第11話 救難ポット
研究者達を比較的に近場にあった避難用のコロニーまで送り届けたスサノオは、巡航速度で天の川銀河を航行していた。
そんなスサノオの艦内には、探査先の物の調査研究を行うために設計された研究室があり、そこでは
『…これ、本当に作れるべか…?』
「研究しておいて損は無いと思うが…オルタくんはどう思っているかな?
『この航路は何があるか分かりません。研究をしておいて損は無いかと…』
アルベルタとヨサク、オルタが机の上に置かれている設計図と睨み合っていた。
設計図には砲弾の絵と様々な専門的な単語が書かれている。
『う~む…まぁやれるだけやってみっか!』
「それじゃあ、これはFC計画ということで進めましょうか」
『了解致しました』
ヨサクが賛成したことにより、設計図に描かれている新型砲弾は、FC計画として開発が行われることが決まった。
『しっかし、こんな砲弾よく思いついたなぁ~』
「昔に設計して、政府に提案してみたんだけど、危険すぎるとして却下されたんだよねぇ~…ここだと、そんなくだらない理由で断る人は居ないから楽だ…!」
『……』
アルベルタの発言に、ヨサクは出ないはずの冷や汗が出ているように感じ、内心では『本当に大丈夫だが?』とアルベルタのことを不安に思う。
「それで、早速開発に取り掛かりたいんだが~…」
『んん? 嗚呼、それならオラはやめといたほうがええべ』
「えっ…許可出したの君だよね? なら作れるんじゃ…」
『オラは監督なだけで、修理が専門なんだーぁーよ。物作りの知識もあるちゃーあるが、しっかりしたもんを作るには、やっぱ専門家が1番だ。今呼ぶから少し待っててくれんか』
「嗚呼、分かった」
ヨサクに言われ、アルベルタは担当者が来るまで待つことにした。
『っー…アイツの番号は~…と…』
「っ!?」
『あー、もしもし? オラだオラ。おめーさんにちぃとばかし頼みたいんことあるんだべ。すぐ研究室に来てくれろ……あい分かった。待っとるから早めに来てくれ』
数世紀前のガラケーを取りだしたヨサクに、アルベルタは目を見開いて驚くが、ヨサクはそんなことを無視して、通話が繋がった相手と会話をする。
暫く、アルベルタがヨサクが何故ガラケーを持っているのか、なぜ使えているのかを脳を働かせて考えていると、
『おお、すまんすまん遅れてしもうたわ!』
そう言って研究室に入ってきたのは、緑色のボディをしている人型のロボだった。
「君が…?」
『おうよ! 俺が開発専門ロボ、デイムよ!』
デイムは胸を張り、自信満々にアルベルタに自己紹介をした。
「それじゃあ、早速取りかかろうか!」
『おうよ! こんなの俺に掛かりゃあ朝飯前よ! あっちゅうまに作り上げて見せよう!』
「……ここのロボって、個性的な子が多いね…」
アルベルタはスサノオに乗艦しているロボ達の個性について呟きながら、方言で喋るデイムと共に新型砲弾の開発に取り掛かった。
その一方、スサノオの艦橋では、オルタに代わってスサノオを操舵している真希と、艦橋から宇宙を見ているナディアが居た。
「まさか、ウォルフ1061の第71コロニーまで引き返すことになるとは、思いもよらなかったネー…」
「仕方ない。惑星にせよ、コロニーにせよ、ゾンビパンデミックが広まっているんだ…自然的に、感染しているかもしれない外部の人間を受け入れている所も少なくなる…まぁ、そこまで急がなくていいんだし、助けれる人は助けて行こう」
「了解ネー!」
景色が移り行く中、スサノオは真っ直ぐと進む。
数時間後、昼食を摂りながら真希がスサノオを操舵していると、
「なんだアレ…?」
宇宙空間を漂う楕円形の形しているカプセルが見えてきた。
『どうやら、救難ポットのようです。識別は…神聖ジークダルク帝国』
「神聖ジークダルク帝国か…コールドスリープ中に、ワームホールに飲み込まれて、ここまで来たといった感じか…? オルタ、回収するぞ」
『了解。回収作業に移ります』
「えぇ!? 危険じゃないデスカー?!」
真希の判断にナディアは驚く。
ナディアの驚きは無理もないだろう。何しろ、神聖ジークダルク帝国は、国名や政治体制を変えながら、2度も地球政府に大戦を仕掛けてきた星間国家である。そのため、地球政府に所属する多くの者達が、ジークダルク帝国人=戦闘好きの狂犬といったイメージを抱いており、そのような者を保護すると言ったら、地球政府の者なら驚く者が多いだろう。
「親衛隊か軍人だったらな…民間人の可能性もあるため、あれは回収する」
ナディアの心配を装いに、オルタはポットまでスサノオを近づける。そして、艦下部にある採取大型物資格納庫のハッチを開き、そこから多関節ロボットアームを出した。そして、そのアームでポットを掴み、そのままポットごと、アームを格納庫へと戻す。
『救難ポットの回収完了』
「よし…オルタ、航宙艇格納庫にポットを運んでくれ。そこで確認する」
『畏まりました』
ポットが回収された後、真希達は艦橋からポットが運ばれているであろう格納庫へ向かう。
真希達が格納庫にやってくると、八咫烏の隣に回収された救難ポットが置かれていた。
「…ダメか」
ポットを見た真希は、ポットの特殊ガラスで内部を見ようとするが、ガラスが凍りついていて見えなかった。
「作業用ロボとナディアは下がっといてくれ、俺が開けてみる…」
「き、気をつけてくださいネー…!」
真希とナディアはそれぞれの銃を手に持つと、ポットを再起動し、ハッチを開けた
「……取り敢えず、軍人や親衛隊ではなさそうだな…」
ハッチを開け、ポットの中に居る者が、服装から軍人ではない白銀の長髪の女性だということが分かり、真希は肩の力を抜く。
「……うん。この子は、アイルス人ね」
「ッ!?」
いつの間にか隣に立っていたアルベルタに、真希は声は出さなかったが、目を開いて驚く。
「取り敢えず、コールドスリープは解除されているはずだ。急な容態の変化にも対応できるよう、医務室に運ぼう。オルタ、手配してくれないか?」
『畏まりました。すぐに看護用ロボを向かわせます』
暫くすると、格納庫にタンカーを持った2体の人型ロボが現れ、手際よく救難ポットから女性をタンカーに乗せると、そのまま医務室へと女性を搬送して行った。
「真希く~ん。頼みたいことがあるんだけど~」
「……」
自身の肩に片手を置いたアルベルタの頼み事の内容に大凡の目星が立っていた真希は、少し溜息を吐くと、
「あの救難ポットの解析したいというのであれば、ご自由に…但し、いつでも再利用できるようにはしといてください」
条件付きで神聖ジークダルク帝国製の救難ポットの解析を許可した。
「分かってる~! 大鳳くん、これ研究室まで運んで~!」
『畏マリマシタ』
上機嫌になったアルベルタは、作業用ロボの大鳳にポットを持ってもらい、研究室へ戻って行く。
「さてオルタ。スサノオ進路変更、目的地アンドロメダ銀河」
『何故でしょうか? もう間のなくすれば、天の川銀河を脱出することができますし、アンドロメダ銀河は反対側に位置しますよ?』
「確かにその通りだが…あの子は確実にアンドロメダ銀河から来た…神聖ジークダルク帝国の領域は無理だろうが、せめて共連地域には送り届けた方が良いだろう? 目覚めたからこんな天の川銀河の果てで、1人で戻れというのは過酷だろうしな…」
『分かりました。目的地をアンドロメダ銀河地球政府統治地域に再設定します』
女性のことを考え、真希はスサノオを反転させて惑星ライラーとは反対方向にあるアンドロメダ銀河の地球政府が盟主となっている大宇宙共栄連盟、通称共連の地域へと進路を取る。
「とても遠回りの旅ネー…」
「まぁ…その遠回りで、色んな仲間を集められると思えば、お釣りが来る程だ」
「他にはどういう人が来て欲しいと思ってるんですカー?」
「そうだな……操舵手と砲雷長、後は…俺に何かあった時、代わりに艦長として務めてくれる者かな?」
真希は指で人数を数えながら、欲しい人材を上げて言った。
「どれもオルタが入れば、何とかなりませんカ~?」
『いえ、私も万能ではありません。もし、制御室に何らかのダメージを受け、機能を停止した時は、手動で艦の運航をやらなければなりません。それに私はあくまでサポートがメインですので…』
ナディアの質問にオルタが答える。
「そういうことだ。オルタ…いや、AIやロボに頼ってばかりでは、人類はあっという間にダメになる。人とロボ、お互いが協力し合う世界が1番良い世界だ。そうしなければ、不安が溜まったとのロボの戦争がいつか起きるからな」
「確かにその通りネー! 皆仲良しが1番良いデース!」
『……』
真希の言葉にナディアが笑みを浮かべる中、オルタはかつて真希と似たような言葉を言っていた男のことを思い出し、その姿を真希に重ねる。
「……それじゃあオルタ。俺はトレーニング室に行って、軽く運動してくる。何かあったら報告してくれ」
『……っ分かりました。そのように致します』
真希からの声掛けにハッとなったオルタは、少し取り乱しつつ、了承する。
「それじゃあ、私は貰った天文学の本でも読むことにするネー!」
真希がトレーニング室に向かった後、残されたナディアは本を読むために自室へと戻っていく。




