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シャワーの憂鬱

作者: のんきや

 シャワーは、悩んでいた。

 シャワーの仕事といえば、洗い流すこと。泡だらけの身体も、汚れた服も、ボナ---この家の主である---のもさもさ頭も、なんでもジャージャーと洗い流す。もちろん、風呂桶(バスタブ)を洗い流すのも、洗い場を洗い流すのも、お手の物である。

 だがしかし。

 シャワーは、ジャージャーと洗面器を洗い流しながら、思った。

 ひとつだけ、どうしても、洗い流せないものがある。強く吹いてみたり、ぐにゃってみたり、いろいろ頑張ってみたが、どうしても上手く行かない。

 無論、洗い流すのが得意なシャワーでも、遠くにあるものは、どうにもならない。それは、重々分かっている。蛇口から離れて出かけることなんてできやしないのだから。

 だから、遠くのものを洗い流せないのは、別に問題ない。

 問題は、「届く距離」にあるのに、流せないものがあることである。極々手近な、もっとも近いところにある、とても重要なもの---自分の頭の部分(シャワーヘッド)である。

 洗い流すのが仕事だというのに、自分の頭とその根元部分は、どうしても流せない。いろいろ頑張ってみたが、どうあっても、届かない。

 ああ、なんて情けないんだろう。

 シャワーは、そぞろにジャージャーと湯をかけながら、そんなことを思った。

 ざあざあとお湯を気持ちよくかぶっていた洗面器は、そんなシャワーの様子に気づいて、声をかけた。

「おや、シャワー、どうした、何か困りごとかい?」

 洗面器に言ったところで、どうなるものでもないのだが。

思いながらも、シャワーは、目下の悩みを語った。

「・・・というわけで、なんとか、自分の頭くらいは、洗い流したいと思ってね。皆を洗い流すのに、自分の頭が汚れたまま、というのもいただけないし」

「なるほど、なるほど」

洗面器は、ふんふんとシャワーの話を聞いた。気がつけば、洗面器には、いい具合に湯がたまりつつあった。

「まあまあ、少しは、私にもいい格好をおさせなさいよ」

洗面器は、そんなことを言い、そして、不器用ながらもシャワーの頭を洗い流したのだった。


風呂掃除をしていて、突然、ふ、とですね・・・

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