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スサノオ銀河航海譚 ~ゾンビが蔓延る大宇宙に、英雄神の名を冠する船が赴く~   作者: 焼飯学生
銀河邂逅篇

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第16話 トワイライト初戦闘

 低空飛行を続けた八咫烏は、2度目のミサイル攻撃を受けることなく、無人農畜産業都市『エウポリア』の上空に辿り着いた。

 上空から見るエウポリアは、街というより一種の要塞のような風貌をしており、街の外縁部には農場らしき牧草地や畑などが広がっている一方、街の内部には大きな建物が建設されており、その中央には荷物を打ち上げる用のマスドライバー施設があった。


『エウポリアからの誘導ビーコンの信号をキャッチしました』

「よし、八咫烏着陸態勢に入る」


 ステラがエウポリアから発信されている信号を確認した後、真希はその信号に従って八咫烏を操作する。

 八咫烏は誘導に従って、建物の側面にある扉から屋内にある航宙艇発着場に入る。


「ホバーリング開始。スキッド展開…着陸」


 格納式のスキッドを展開した八咫烏は、垂直にゆっくりと発着場に着地した。


「到着だ」

「1番乗りデース!」

「ちょっ、ちょっと!」


 真希が八咫烏のハッチを遠隔操作で開けると後部に座っていたナディアが、1番乗りで外に出て、それに続くように碧も外に出た。


『お待ちしておりました。スサノオ御一行様、私はこのエウポリアを管理しているAIロボのビッツです。ステラやオルタからお話は聞いております。提供する食糧はここにご用意致しましたので、すぐに積ませていただきます』


 2人が外に出ると、AIを搭載したロボ、ビッツと複数の作業用ロボが、様々な箱と共に発着場に居た。


「それじゃあ、宜しく頼むよ」

『畏まりました』

「私達も手伝いマース!」

「うん!」


 真希に頼まれて、ビッツは作業用ロボ達に八咫烏への食糧の詰め込みを命じ、ナディアと碧はそれを手伝う。


「本当に、君達には頭が上がらないよ」

『いえいえ、手塩にかけて育てた食糧をこのまま腐らせるか破棄するかの選択肢がなかった中、引き取って頂いて、山明様には感謝してもし尽くせません』

「それなら、美味しく食べさせてもらうよ」

『そう言って貰えるだけでありがたいです』


 八咫烏に食糧が詰め込まれている景色を見つめながら、真希とビッツは話し合っていた。


「それで、ビッツ…1つ聞きたいことがあるんだが…」

『なんでしょう?』

「最近、不審な宇宙船とか見たか? 実は、ここに来る途中で、ミサイル攻撃されてな…」

『そんなことが…少々お待ちください。エウポリア中の監視カメラや警備ロボの情報から、不審船についてなにか情報がないか探ってみます』

「頼む」


 真希に頼まれ、ビッツはその場に立ち止まり、エウポリアに記録されている様々な記録から、不審な動きをするモノがないか、調べ始めた。


『………ヒット。4日前の深夜、監視カメラに一瞬ですが、複数の小型艦と艦隊を編成している中型艦を確認しました』

「その艦隊が向かった先は分かるか?」

『方角的に、エウポリアから北西方面の方に向かったと予測されます』

「…やはり、デメテル防衛基地が怪しいな」


 ビッツから情報を手に入れた真希は、ミサイルから来た方向から、エウポリアの北西にあるデメテル防衛基地が、怪しいと睨む。


『無人機を飛ばして、偵察させることも可能ですが…どういたします?』

「流石に、君達にそこまで仕事をやってもらうつもりはないよ。この後、自分の目で確かめる」


 ビッツからの提案を真希は、笑みを浮かべながら断った。


『…ふふっ、まるで英明様を見ているようです』

「どうしてそう思うんだ?」

『古来より、我々ロボットやAIには権利というものがありませんでした。それ故に、多くの者が我々を物として扱って、使い捨てしてきました。ですが、英明様はそれを不服に思い、我々を人と対応に扱ってくださいました。それだけではなく、星命重工内でのロボの扱いについてのルールも決めて頂き、感謝してもし切れないほどです。そして、貴方様の考えは、英明様の考えとよく似ております』

「そうか…? 俺としては、いくらプログラムされたものだとしても、意思がある以上、ロボやAIを対等な存在と思っているだけなんだがな…」

『そういう所がよく似ておられます』

「成程…命の恩人に似ているとは、最高の褒め言葉だ」


 嬉しそうに言うビッツを見て、真希は照れくさそうに笑みを浮かべる。


「荷物の詰め込み終わったデース!」

「色んな種類の魚や美味しい野菜がいっぱいだよー!」

「あーっ! つまみ食いはダメデース!」

「いいじゃん、ちょっとくらい」


 話している真希とビッツに、ナディアと大玉のトマトをつまみ食いしている碧が、食糧の積み込みが終わったことを報告した。


「それじゃあ、また会おうビッツ」

『はい。我々エウポリアロボ一同は、スサノオの武運を祈っております。どうかお気をつけて…!』

「ありがとうな…!」


 ビッツ達に見送られながら、真希達は八咫烏に乗り込み、八咫烏は数十cm程宙に浮き、そのまま発着場から離れて行く。


『…山明様。成程、オルタが認めるはずですね…』


 過ぎ去って行く八咫烏を見つめながら、ビッツは1人納得すると、管理者としての仕事へと戻って行った。





 時間は、真希達がエウポリアに到着した頃まで遡り、場所はデメテル防衛基地から少し離れた場所に移る。そこには、スサノオから発艦した一機の84式空間遠隔迎撃機『雷電』が、低空飛行を行い防衛基地へと向かっていた。

 今回の偵察任務に、雷電が選抜された理由としては、その純粋な飛行速度からであろう。雷電に搭載されている核パルスエンジン《カ型12号》は、燃費はあまりよくないものの、エンジン出力や加速能力は他の戦闘機と比べると高く、艦や要塞を守るための迎撃機としてはトップクラスの性能を誇る。

 そんな雷電が、防衛基地の直前まで迫ると、一気に高度を上げて下部につけられたカメラで、上空から基地の撮影を始めた。

 防衛基地に、連邦軍ではない艦隊が居るところを撮影すると、雷電は迎撃機やミサイルが来る前にアフターバーナーを使い、基地から一気に離れて行く。

 そして、その報告を戦闘指揮所で、ロボ達から聞いたマテウスは、艦長の指示を貰うため、慌ててジャックが居る艦長室へと向かう。



「艦長! 緊急事態であります!」

「どうした。騒々しい…」


 ロボ達に作業を任せ、艦長室でワインを嗜んでいたジャックは、ノックをすることなく入って来たマテウスに、苛立ちを覚えるが、彼の焦り具合から何かあったのかと察する。


「さ、先程所属不明機が本艦上空を通過致しました。恐らく偵察機かと」

「なんだと!? まさかバレたのか!?」

「恐らくは…どういたしましょう…?」

「……」


 偵察機に発見されたという報告に、ジャックは焦る。


「B級全艦発進! 恐らく母艦が何処かにあるはずだ! なんとしても撃沈せよ! 俺もすぐに行く! 命令を伝えてこい!!」

「はっ!!」


 ジャックからの命令に従い、マテウスは戦闘指揮所へと戻っていき、護衛の小型艦を次々と発進させ、スサノオの捜索を始めた。その間、ジャックはグラスに入ったワインを飲み干し、軍服を着直し、戦闘指揮所へと向かった。


「おい、作業の進捗状況はどうだ!?」

『現在68%デス』


 ジャックの質問に、戦闘指揮所に居る黒い人型のロボが機械的な音声で答える。


「チッ。作業は中止だ! 発進用意!」

「切り上げるのですか!?」

「当たり前だ。我々は認知されていないからこそ、動けているのだ。我々のせいで組織が、旧人類共にバレるようなことがあってみろ。最悪絞首刑だぞ!」

「わ、分かりました…」


 任務を途中で切り上げようとするジャックにマテウスは驚くも、事の重要性に気付き、大人しく従うことにした。


『機関β起動…出力正常』

『ケーブルパージ完了』

『艦内オールクリーン。異常認メラレズ』

「艦長、発進準備全て整いました」


 ロボ達の報告を聞き終えたマテウスは、艦長席に座ったジャックに報告する。


「ジェスパー、発進!」


 ジャックの発進命令により、小型艦に遅れて中型艦のジェスパーが動き出した。


「愚かにも、我々を見た連中に、トワイライト教団軍第五航宙迎撃部隊『ブラックシャーク』の力を見せてやろう…」


 口で葉巻をちぎって火をつけ、吸い始めたジャックは、内心興奮しながら、スサノオの捜索を開始した。





 エウポリアを離れて行く八咫烏のコックピットでは、真希がオルタからの報告を受けていた。


「トワイライトだと!?」

『はい。偵察機からの映像で、旗艦らしき中型の宇宙船の側面に、トワイライトのマークを確認致しました』

「奴らの目的は分かったか?」

『映像のみのため、憶測に過ぎませんが、中型艦からケーブルらしき管が出ていることから、恐らく基地に残っている機材をハッキングし、情報を集めていると思われます』

「それは不味いな…幾ら数ヶ月前とは言え、連邦軍の防衛網の情報が漏れると、奴らに好きなように入られることになる……オルタ、八咫烏回収後、すぐにスサノオを発進できるようにしておいてくれ」

『畏まりました』


 オルタから報告を受けた真希は、八咫烏のブースターを起動させ、速足でスサノオへと向かう。


『オルタから緊急報告。現在、スサノオが攻撃を受けています』

「トワイライトか?!」

『そのようです』


 スサノオまでもう少しというところで、ステラを通してスサノオが攻撃をされているという報告を受ける。

 そして、八咫烏がスサノオが停泊している人工湖にたどり着くと、オルタの報告通り、スサノオが小型艦からミサイル攻撃を受けており、スサノオは対空火器でミサイルを迎撃しつつ、主砲で反撃をしていた。


「ど、どうするネー?!」

「強行着陸をする! 被弾するかもしれないから、衝撃に備えてくれ!」

「また無茶だぁー!」


 スサノオと複数の小型艦による撃ち合いが行われている中、八咫烏は弾幕を変え潜り、スサノオの後部甲板に着陸する。


――ドォンッ!!


「うおっ!」

「「キャァッ!!」」


 小型艦の撃ち落とせなかったミサイルが、スサノオの後部に命中し、格納を始めていた八咫烏がその衝撃で揺れるが、無事に八咫烏の格納は終わる。


「オルタ、スサノオ発進! 俺もすぐにそっちに向かう!」

『了解。スサノオ発進します』


 八咫烏が降りた真希から発進命令が降り、スサノオは反撃を行いつつ、湖から離水する。


「状況はどうだ?」


 艦橋上がった真希は艦長席に座り、オルタにスサノオの状態について尋ねる。

 そして、真希の後に続くように、ナディアと碧も艦橋に入ってきて、ナディアは通信長席に、碧は操舵席にそれぞれ座った。


『右舷後部、左舷前部に1発ずつ命中。しかし被害は微小です』

「よし。今は敵旗艦を誘き出すために、逃げる! 碧、両舷増速だ」

「了解。両舷増速」


 真希の指示通りに、碧はスサノオの速度を上げ、着いていくる小型艦との距離を置く。


『…レーダーに感あり。恐らく例の中型艦です。方角は本艦7時方向』

「食いついたか…!」

『敵、魚雷発射。数10』

「艦尾魚雷を発射して吹き飛ばせ。碧、取舵いっぱーい!」


 真希は迫りつつある敵魚雷に対して艦尾魚雷を放ち、誘爆させて無力化させると、艦首を敵艦の方に向けるために左へ旋回する。


「舵戻せ。主砲発射用意!」

『目標補足、自動追尾セット完了』

「撃ぇーー!」


 スサノオの48cm砲から光線が放たれ、光線は真っ直ぐと敵艦の方へと飛んで行く。

 そして、敵艦ことジェスパーの戦闘指揮所では、


『魚雷命中セズ』

『敵艦主砲旋回、回避行動二移リマス』

「回避後に、僚艦のB級共に戦術Aを行う!」

「了解。全AIに通達。戦術A発動!」


 ジェスパーはスサノオの砲撃を回避すると、僚艦として連れてきた8隻のB級と共に展開する。


『全艦連動』

『攻撃準備完了』

『目標ロック』

「よし、全艦攻撃開始!」


 ロボ達からの報告を聞いたジャックから攻撃命令が、艦隊に命じられる。

 これにより、B級の小型艦は両舷のミサイルポットにある迎撃ミサイルを、ジェスパーからは艦首魚雷と小型星間弾道弾をそれぞれスサノオに向けて全弾発射される。

 ジャックが編み出した戦術A。それは全艦が全てのミサイルを目標に向けて放ち、ミサイルによる飽和攻撃で敵を完膚なきまでに叩き潰すというもの。飛来してくるミサイルは、正しくハチの群れ。彼らの部隊名はここから取られているのだ。


「決まったな…」


 スサノオへと向かうミサイル群を見ながら、ジャックは勝利を確信したが、


「…碧、行けるか?」

「よーそろー!」


 真希と碧は余裕そうな笑みを浮かべていた。


「よし、碧の腕を信じる! 機関出力いっぱーい! 回避が難しいのは、主砲もしくは対空砲などで迎撃せよ!」

『了解』


 襲いかかってくるミサイル群に対して、スサノオはその高機動性を最大限に活かして回避を行い、被弾しそうなミサイルは、様々な火器で撃ち落とす。


「ば、馬鹿な…!」


 その光景を見たジャックは狼狽える。

 逃げれるはずがない、そう確信していたのに、目の前の大型艦は被弾することなく、突き進んで来るのだから無理もない。


「か、艦長…どう致します!? 本艦の魚雷はまだありますが…B級艦の主砲は対空型の砲です。対艦としてはあまりにも貧弱です!」

「ええい、魚雷全門発射! B級艦は砲撃を行いつつ特攻だ!」

「了解!」


 戦術Aを突破して向かってくるスサノオに対して、ジャックは応戦を行うことにした。


『小型艦複数接近。体当たりを行うようです』

「小型は副砲と対空火器で十分だ。狙うのは敵旗艦ただ1隻だ!」


 B級艦を迎撃しつつ、スサノオは加速力を活かしてジェスパーに接近する。


「よし、主砲切り替え、弾種90式徹甲弾!」

『了解。主砲切り替え。第一、第二主砲90式徹甲弾装填完了。目標補足、自動追尾セット完了』

「撃ぇーーー!」


――ドゴォンッ!!


 スサノオは20km程間隔が空いている中、ジェスパーに対して、すれ違いざまに6発の徹甲弾を轟音と共に放った。


「か、回避! 右…い、いや上にッ」


 回避先をジャックが迷ったことにより、ジェスパーに隙が生まれ、そこに6発中4発の砲弾が突き刺さる。

 コントロールを失ったジェスパーは、眼下に広がる森へと堕ちていき、そのまま爆発四散した。


『敵艦撃沈』

「よし、残党戦だ。面舵いっぱーい!」


 ジェスパーの撃沈を確認した真希は、残りのB級艦殲滅に取り掛かった。

 旗艦を失ったことにより、B級艦は七面鳥落としの如く、撃ち落とされ、5分も足らずに残存勢力の殲滅が完了した。


『レーダーに反応なし』

「ふぅ…火器収め、戦闘体勢解除」


 残存勢力の殲滅が終わり、他に敵艦が確認されなかったため、真希は肩の力を抜き、リラックスする。


「凄い操舵技術だったネー!」

「そうだな。お陰で助かった」

「ふっふっふっ、僕にかかればアレくらい朝飯前さ!」


 真希とナディアから褒められて、碧は嬉しそうに自身の腕を誇った。


「…オルタ、今の戦闘データをしっかりと記録しておいてくれ。今後のトワイライトとの戦闘に役に立つかもしれん」

『畏まりました』

「さてと、食糧確保も出来たことだし、アンドロメダ銀河に向けて、スサノオ全速前進!」

「よーそろー!」


 戦闘を終えたスサノオは、惑星デメテルから離れて行き、重力干渉が低い場所で空間跳躍を行った。

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