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鎮座!こけし (中)

『ごめん!羽野、お前に借りたこけし、どっかに落としてきちった』


『でも俺今日、学校早退するから探せないんだよ。だからさ、今日中には返せないわ。マジでごめんっ!』


『でも絶対学校のどっかにはあるから!…じゃあ俺もう行くわ』


悪意があると言えばあるように聞こえるし、ないと言われたらないように聞こえる。


先入観とは偉大である。


羽野は家に帰り、部屋で中学校からの友人である、お調子者の言った言葉を思い出していた。


(実はけっこう嫌われてたりすんのかな)


ひとまず、目を閉じて眠ることにした。


(…見せてって言われたの、けっこう嬉しかったんだけど)


どうせいつものお遊びだろう。


(そもそも、撮影にこけしを使うのも変な話だよな。なんで信じたんだ過去の俺)


この単純な性格を、どうにかしてやめたいものだ。


◾️


こけしのことはこけし好きに聞くのが一番だろう。

そう思い、芥津門は翌日羽野に尋ねてみることにした。


(どこにいるんだろうか。クラスへ行けたらいいんだが…片っ端から行くしかないか)


現在は昼休み。放課後は彼にも予定があるかもしれないので訪ねに行くなら今しかない。


何年何組だかわからないが態度や保管室へ行くのに迷った様子がなかったため、少なくとも一年生ではないと思い、同学年である二年生のクラスを先に見て回ることにした。


A組———居ない。


羽野の特徴は金髪、短髪、タレ目、つり目だ。


B組———居ない。


そろそろ目線が気になってきた。他クラスを除くのは苦手だ。


C組———居た。


(ラッキーだな)


早めに見つかって助かった。だが羽野は友人と話しているようだった。全員スマホ片手にだが。


(話しかけていいのかこれは)


「昨日のドラマ見た?」

「あー」

「見た見た」

「やっぱヒロインの人めっちゃ可愛くね」

「お前好きそう」

「わかる」


……内容はないようだ。これなら突撃しても構わないだろう。


「羽野耀成、少しいいか」


声を出すとクラスの人の目線がこちらへ向いた。そんなにじろじろと見るものでもないだろうに。普段まともに人と話さないせいか、見られただけで冷や汗が止まらない。実際は感情が体調に出ないタイプなので汗ひとつかいていないが。


「芥津門」


羽野は目を見開き驚いていた。当然だろう、昨日偶然知り合った人に訪ねられるとは思ってもいなかった。


「このこけしに心当たりはないか?」


芥津門は手に持っていたこけしを羽野に見せた。


黒いおかっぱ、赤い髪飾り。胴体は羽野のこけしが着ていたような着物というよりは、ただ模様がついているという感じだった。赤い二本線に大輪が咲いている。


「うーん、俺のじゃないな」


心当たりもないようだった。しかし、彼でなかったら一体誰のだというのだろう。学校にこけしを持ってくる人物がまさかもう一人いるのだろうか。


「一応クラスの奴に聞くか」


さすが推定クラスカースト上位といったところ。これに見覚えがあるか、と呼びかければクラスにいた数名がわらわらと寄ってきた。


「なにこれ、落としもの?やば」

「こけしじゃんね」

「どこにあったの?」

「これ落とすやついるんだ」

「忘れただけじゃね。保管室おいとけば」

「学校に持ってくるやついねーだろ。教師の方が可能性あるんじゃない」


芥津門はじっと発言を聞く。


(一人怪しい奴がいる)


「羽野、この中に映画研究部のお調子者はいるか?」


他の人には聞こえないように小声で話しかける。


「いるけど…それがどうした。あいつだよ」


羽野もその声量に合わせて話す。指で指すと目立つので、顔で軽く指した。


「もしかしたら、あのこけしの持ち主がそいつだ」

「え、や、なんで?」


羽野は困惑している。どうしてそんな判断になったのかわかっていなかった。


「今受け取る気はないようだから、保管室へ持って行くとしよう。迷惑かけたな。ありがとう。では失礼」

「あっ」


素早くこけしを回収して早々に立ち去る。


クラスはぽかんとまだ状況を把握できていないようだった。数秒経ってからざわめきと共に、元いた場所へ戻る。


「なにあの人」


クラスの女子が羽野に聞いてきた。


「さぁ…俺もよく…わかってないんだよね」


聞かれてもそう答えるしかない。なにせ昨日少し話しただけの人だ。


とりあえず話を聞きに放課後保管室へ訪ねてみようと思った。


「もしかして、自称『忘れもの洞察部』?」


会話はまだ終わっておらず、耳慣れない言葉が出てくる。


「なにそれ」

「あっれ、羽野くん知らないの?。割と有名なんだけどなー」

「有名なのか」

「うん。変だからね」


女子は笑って断言した。それについてはそう思う。他意も悪意も何もなく、純粋に芥津門は変だった。


自分のものを取りに行っただけでお礼を言うのはさすがに変だ。ものに対する感情が凄そうだった。

付喪神かなにかなのだろうか。


「落としものの保管室、あるでしょ。そこで、ものを自主的に管理してるのがその部活の人」

「ふーん?」


思い返せば保管室は綺麗だった。一年生の時にも訪れたことはあるがあそこまで綺麗だっただろうか。先生がやったと思っていたが、どうやら違うらしかった。


「よくやるよね。貴重品とか届けてくれるらしいよ」


どんどん周りの人が会話に加わってくる。


「あ、俺それでこの前失くしたつってた財布戻ってきたわ。一昨日ぐらいかな」

「えー良かったね!」

「私、あの人と同じ中学だ。椎さん」

「下の名前?可愛いねぇ」

「いやぁ、あの子一回苗字変わってたからみんな名前で呼んでたんだよね」


段々とゴシップに花開きそうな気配がしてきた。


「複雑なんだ。どんな苗字だったの?」

「それがさ———」


やや興奮気味に話す女子生徒。周りも聞いてなさそうな顔をしているがしっかり耳は傾けている。デリケートな話題は中々ないから聞きたいのだろう。


芥津門が変だということには全面的に同意するが、羽野は人の噂話に参加するのは好きではなかった。


「あ、話切って悪いんだけど。次の授業なんだっけ。課題とかあった?」


羽野は適当にこの話題を終わらせた。


◾️


放課後。


ガラガラと保管室の扉が開いた。開けたのは羽野だった。


「来たのか」


机の上には昼休みに羽野に見せたこけしが置いてある。机の中心に置いてあるのでとても目立つ。威圧感がすごい。


「…気になるからな。で、なんでこのこけしの持ち主がわかったわけ?」

「わかったわけじゃない。間違ってる可能性の方が高い。でもとりあえず話すから一旦出ようか」

「え?」

「向かいの奥の廊下に踊り場があるだろう。そこに行こう。人がいるんじゃきっとお調子者は取りに来ない」


そういうものかと羽野は思い、芥津門と共に保管室から出た。


「うげ、ホコリやば」


第二校舎の三階は基本的に使われない。この階にある教室は『落としもの保管室』、『用具室3』、それに加えて、なんの変哲もない空き教室が三つあるだけなので誰もここまで来ない。


踊り場は意外にも広いが、掃除用具入れのロッカーが角に配置されているだけだった。


袖で口元を覆って嫌そうな顔をしている羽野を見て思う。


(羽野はハウスダストに弱そうな顔をしているもんな)


偏見である。


(花粉症とか酷そうな顔つきだ)


全くもっての偏見である。


こう見えて芥津門はかなり独断と偏見が大好きだ。

なんならゴシップも噂話も好きだ。


「さて、なぜこけしの持ち主がお調子者だと考えたかの理由だったな」


廊下、というよりは保管室の前を観察しながら話し出したので、羽野もその後ろで話を聞こうと移動した。

後ろに控える羽野を見て思う。


(本当にちゃんと話を聞こうとしてる…)


実は、それを聞きにここまで来るとは思っていなかったのでかなり意外に思っていた。だが、聞かれたら答えるサービス精神はあるし、こけしと友人のことだから気になっているのだろうと意を決して口を開く。


「話しにくいから、私の考えは合っているという前提で話そう。C組の人にこけしを見せたときのクラスの反応を覚えているか?」

「あー、なんとなく」


あまり自信はなさそうだった。


「そうか。私の覚えている限りではこう言っていた。

最初に女子。“なにこれ、落としもの?やば”

その近くにいた女子。“こけしじゃんね”

女子“どこにあったの?”

男子”これ落とすやついるんだ“

映画研究部のお調子者”忘れただけじゃね。保管室おいとけば“

その隣の男子“こけしを学校に持ってくる変人いねーだろ。教師の方が可能性あるんじゃない”

とな」


言い終わると羽野は信じられない顔で、若干引き気味で芥津門の顔を見た。


「なにか?」

「……いーや。なんでも」


話の続きを促す。


「私が先にわかったのは、持ち主がどの発言者かだ。正直、映画研究部部員だとは思っていなかった。ついでに聞いたら偶然その人だっただけだな」


芥津門は話を続ける。


「ひとつずつ私の考えを言うと、最初と次の発言は誰かがこけしを落とした、という驚きが大部分だった」


「その次は場所を聞いて自分の記憶を探るために聞いたのだろう。次の男子生徒はただの感想だな。今挙げたどれも、それ以上の意図は見受けられない」


「一旦お調子者は飛ばして、最後の発言者——図らずとも羽野を地味にディスっている人は…」

「言い方あるだろ」


言葉を挟むところではないが、口は滑ってしまった。ちらっと引かれていないか顔を見てみるが、芥津門は特に気にしていなさそうだった。その動じなさに少しホッとする。


「感想というより意見だな。その点では映画研究部部員の発言と同じだ。違いは私の行動を示したものかどうかだけだ」


「私が怪しいと思った点は、これまで話されていた”こけしは落としもの“という認識を”こけしは忘れもの“とわざわざ言った上で、保管室というこけしの置き場所指定したところだ」


「今まで挙げた発言の中で一番、発言者の額縁通り以外の意図が見える」


「人は言われたことを無意識に受け入れ、選択肢に入れることが多いからな。この発言は後で自分が取りに行くための誘導とも言える」


芥津門の言ったことは全て、そう言われたらそんな感じ、という推論だった。


「深読みし過ぎじゃね…?」


とも思ったが、誰かの足音が遠くから聞こえてきた。芥津門が一心に廊下を見る様子から、どうやら答え合わせの時間が来たようだ。


落としもの保管室。その扉に手をかけたのは———

映画研究部のお調子者だった。


「遠くてよくわかんなかったけど何か持って行ったな…」

「私の推理は当たっていたようだ。いや、洞察といった方がいいかもな」

「なんの違いだよっ……はぁ」


羽野のため息は”うわ〜またツッコミしちゃった〜“の類だろう。さっきも同じような迷いを見せていた。ここまできたら好きなことを言えばいいのにとも思うが、友人でもない芥津門が言うことではない。


無視をするのが羽野のためかと思い、話を続ける。


「うん。持って行ったのはこけしと前提して…尾行するか」

「何に対しての”うん“!?」


彼の関西魂は繊細なようだ。


普段からお笑い好きやツッコミを担当したくなるのを隠そうとしているのだろうが、本当に隠せているのか怪しい忍耐力だった。


(それはそれとして面白い)


「急ぐぞ、見失ってしまう」


映画研究部のお調子者はすでに階段を降りた。

二人は気づかれないように階段を降る。


「なんで尾行すんの。君の仕事は届けたら終わりじゃない?」

「こけしを撮影するかどうか見たいからだ」


羽野の疑問に答えるように言う。


「そんなに見たい…?」


撮影はそれほど楽しいものではない。前に古戊留がドラマを撮っているのを見たことがあるが、好きでなければ退屈するような現場だった。芥津門に興味があるとは思えない。意外と好きなのかもしれないが。


「別に撮影に興味があるわけじゃないが…羽野は見たくないか?本当に撮影のためにこけしを借りたのかわかるぞ」


それは芥津門にとってなんの意味も成さない。好奇心が強いのかと思ったが、違う。なら羽野にわざわざ見たくないか、とは聞かない。クラスに来たときのように何も言わず自分だけで行動するだろう。


「…あ〜尾行するって言ったの、俺がいるから?」


今のところ羽野は、友人から撮影を口実にこけしを失くされたという立場にいる。お調子者の意思と真実はともかく、この状況は羽野の気分を害するには十分だ。


「やめておくか?」


ならばせめて、こけしを撮影に使うことが目撃できれば、悪意あって羽野のこけしを借りて失くしたわけではないということが証明できる。


芥津門なりの関わった者としての気遣いだろう。


「いや、はは。見るよ。見る」


(笑われてる…出過ぎた真似だったか?)


少なくとも、からかわれているような笑い方ではなかった。


「はははっ」


まだ笑っている。笑いのツボが浅い。段々と体が崩れ落ちてついにはしゃがんでしまった。


(話変えよ)


「そういえば映画研究部部員の名前はなんて言うんだ?」


第二校舎の一階。先ほどまで二階にいたのでそこまで歩いていない。またもや二人は廊下の隅から部室の前を見守っていた。


完全に不審人物で不思議な組み合わせなので人が少なくて助かった。


「あ〜古戊留疎( こぼる   うと)だよ」

「古戊留…中々に珍しいな」

「芥津門も相当じゃないか?」


古戊留は一階の映画研究部の部室へ入って行った。芥津門はよくこの廊下を通っているが、あまり周りを見ていないのでここに部室があるとは知らなかった。


「出てきたぞ」

「大荷物だ」


古戊留は黄色のプラスチック製の箱を持って部室から出てきた。中はよく見えない。


「移動したな。追うか」

「よしきた」


羽野は尾行が楽しくなってきている。

腐っても男子高校生である。

そこそこ長い廊下を通り、古戊留は外へ出た。向かったのは人の多い本館ではなく、比較的少ない第三校舎だ。


「本館に行くとかじゃなくて良かった」

「遠いしな」


第三校舎一階。第三校舎だというのに第二校舎より人は多い。芥津門は意識的に羽野から離れる。


『理科準備室』前で何やらコソコソしているのは古戊留だった。明らかに周りを気にしており、尾行をしてる二人より怪しさ満点の風貌だ。


「すごい周りをチラチラ見てるな。これだけの近さだったら箱の中身が見えそうだ」

「あれに小道具入れてんじゃね。撮影いつもスマホでやってたし」


言われて納得した。確かにそうだ。さすが映画研究部といったところだろう。


「にしても何を撮影するつもりだ?他の部員もいない」

「そういえばそうだな」


周りに人はいない。映画を撮るのであれば登場人物が必要だが、ここには彼しかいなかった。


「ん、なんか箱から取り出したぞ」


隙間から茶色の長細い物体が見えた。だが遠いこともあり、すぐにそれがなんだかはわからなかった。


「あれは…」


細かなところは見えずとも、シルエットはしっかりと捉えられた。

円柱の上に円に近い楕円形がくっついているそれは———


「「こけしだ…!」」


古風なこけし。保管室の廊下にあったこけしで間違いない。こけしの持ち主は古戊留だ。


次々と小道具を取り出して、スマホを見ながら配置していく。


人が出てくる気配はない。


「…私はずっと映画研究部というんのだから、人が出演するものを想像していたんだが…」


配置し終えたかと思えばスマホを固定し、画面を押した。動画を撮り始めたかと思えば小道具であるこけしを動かし、またスマホの画面を押した。

それを何度も繰り返す。


人が出てくる気配はない。


古戊留はひたすらに微調整からの撮影を繰り返す。


「これはコマ送り動画、ストップモーションムービーとかいうやつじゃないか?」


「子ども向けアニメにたまにあるやつか」


画像を繋ぎ合わせて一本の動画にする。アニメーションも映画の一つであり、ストップモーションムービーも一つのジャンルである。


「ずっと人が出るドラマかと思ってた」


羽野も同じようなことを思っていたようだ。

やはり先入観は偉大である。


彼はたぶん羽野のこけしを被写体に、映画の登場人物にしようとしていた。小道具でも嫌がらせのための借りたわけでもない。


「ということは…」

「古戊留は普通にこけしを撮影したかった、だな」


真相は意外と単純だ。


(正直最悪な奴だと思っていたので、とても申し訳ない。せめて心の中だけでも陳謝しておこう)


「…ふぅ」


羽野は自分が嫌がらせにあっていないと知り、ホッとしたようだった。


「羽野、ちょっと話しかけてきて。忘れもの保管室で詳しい話を聞こう」


まだ、芥津門が一番気になっている部分。なぜこけしは直立していたかの問題は解決していない。


◾️


忘れもの保管室で三人は席に座って話していた。


「このメンツで話すとかウケる…」


そう言うが、どう考えてもウケていなさそうなのは映画研究部のお調子者だった。むしろ気まずそうに目を泳がせていた。二十五メートルが余裕そうなほどに泳いでいた。


「で〜、わざわざ呼び出して話したいことってなに。こけしのことだったりする…?むしろそれしかないってカンジ?」


古戊留と芥津門が対面して話すのは初めてだった。クラスで見たが、見たともいえないほどに顔を一切憶えていなかった。


(さすが羽野の友人。ハッキリとした陽キャ)


髪こそ染めていないが、バチバチに耳に穴を開けていることが怖かった。見た目はヤンキーに見えないこともない。もちろん校則通りに制服を着ることはなく、ブレザーを着る代わりにパーカーを着ていた。


ネクタイすらしっかりできていない芥津門は校則違反に対して何も言えない立場だが。


「こけしはこけしについてだ。最初に自己紹介と謝罪をしよう。私は芥津門椎、先ほどまで古戊留を尾行していたことを謝罪する」


(あと、性格悪いやつだと思っていたことも)


「え、マジ?全然気づかなかったわ。芥津門サン上手いね〜」


その軽いノリは本当に何も気にしてなさそうだった。


「俺も初めまして、羽野から聞いてると思うけど俺は古戊留疎ね。珍しい名前でしょ〜」

「そうだな」

「芥津門サン噂には聞いてたけど、こんな人だったんだね」


古戊留は珍獣を見るかのように芥津門を見る。さすがにその視線は居心地が悪いので、羽野に会話をパスした。もちろん古戊留は今までの経緯を知らないので、羽野の口から説明する。


羽野のこけしを古戊留に貸して、故意に失くされたと思ったこと。そしてそのこけしを拾ったのが芥津門であり、今回の古戊留のこけしも彼女が拾ったということ。そして本当に故意に失くしたのか確かめるために尾行していたこと。


「だからこんな珍しい組み合わせなワケね」


古戊留は合点がいったと頷いた。


「疎、疑って悪かった」

「何何、羽野、お前真面目なん!?どちらかっつたら謝んの俺じゃね?こけし失くしちゃったし…」


こそばゆそうに困った顔をして思い切り頭を掻いた。


「しゃあないよ。俺中学のときやらかしてたし。人は中々変われないっていうし、過去やっちゃたことは消せないしね」


一体何をやったのだろうか。気にはなるがそれを聞くのは無礼だろう。


「羽野、謝ってくれてありがとね。俺からもごめんよ」

「大丈夫、許してる」


どちらも恥ずかしいのか小声だが、誤解は解けた。これぞ友情というやつだろう。


芥津門には遠く、輝かしいものだった。

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