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nobody   作者: 福郎 犬猫
そして少女は魔女になる
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粗雑な魔女14

天使の猛攻、魔人ボティスの出現に襲われた王都であったが、騎士達の働きにより退けられることが出来た


市街地の被害こそ甚大ではあったが、市民自体の被害はアースレン従業員の協力もあって最低限に抑えたと言えるだろう


ただ騎士団内部に至っては、多くの上層部がバティストの手にかけられたこと

王家に至っては2人の王女こそ無事だったが、王の力こそ継承されてはいないものの優れた手腕で王なき国を動かしていた第一王子のジュリアンの死

国上層部の被害は致命的なものだった

幸い騎士団長オーギュストが健在なことや特筆すべき点は第一王女が見せた王の力の片鱗だ

それにより、この国の再編に大きな不安を持つものは少ない

そしてこの戦いで多大なる貢献をしたフェリシアだが、周囲の目は冷たいものだった。それはまるで人ならざる者を見るかのような目立った

誰もが口にこそ出さないものの、王にも比肩する彼女の得体の知れない力を恐れている者が大変だった

それは彼女と係わりの薄い騎士達も同じことだった

フェリシアの手を借りれば瓦礫に埋もれた行方不明者の捜索や瓦礫の撤去は容易いはずなのだが、その冷めた瞳がそれを許さなった


それをいち早く察したベルトランは彼女を部隊室で休めさせるように、フォルカーとマルグリッドに命じた

周囲の目から彼女を遠ざけるために




「それにしても勝手ですよね、助けてもらっておいてあの態度は何なんですか」

「そう怒るなよ、それも強者の宿命ってやつだ」

「不条理ですよ。フェリ先輩がいなかったら今頃この国は滅びていたかもしれないんですよ」

「そうだな、でもすごかったよな。いや俺は痺れちまったぜ」

「そんなに凄かったんですか」

「そりゃあ、いきなり砂の蛇が現れてよお、天使たちを一飲みよ。いやあ、ありゃなかなか爽快だった」



「あの」


今まで黙っていたフェリシアが口を開くと二人は黙って彼女を見る


「私、疲れたので部屋に休みます。だから二人は皆と合流して下さい」

「何言ってるんですか。私達のサボる理由が無くなっちゃうじゃないですか」

「マリーちゃん、ありがとう。本当に疲れただけだから」


フェリシアは2人の返答を確認することなく、立ち上がり扉の方へと向う


「あのこれだけ聞いてください。ほとんどの隊長が殺されたってのにあの馬鹿親父生きてったんですよ。それに家にいた母さんも、クソ兄貴どもは怪我こそしてますけど、生きてます」

マルグリッドの言葉はどんどん小さくなっていく、フェリシアにかけるべきか言葉が見つからず、終いには何も言えなくなってしまった

それを確認したフェリシアはドアノブへと手をかける


「だから、ありがとうございました。私の家族を守ってくれてありがとう」


フェリシアはドアノブに手をかけたまま振り返ると

マルグリッドは頭を下げていた


「王都にあなたがいて良かった。他が何と言おうと私はそう思いますから」

「俺も楽しかったぜ嬢ちゃん、またやろうな」


何も聞こえてこないので、マルグリッドはフェリシアの方を見ると彼女の顔はにこりと笑って部屋を出た



自室に戻ったフェリシアはベッドや椅子に腰掛けることもせずに窓の下の床にうずくまるようにへたり込んでいた


「今日の立て役者が何をしている」

自分の上で窓の方から声が聞こえる

「私、あれで良かったんでしょうか。もっとちゃんと出来たんじゃないかって」

「君がそう思うのならそうなのだろうな、私には検討もつかない」

窓から聞こえる声は決してフェリシアを慰めない

「私ただ強くなればいいと思っていました。そしたら皆の役にたてると」

「その観点から言うのなら、君は今日多くの人の役に立てたでないか」

「でも、ならなんで」

「力とは強さとはそういうものだ。特に未知な物に対しては人は敏感だからな」

「でも私には」

「何だ感謝や称賛が欲しかったのか、英雄と持て囃されたかったのか。なら次からはそのように戦うといい」

「そんなこと私は思っていない」

「なら何故君はこんなところにいる。恐れられようとも君の力があれば助かる命がまだあるかもしれないのに」

「それは」

「君はあの時何を考えていた」

「私はただ、街の人も皆も誰も傷ついてほしくなくて」

「敵であってもか」

「わかりません。あの時はそう思いましたけど」

「君は自分が思っているよりも傲慢で強欲だと知りなさい。私はそれを間違っているとも思わないし、謙虚になる必要もない」

「もし、今日何か心残りがあるというのなら、それを胸に刻みなさい。2度同じ過ちをしないように」

「そしたら、もっと上手くできるの」 

「わからない。君にしかわからないことだ。だから、自分でもっと考えて、考え尽くして答えを見つけるんだ。これは特別なことではない。皆がやっていることだ。そうあのテオドルスも」

フェリシアの肩が震えた

「その点に関してだけは彼は人よりも秀でているな」

「テオなら、上手くやれたのかな」

「それはないと断言できる。少なくとも魔術士としてはあの子は君よりもずっと劣っている」

「そんなこと」

「事実だ。あの子は利口だが、魔術士として1番必要なものが欠落している」

「必要なものって何」

「魔力だ。そしてそれは君が無尽蔵に所有しているものだ」

「でもテオはすごくて」

「それは、あの子が必死に考え尽くして答えに近づいている証拠だ。これは君に一番足りないものだな」


「いいかフェリシア。君にしか出来無いことは数多くあるんだ。だから君はその分考え、悩むことだろう。そしてその答えは仲間の中にも、テオドルスの中にもない」

「一人でやれっていうこと」

「違う、仲間とちゃんと協力しろということだ。大丈夫君は1人になんかならないさ、君と共に戦うものは必ずいる」


コンコン


ノックの音が聞こえた

「フェリシアちゃん、ヨランダだけど起きている」


「行ってきなさい、一人は嫌なのだろう」


その声のあとに羽ばたく音が聞こえた


フェリシアは重い足取りで扉の方へと行く

「あの」

「あ、起こしちゃったらごめんなさいね。あれから体調はどう」

ヨランダから扉を開けることはなかった。

それが彼女なりの優しさなのだとフェリシアにも理解できた

そうしたら無性に顔を見たくなったフェリシアは自分から扉を開けた

そうしたら、こちらの様子を伺うヨランダとマルグリッド、それにソーニャの姿があった


「あの、ごめんなさい」

フェリシアは3人の顔を見ると無性に申し訳なくなって、謝罪をした

「どうしたの」

「私、本当はあまり疲れてないんです。だから救助活動とかできたはずなのに」


急な内容にヨランダは驚きはしたものの、軽く微笑んだ

「そっか良かった、身体は大丈夫なのね」

フェリシアはヨランダの安堵の言葉の続きを聞くことが、恐ろしく思った

ヨランダはまずフェリシアを抱きしめた

「心が疲れちゃったのね、いいのよ身体だけじゃなくて心も大切にして」

ヨランダの身体はとても温かく、何か傷が癒えていくような感覚がした


「あのフェリ先輩、一応夕食持ってきたんですけど」

「ありがとうマリーちゃん。ちょうどお腹が減っていたんだ」


そう言うとマルグリッドはハイと快活な返事をして、自室の机に夕食をおいて

「おと、さっきは本当に嬉しかったんだ」

そう声をかけるとマルグリッドは顔を真っ赤にして

「いいですから、そんなの、てか人前で言わないでくださいよ」


フェリシアが落ち着いたのを確認して、ヨランダは話し始める

「明日、朝また迎えに行くから。悪いけど貴方も会議に参加することになったの」

「大丈夫です。何なら一人でも行けます」

「いや、本当はそっちはついでなの」


「話はまとまった」

今まで静かだったソーニャがこちらに来た

「それじゃあ、ヨランダ、ジゼル明日の朝はよろしくね」

そう言うとにソーニャは部屋にずかずかと入っていき、ベッドの前に来ると枕を壁際にずらして、その隣に持参していた枕を置いた

「フェリ、今日私ここに泊まるから」

「ソーニャ、どういうこと」

「フェリシア様、申し訳ございません。もしご負担でなければお許しいただけないでしょうか」

ジゼルが代わりに謝罪とお願いをする


「本当はフェリシアちゃんに王城に行ってもらうべきなんだど」

「そんなの構わないわ、それにこの国最強の騎士の隣よ。どこよりも安全じゃない」


「わかりました」

フェリシアはそう言うしかなかった


「それじゃあ、フェリ先輩お休みなさい。休めるかはわからないですけど」

「フェリシア様申し訳ございませんが、ソーニャ様をよろしくお願いします」

「じゃあまた明日ね、フェリシアちゃん」


フェリシアとソーニャを残して一同は去っていく


それから夕食を食べて、寝支度をしてからすぐにベッドに入った。ソーニャも隣に寝る

以外だったのは、彼女の口数がとても少ないことだった

無理もない、彼女は父に続き実の兄も失ったのだから


ベッドの中はとても暖かく、とても静かで居心地が良かった。先程まではずっと1人だと思っていたのに、自分のでははない温かさにとても安心する


ソーニャも同じ思いかわからないが、2人共話すことはなく、静かに寝息だけがかすかに聞こえるだけだった

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