表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
nobody   作者: 福郎 犬猫
そして少女は魔女になる
85/86

剣や魔法ではない力2

「やはり、あの男は好かん」

ガスパールは吐き捨てるように言った。あの男とはミッテランのことであり、真面目なガスパールにとっては不正をしていた人間を頼るのは面白くないのであろう

そしてこの場にその本人はおらず、ベルトランのみであった

「落ち着きなよ、貴族の力は必要なんだ。それに我々と交渉の席にすんなり応じるのはあの男くらいだ」

「それはわかっているが、あいつは罪をおかしているんだ。ああも堂々と日に当たる場所にいるのはな」

「皆で決めたことだろう。それに君、口では全く歯が立たなかったのだから大人しくするしかないんじゃないかい」

「な」

誂うように言うベルトランにガスパールは驚いた。この目の前の同期も同じ思いだと思っていたからだ

「どちらにせよ、もう我々に手段を選ぶ猶予はないんだ」

ベルトランは遠くを見ながらつぶやいた。その様子にガスパールも不平を言っても仕方がないことを理解したようだった


「お疲れ様でした」

クリストフはアレクサンドリーヌの自室で部屋の主に対してそう言った

「難しいものなのね。今までお兄様に任せきりだったからその報いね」

「いえ、陛下は立派に責務を果たしておられます」

クリストフは他国との会談以降、アレクサンドリーヌのことを陛下と呼ぶようになった。このように人目のない場所でも変わらずにそう呼ぶ彼にアレクサンドリーヌは好ましくは思わなかった

「無理に褒めなくてもいいわクリス、私には力がないのだから」

「いえ、そんなことは」

クリストフには大丈夫とは言えなかった。アレクサンドリーヌには王の力がない。それを国民に悟られてはいけない。それに既に他国の者にまで知られている。これは今後他国との交渉が大きく不利になることになるのは今更言わなくともアレクサンドリーヌが理解していることくらいわかっていたからだ。

その背景もあり、ミッテランに頼らなければならなかったが、彼を信用することは難しい

「それよりもクリストフ、貴方は変わりましたね」

「どういう意味で」

「そうね、落ち着いたように見えるわね。今日だってほとんど口を開かなかったし」

「私が口を挟んだところで時間の無駄ですから。それにああいうのはベルトランに任せておけばいいでしょう」

アレクサンドリーヌはふふと軽く笑った。クリストフから人に任すという言葉が聞ける日が来るとは思っていなかったからだ

「だから、私は私のすべき事に専念します」

「そう無理はしないでね」

「無理など、それよりも私は陛下の方が心配です」

「私こそ心配する必要はないわ。あなたがいてくれるのでしょう」

「え、はい」

クリストフは歯切れ悪く返事をしたが、それは彼が口から言ったからではなく、初めてアレクサンドリーヌから側にいて欲しい旨を言われたからだ

「これからは私もしっかりしなくてはね。この国のためにも」

「はい、私もお供します。陛下のためなら何でもする所存ですね」

「大げさね」

アレクサンドリーヌはまた少し笑った

「いえ、本心です」

クリストフの瞳は真剣だった。それにアレクサンドリーヌは嬉しくもあり、何処か寂しい気持ちになったので

「では、私のことを昔のようにアレクと呼んでもらいましょうか」

そう言って真面目な彼が困ったような顔をするのを少し愉快に見ることにした


マティアスは今ノルベルトの家にいた。ノルベルトの持ち家などの財産は全て国が管理することとなっていた。なぜそうなったかというと彼からソーニャ、フェリシア、ジュリアンへ宛てた手紙がこの国を去ってから1週間ほど経った時に送られた。彼が事前に手配したものであった。その手紙の内容はこの国に戻らないことを詫びたものであり、自分の財産や研究は全て国に返すとしたものだった。無論彼は実の娘の忘れ形見であるテオドルスと共にいるためのものだったが、結果として遺書になってしまった

特に学院からは研究の譲渡されるよう強い要求があったが、ジュリアンがノルベルトの意思を汲んで国で管理する方針となった。なぜノルベルトが研究内容まで国に託したかのは定かでない。もしそれに異論を言うことができる者がいるとするのなら血の繋がりこそないがテオドルスだけなのかもしれないとマティアスは思っている

最初はマティアスやフェリシアが暇があれば遺品の整理などをしていたが、次第にマティアスが入りびたるようになった。マティアスはノルベルトが残した研究を引き継ぐ形となっていた。無論世話になった恩人を思ってのことというよりかは自分のためである側面が強かった。

フェリシアとテオドルス

マティアスから見れば二人は騎士団の後輩こそあれど、友であり対等だと思っていたのだ。その思いは今も変わらないが、自分が2人に遠く及ばないことは痛感していた。マティアスも他の者たちと同様に天使や魔人と戦う術を持たない。そこですがる思いでノルベルトの研究内容を見た。例え2人と並んで戦うことは出来なくとも同じ戦場に立てるよう願って

ノルベルトの書斎の中には多くの資料や彼がまとめたであろう研究内容があった。その多くはやはり魔術のことであり、一般魔術からフェリシアが使用する詠唱式、テオドルスが使用する刻印式など幅広く記載されていた。その中で特に目についたのが、魔力そのものの行使についてだ。彼の手記によるとテオドルスの母親であり、ノルベルト娘であるレオノール・クレマンはフェリシアと同様に魔術だけでなく、魔力そのものを操ることができたそうだ。魔力の行使は本来不可能なものである。ただ行使するだけならそう難しくないのだが、魔力を操ることは奇跡に近いとされていた。行使できるフェリシアとレオノールに関しても人並み外れた魔力量により、魔力切れで死ぬことはないが操ると言えるものではないと記されているが、そこには魔力そのもの行使は如何なる魔術をも凌駕するとあった。

マティアスはそれが自分の手に余るものであることを承知の上でノルベルトの手記を読む日々が続いた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ