます』
「なるほど……よし、それじゃあ修理の間、博物館でも見ていこうか! ここは確か、無料だったはずだからな」
『分かりましたそれでは、取り合ってみます』
「ああ、頼む」
博物館との交渉をオルタに任せ、真希は全員を食堂室に呼び出した。
「それで、デンクマール博物館に行きたい者を決めたいんだが…」
「私は行きたい」
真希が全員の顔を見渡しながらデンクマール博物館に行くことを希望する者を聞くと、真っ先にアルベルタが手を挙げ、フラリアを除く者達が驚きアルベルタの方を見る。
「…何?」
多くの目線が向けられたため、アルベルタは不満そうに声を漏らす。
「い、いや…てっきり研究すると言って、行かないものだと…」
「今開発中のは、この船用の砲弾なんだ。もしかしたら、昔の兵器から何か得られる物があるかもしれないだろう?」
「…それもそうだな……それじゃあ、他は…?」
アルベルタが行くと言った理由を聞いた真希は、再び皆の顔を見渡す。
「勿論行くネー!」
「アルベルタ様が行くというのであれば、お供致します」
「僕も行く!」
《私も行きたいです》
全員が、それぞれ真希に行きたいと伝える。
「それじゃあステラ、オルタにこのことを伝えてくれ。博物館に行くのは全員って」
『了解致しました』
ステラを通してオルタに博物館に行く人数を伝え、オルタと博物館の交渉が終わるのを待つ間、真希達は博物館を見廻るための準備を始めた。




