幕間 女神の慈悲
「悲しいわ、アルマロス」
チャミュエル、ハスデヤそしてアルマロスが片膝をついて頭を垂れるその先にいるのは1人の少女だった。その少女はまるで玉座のような椅子に座り、片手にはその少女の身長を超えるつえを持っていた。
少女の姿はすべての天使たちと同様に髪は金色で瞳は深い碧色をしていた
「申し訳ありません。貴方様から頂いた名を穢してしまいました。」
アルマロスはより深く頭を下げる。クリストフとベルトランによって切り離された両手は元通りになっていた。その彼の様子はクリストフ達と敵対したときの様子とは大きく違うものだった
「貴方達の中で名前の有無を気にしているようだけど、そんな者がなくても貴方達は等しく私の子なのだから」
アルマロスは頭を上げないが、彼の体は少し震えていた
「それに今回のことは怒ってはいないの。理、剣2人の王、そしてペネムエの娘が現れたのだから仕方がないことよ」
「それでも私は聖剣まで使用して」
「聖具の使用なんてどうでもいいことなのよ。そんなことよりも今回5人の子が失われたのよ。それがただ悲しいの」
国では天使を死を嘆いているが、少女の表情は微笑みが絶やされることはなかった
「3人ともお疲れ様、もう下がってもいいわ」
アルマロスは釈然としていない様子だったが、ハスデヤに促されて二人は立ち上がる。チャミュエルだけは動く素振りをしなかった
「あら、何かあるのチャミュエル」
「お聞きしたいことがあります」
「いいわ、2人は戻りなさい」
ハスデヤとアルマロスがその場を離れたあと、チャミュエルが口を開く
「マニウス様のことはよろしいのですか」
「そうね、あの人が力を身に着けて一年もしない子供に殺されるのは、少し驚いたわ」
チャミュエルには少女の瞳が少し揺れたかのように見えた
「結局あの人も、私を裏切るのね」
「マニウス様はそのようなことは」
「もうすぐ全てが終わるのだから、今更これくらいのことで怒りはしないわ。それよりも貴方の聞きたかったことは別のことなのでしょう」
チャミュエルは言うか戸惑っていた。だが己の中の違和感を拭うことを優先させた
「本当に人は滅ぶに値する存在なのでしょうか」
「チャミュエル、貴方はおかしなことを言うのね。まるでペネムエみたいだわ。初めての子はそういうものなのかしら」
「いえ私は貴方様の忠実な下僕です」
「ふふ、貴方達にそこまでのことは求めていないわ。チャミュエル勘違いしてほしくないのだけれど、人が滅びるのは1000年前から既に決まっていることなの」
「我々が手を下す必要はないのでは、それにもし貴方の力があれば」
「人にそんな価値はないわ。人は誰の手であろうと滅びるべきなの、だからせめて私達で少い苦しみで手を下してあげましょう」
「人はそれほど無価値なのでしょうか」
「あら、共に手をとり抗う姿に感銘でも受けたのかしら。確かにこういう状況で人々は助け合い、支え合うこともあるわ。でもねそれは一時だけの話なの、人はね結局は痛みを忘れる生き物なのよ、そこから学びはしないの」
少女の瞳から色が消えたかのように見えた。もう800年ほどチャミュエルは少女に仕えてきたがそのような姿を見るのは初めてだった
「だから、慈悲を与えるということですか」
「そうよ、貴方も長い間見ていたでしょう。不都合な事実から向き合わず、次の代に押し付けて次第には本当に忘れ去られてしまった。今の状況になることを選んだのは人自身なのだから。ましてや己の欲を優先して自分たちでは争いあったのだから」
「だから滅びてもいいと」
「それが人が選んだ運命なのだもの」
「それでも慈悲を与えると」
少女はチャミュエルに優しく微笑んだ。チャミュエルに少女の真意を全て汲み取ることは出来ない。そのように作られていないからなのか、それとも少女が望まないことなのかすらチャミュエルにはわからなかった




