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nobody   作者: 福郎 犬猫
そして少女は魔女になる
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傷を癒やす暇もなく4

会談はもう間もなく終了するのだろう

張り詰めていた空気が徐々に緩んでいくのをフェリシアは理解した

(ツルギ)の国への金銭による領土変換、(アカシ)の国からの金銭による復興支援、明かされる女神、魔王の存在、5カ国による会談、他国への使者はフェリシアとなること

あちらの様子を伺うにこれで話すべき事柄は終了したのだと、ただそれでは納得できないことがいくつかあった。それはフェリシアだけでなかったようで、今回一言も発さなかったクリストフが口を開く

「お聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか」

「ええ、構いませんが」

「ありがとうございます。貴殿ら方天使、魔人とする存在が人類の存在が危ぶまれるということで間違いないのですね」

「はい、少なくとも我々はそう考えています」

「では、その対抗策をお聞きしたい。フェリシアがこの国を離れてしまうと我々に対抗する術がない。天使でさえ純粋な武芸ならともかく聖剣と呼ばれた特殊な武具にはまるで歯が立たなかった。王に頼らざるとも戦うことはできないのか」

彼の言葉には以前までの彼を知る者の方が驚いたことであろう。それに反して彼を良く知らない明、剣陣営は冷静に彼の問に答える

「申し訳ないが、我々も模索している最中でして」

「テオドルス殿が使用した魔剣というものはどうなのでしょうか」

「それについてはレイ頼む」

始めに名乗りこそしたが、口を開くことのなかったレイという女性がダルンに促されて説明する

「我々も魔剣ないし刻印術の研究を現在進めておりますが、現状難しいというのが判断をしています。そもそも魔剣は魔術への理解があるものでないと効力を発揮させることはできません。それに我々の魔術では聖剣、聖槍の効力には及びません。魔剣のような武具は剣、魔術両方に精通している人間でないと意味はないでしょう」

「それでは有効な術はないということか」

「ええ、そういう都合の言い新技術はありません」

レイの言葉に緩み始めていた空気が重くなる。

「王に頼るしかないと」

「いえ、そういうわけではありません」

ジギが慌てて会話に入る

「少なくとも我々はそう考えておりません。魔人は個別な特殊能力は一つのみです。それに天使は特別な武具を扱える者は少数です。各個撃破は不可能でも、情報、戦術、人員が揃えば太刀打ち出来るはずです」

「言うには容易いが、そんなこと」

「やらなければ滅びるだけですな」

ダルンが言い切る

「伝承にある通り女神と魔王は王でも及ばないだろう。残念ながら我々に出来ることはそう多くはない。だからこそそれに準じるしかないのだ」

「それもそうですね」

「それにブレイズ王は今後この国を拠点とするそうだ」

「女神と魔王が直接攻めてくることは」

「王達の判断ではあと3年の猶予があるそうだ」

「なにを根拠にそんな事が言えるのですか」

「それは分かりません。だが王たちは魔王についてはそう断言しておりました。」

今ここで確かなことはないと言うことなのだろう。クリストフ達はそのことについて言及はしなかった。

情報の共有が全て終わるのを見計らってフェリシアが尋ねる

「あの、テオはいま何処にいるんですか」

ジギは少し可笑しそうに答えた

「今は明の国にいます」

「そこで何をしているんですか」

「刻印術を研究と王たちで今後の方針を固めていることでしょう」

「そうですか」

フェリシアの質問による答えは彼女の満足の行くものではなかった。それでも彼女はこれ以上何も聞くことが出来ないのは、きっとテオ本人に直接尋ねるしかないと判断したからだ 


会談はこれで終了となった。理の国陣営を残して使者たちは、王城の使用人に案内させて王城へと向う

「ジギ殿、どうゆうつもりですかな」

ダルンがジギを落胆するかのような目でみた

ダルンが尋ねているのは領土変換について譲歩したことについてだ。情報と王の力という絶対的な力があるのだからもっと有利にことを進めることが出来たのはジギも十分理解していた。領土変換の約束を取り付けたといっても、多額の負債を抱える形となった

「同情なのか知らんが、貴殿の判断一つで簡単に民は死ぬということを忘れてはいけない」

「ですが、この時勢で自国の利益だけを見ても仕方がないでしょう。それに我王の命です」

「それでは仮に我らが勝利したとして、その多額の負債はどうするつもりなのかな。まあいい、幸いまだ正式な書状を交わしたわけではない。もっと未来を見据えなさい」

ダルンは案内された部屋に入っていく

「私はあんたの判断そう悪いものだとは思わないよ。だけどまあ、ダルン様の言うことも気に掛けた方がいいんじゃない」

レイもジギを気に掛けそれだけ言って、ダルンの後に続いた。その彼女の言葉にジギは余計に惨めな思いになった

テオドルスがジギを使者として選んだ理由はジギに検討がつかない。そもそも人生の長い時間を王城の使用人として過ごしていたのだ、多少の情報に精通していたとしてもそれだけでは不足したと痛感せざるおえなかった

「ジギ」

オルティノがジギの名前を呼んだ

「大丈夫だ、皆も済まなかった。俺は大丈夫だ」

「ならいいが」

ジギは自身への失望と同時にテオドルスが自分を信頼してこのことを指示したのならそれに応えたいという強い思いもあった。武力において彼に出来ることはほとんどないのだろう、それでも彼の役にたてるのならその与えられた役割に準じるのだと

ジギは仲間たちに部屋に戻ることとあとは好きにしていいと告げて、その場を去った。ソラスもまたどこかに姿を消した


「フェリシア君、君はもう下がっていいよ。部隊室に戻りなさい」

フェリシアはベルトランにそう言われて、部屋を出て部隊室を目指しているとルードウィク、ロゼッタ、オルティノの姿が確認できた

「来たか」

ルードウィクがフェリシアに気づくと近づいてくる

「どうしたの」

「俺達さ、もう自由にしていいんだとさ。そしたらオルティノがお前たちに礼を言いたいとさ」

「当然のことだ。俺と息子が今も生きていられるのは、テオだけのものではない」

「ええと、つまり」

「フェリシアがマティアス達のところに行くのなら一緒に連れてって欲しいってこと」

「私は別にいいけど、大丈夫なのかな」

不安に思うフェリシアをルードウィクが強引に押し切った

部隊室に向う道中フェリシアが尋ねる

「みんな、元気なのかな」

誰がと聞くことは出来なかった

「テオは元気だよ」

「そっか、オルゲンさんは」

オルティノが何かを言おうとする前にルードウィクが

「死んだよ」

「え」

「じいちゃんは天使との戦いで死んだ」

そう答えたルードウィクは特に気にしている様子はなかった

フェリシアは彼のことを詳しくは知らないが、少なくとも以前会ったときはもっと無邪気な印象があった。今も言動の変化はあまりないが、彼の醸し出す雰囲気はまた別のものとなっていた。それだけに自分の知らないところで彼らに多くのことがあったのだとフェリシアが理解するには十分なものだった


フェリシアとベルトランが部隊室を出て、しばらくは調査隊の面々は好き好きに過ごしていた。普段とは違う様子の者にマティアスが耐えられなくなって声をあげる

「ラウルどうしたんだよ、さっきから静かにしてさ」

「急にどうしたマー坊。俺はどうもしてないよ」

普段とは種類の違う作り笑いにその言葉を信じた者はいなかった

「変だって、いつもならもっとくだらない話とかするだろ」

「マティアス君、昨日の今日よ。誰だってあんな事があったら気も滅入るわ」

ヨランダがマティアスを止める

「でもさ」

「やめてやれよ、戦えなくなったやつを追い詰めるのはよ」

フォルカーがつまらなさそうに言う

「どういうことだよ」

マティアスがラウルの様子を伺いながらフォルカーに尋ねる

「さてな」

「おい、ごまかすなよ。何なんだよ」

「ただビビっただけだよ」

ラウルがぶっきらぼうに言う

「どういうことだよ」

マティアスはラウルの様子の変わりよつに、不安な面持ちになる

「だから昨日の敵とフェリシアちゃんにもビビったんだよ」

「でもフェリ先輩は皆のために」

「わかっているよ、そんなこと。でもとてもじゃないがついて行けないと思ったんだ。だから市民の救助を言い訳にあの場から逃げ出したゆだ」

「でも」

「情けないよね、どうしょうもないよな」

最後にはラウルは声を荒げた。付き合いの長いヨランダでさえ彼のこんな様子を見たことがなかった

「もうやめましょう。ラウル君も貴方の避難誘導はあの場において適切な判断だと思うわだから自分をそんな責めないで」

これ以上誰も話すことはなかった。その後フェリシアがルードウィク達を連れて戻るが、ラウルの様子が戻ることはなかった

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