第12話 再来の傭兵団
スサノオが神聖ジークダルク帝国の救難ポットを回収してから数日が経過した。保護した女性はまだ目覚めるようすはなく、医療ロボのナンゲル曰く、『長時間のコールドスリープの影響による物ですね現在できる精密検査により、命に別状はないため、ある程度寝かしておけば目覚めると思います』とのこと。そのため、女性が起きた時には故郷にすぐに帰れるように、真希は変わらずにスサノオをアンドロメダ銀河へと進めていた。
そして、現在のスサノオの位置は、天の川銀河中央部付近。あのデイフォビア傭兵団の活動地域だ。
「…オルタ、レーダーに反応はないな?」
『はい。特にこれといったのは…』
「大分煽ったからな。奴ら的に俺らは、忌まわしき敵となっているだろうからな」
ニカッと笑みを浮かべながら、艦橋に1人で居る真希はオルタとデイフォビア傭兵団による奇襲に警戒していた。
「……ッ! オルタ、主砲発射用意! 目標本艦1時方向、小惑星に偽装された衛星!」
『了解。目標ロック、自動追尾セット完了』
「撃てぇー!」
一瞬、スサノオの前方にある小さな小惑星の一部がキラッと光ったのを見逃さなかった真希は、それが衛星だということ気づき、スサノオの主砲を放った。オルタの計算で放たれた主砲は、正確に衛星を撃ち抜き、爆散させる。
『これは完全に気づかれましたね』
「そうだな。オルタ、第1種戦闘配置だ!」
『了解』
衛星を壊したものの、デイフォビア傭兵団にスサノオの存在を気づかれたと判断し、連中との先頭に備えるためにスサノオの艦内に戦闘配置を知らせる警報が鳴る。
「な、何事ネー?!」
警報が鳴り響いたため、艦橋に慌てた様子でナディアが入ってくる。
「説明するから待ってろ」
慌てているナディアを宥めて、帽子を被った真希は艦長席のマイクを手に取る。
「こちら、艦長だ。先程スサノオはデイフォビア傭兵団のものと思わしき衛星に見つかった。恐らく連中は、我々に味わった屈辱を返してくるために、本艦に戦闘を仕掛けてくることだろう…前回は逃げたが、今回は奴らに我々の強さを見せつけ、戦力を弱体化させるためにも戦闘を行う。非戦闘員は重装区画へ移動、戦闘員は各自の持ち場へ付け。繰り返す、本艦はまもなく戦闘行動に移行する。総員、第1種戦闘配備!」
真希の一言により、スサノオ艦内ではロボ達がそれぞれの持ち場で待機するために、慌ただしく動き始める。
そうこうしていると、
『本艦前方に複数の跳躍完了反応…デイフォビア傭兵団です』
「メインモニターに出せ」
艦橋のモニターに映し出された空間に、次々と見覚えのある艦が姿を現し、最後にツギハギのような状態の大型艦が姿を現した。
『敵艦から通信が来ています』
「音声回線を繋げ」
「えっ!? 通話するだけ無駄なんじゃないんですカ!?」
「前はな…今回は連中と正面からやり合う。それに向こうも学習しているだろうしな」
真希が驚くナディアに説明をしていると、
『はっ! ノコノコとまた来やがったなテメェ』
何処か怒りを感じる男の声が、スサノオ艦橋に響いてきた。
「こちらにも事情があってな…通して貰えると有難いんだが」
『俺達デイフォビア傭兵団に、喧嘩を売って何呑気なことを言っているんだテメェは…』
「前回、先に仕掛けてきたのはそっちだろう。それに人類が生存できる星がある恒星系以外の宙域は、基本的に中立地帯だ。不法侵入という無茶苦茶な言い分は通じないぞ?」
『無駄に口が回る野郎だ。だが、それが仇になったな!』
「それはどうかな?」
真希はデイフォビア傭兵団のリーダー、ホーキンスと軽い会話をした後、手でオルタに通信回路を閉じように指示し、通信を終わらせた。
「オルタ、艦首に電磁防壁集中展開、近接戦闘用意! 敵艦隊に向かって第一戦速で突入せよ!」
『了解』
その場で停船していたスサノオは、3つの噴射ノズルから勢いよくプラズマを出し、デイフォビア傭兵団の主力艦隊に単艦で向かい始めた。
『敵無人機の編隊を確認。総数は20機です』
「無人機は射程に入り次第、対空兵装で撃ち落とせ。主砲と副砲は本艦の正面を防ぐ艦を狙え」
『了解。各部戦闘用意……すべて完了』
「今回は好きなようにやって貰って構わない…スサノオ、攻撃始めっ!」
真希の命令により、スサノオの2基の主砲と副砲から青色の光線が放たれるが、第1射は全ての艦が回避行動に移ったため、避けられてしまう。
「ふっ、あの主砲は高火力だが連射は出来ん。未だ畳み掛けろ!」
「へい! 全砲門開け! 各艦自由射撃!」
ホーキンスは余裕な笑みを浮かべながら、各艦に攻撃を命令した。
だが次の瞬間、スサノオからの第2射により小型艦2隻が正面から艦が抉られ、爆沈する。
「な、何が!?」
ホーキンスが驚く中、スサノオは容赦なく主砲を連射し、1艦、また1艦とデイフォビア傭兵団の艦隊を沈めて行く。
「ぼ、ボス! 奴、主砲を連射していますぜ!」
「ッ! 野郎…!!」
ドットーレからの報告を聞いたホーキンスは、最初出会った頃、スサノオが自分達に対して手加減をしていたことに気づき、舐められていたことに激しい怒りを覚える。
「ど、どういします!?」
「無人機で撹乱しろ! その間に体勢を整え直して、仕掛ける!」
「りょ、了解しやした! 強襲艦隊へ打電、無人機全機突撃せよ!」
ホーキンスの指示に従って、強襲艦隊から発艦していた無人機は、10機ずつに分かれ、それぞれ両舷からスサノオとの距離を一気に詰め、搭載していた小型ミサイルを放つ。だが、
「対空砲、撃ち方始め! そしてミサイル撃墜後は、対空ミサイルを10発ずつ両舷から発射!」
スサノオに搭載されている35mm四連装粒子高角対空砲や25mm三連装粒子高角機関砲により、ミサイルは撃墜されてしまい、反撃としてスサノオの艦体側面に格納されている12cm二十五連装近接対空噴進砲から、計20発の対空ミサイルが無人機に向けて発射される。
発射されたミサイルは、逃げようとする無人機をしっかりと追尾し、次々と撃ち落として行った。
その光景を見たホーキンスは、
「な、何だこれは……奴用に組んだ作戦が、機能していねぇ…!」
予め考えていた対スサノオ用の作戦が、全て上手く行かないことに動揺していた。
「ぼ、ボス! 艦隊損耗率が60パーセント超えやした! ここは撤退しやしょう!」
「撤退だと!? 馬鹿なことを言うな! お前は俺に2度もアイツに屈辱的な敗北を味わえと言うのか!!」
「い、いえそんなつもりでは…」
「ドットーレ、残存艦隊に伝達! 全艦敵に向けて突撃せよ!」
「しかしそれでは!」
「黙れ! 早く命じろ! これはリーダー権限だ!」
「へ、へい…!」
ドットーレはホーキンスに押し負け、残っている僅かな艦に対してスサノオに向けての突撃を命じる。
「俺達も向かうぞ! 最大戦速だ!」
スサノオに向けて突撃をしようとしている艦の後に続くように、リューベックが動き出す。
「奴ら、自爆特攻を仕掛けるつもりか…! オルタ、手動航行に切りかえ! 俺が舵を取る!」
『了解』
オルタから舵を貰った真希は、接近してくるデイフォビア傭兵団の艦からの攻撃やラムアタックをギリギリで避けながら反撃を行い、次々と戦闘不能へと追いやる。
『旗艦と思わしき艦が急速接近、本艦との接舷を狙って居るようです』
「無理矢理横付けして、船に乗り込むかつもりか…海賊らしいやり方なだな…なら!」
オルタからの報告に、真希はスサノオを急速回頭させ、艦首をリューベックへと向ける。
「あ、あのー…何をするつもりですカー…?」
ナディアは嫌な予感を感じながら、真希に尋ねてみる。
「オルタ、武装に回すエネルギーを全て電磁防壁に回せ!」
『…了解』
「……ま、まさか…正面から…」
「その通りだ…!」
「Noooooo!!!」
真希はスサノオの速度を上げ、ナディアの静止を無視してリューベックに対してラムアタックを仕掛けようとする。
「ふっ、面白い! 電磁防壁展開。主砲を撃ちつつ、奴に対してラムアタックを仕掛けろ!!」
スサノオの行動に気づいたホーキンスは、迎え打つために同じようにラムアタックを仕掛けようとした。
「総員、衝撃に備え!」
「押し返せぇ!!」
数秒後、2つの艦は真正面からぶつかり合い、互いの艦が大きく揺れる。
しかし、すぐにその決着は着くことになる。
――バゴンッ!
リューベックの電磁防壁が、スサノオの電磁防壁より先に耐圧限界を向かえてしまい、ガラスが割れるようにヒビが入った後、粉々になって消え去る。
リューベックの電磁防壁を打ち破ったスサノオは、リューベックの左舷の船体を電磁防壁で擦りながら進み続ける。
「今だっ! 左舷全火器一斉掃射!」
透かさず真希は、スサノオ左舷の対空砲や機関砲と言った武装で、零距離からリューベックに対して攻撃を行う。そして、その攻撃はリューベックのあらゆる箇所を破壊し、次々と誘爆を起こす。
「そ、そんな…この俺が! 傭兵団のボスが…!」
戦意を消失した乗組員達が、我先に爆発寸前の艦橋から逃げようとする中、ホーキンスは一人動揺していた。
「うっ、うわああぁあぁあぁぁぁ!!!」
そしてホーキンスは、リューベックの艦橋で起きた爆発に雄叫びを上げながら飲み込まれて行った。
『旗艦の撃沈を確認』
「…オルタ、デイフォビア傭兵団の残存艦に対して打電。戦闘は終わった、全艦隊即時に現宙域から離脱せよ。離脱せぬ場合、本艦は残存勢力の殲滅行動に移る」
『了解しました』
スサノオから生き残ったデイフォビア傭兵団の艦艇に対して、真希が先程述べた忠告が送られる。
少しの間があった後、デイフォビア傭兵団の軽空母ジーザスと小型艦一隻は、忠告通りにスサノオから離れて行く。
『敵艦離脱して行きます』
「流石にな…損傷している小型艦と艦載機を全て失った軽空母では分が悪い。そこの所をしっかりと理解していてくれて良かった。よし、戦闘態勢解除、警戒態勢に移行せよ」
『畏まりました』
デイフォビアを退けたスサノオは、戦闘のために展開していた各武装を格納し、目的地に向けて再度進み始める。
「圧倒的に数の不利だったのに、無傷で突破とは…流石スサノオデース!」
スサノオがデイフォビアの主力艦隊に勝利したことに、ナディアは満面の笑みを浮かべて喜ぶが、
「いや、今のは運が良かったのに過ぎないよ」
真希は否定的だった。
「What`s?」
「今回の相手は、あくまでも傭兵団だ。正規軍と比べれば、装備も旧式の物も多しい、艦の規模も少ない。それに、デイフォビアは武装が少ない単独の船ばかりを狙う連中だ。しっかりとした戦闘艦との戦闘経験が殆どないはずだ。だから、今回は勝てたが…もし将来、正規軍並みの武装と規模を持ち、戦闘経験が豊富な相手と戦った時、その時もスサノオが勝てるかは不明だ。慢心はいずれ身を亡ぼす…それを覚えておけナディア」
「わ、分かったネー…」
注意されたナディアはしょんぼりとしながら、真希の忠告をしっかりと覚えておくことにした。




