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nobody   作者: 福郎 犬猫
そして少女は魔女になる
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粗雑な魔女13

蠱毒のボティス


目の前の魔人は自分をそう名乗った

天使たちを苦しめた砂を赤黒く染めた現象はボティスから発生した毒によるものである

その毒がどのような効果があるかはフェリシアは知るすべがない

さらに先ほど砂でとらえた筈のボティスが気づけば抜け出していたことからボティスの力の全容は不明だ


「天使さん方はお帰りになられたか。さて私はどうしようか」

「一緒に消えてくれていいんだぞ」

ガスパールがボティスに言い放つ


「それも一つですな。ですが、せっかくの機会をこれで終わらせるのはもったいない」

「お前の目的は何だ」

「いえね、私は人というものがどういう存在か知りたくなりましてね」

「どういうことだ」

「人とは愚かで脆弱なものとかんがえていたのですが、既に同朋を2人も殺された。それが王の力ではなく、ただの人間の手によって」

ボティスは亡き同朋を思ってのことなのか、目を一度閉じて話を続けた

「2人共、とても素直でいい子だった。多少の油断や驕りがあったのでしょう。ただの人間にやられるはずがない。だから確かめたかったのです。あの男のような人間が他にもいるか」

「その男ってテオのことなの」

「そうですよ。確かテオドルスという人間に二人は殺された」


マティアスからはアバドンという魔人をテオが倒したとの報告を受けたが、これまでの間に彼は戦い続けていたのだろう


「でも今日は来て良かった。人間を侮ってはいけないということがよくわかった。貴方は始めからそのことに気づいていたということですか、ソラス」


ボティスは王城の屋根の方を見ると

そこには2人の人影があった。フェリシアはそのうちの1人に見覚えがあった。モンタグ村にいたアロイスという少年だ。あの時から背も伸びていて多少風貌も変わっているが間違いない

彼が王の力を継承したということはフェリシアも聞いている

そんな彼が何故この国にいるのだろうか。悪いことでは無いだろうが、このタイミングに駆けつけたのはただの偶然だろうか


「いえ、私は人間そのものへの興味は大してありませんよ。テオドルス様に忠誠を誓い、お仕えしているに過ぎません。ですから、今から貴方が何をしようとも関与する気ございませんので、あしからず」


ソラスという名前

テオの元にいる魔人ということはフェリシアも知っていたが、まさかテオに忠誠を誓うほどとは

彼は敵ではないが、味方でもないと言っている

今はボティスに集中して問題ないということになる


「オルゴグラフ(火炎よ)」


フェリシアはボティスに向かって、炎を放つ

ボティスはそれを避けることなく、受けた

ボティスの身体は燃え上がるが、そこから苦しむ声が聞こえることもない


「お嬢さん、確かに私に火は有効と言えるでしょうが、この程度の火では私を殺すには至りませんよ」


全身を燃やしながらボティスは何事もなかったかのように言う


「フェリシア、核を探せ。核以外への攻撃はこいつらにとって無意味だ」

ルードウィクがフェリシアに向かって叫ぶ


「ルードウィク」

「分かってるよ、手助けまではする気はないって。でもちょっとした助言くらいはいいだろ」


マティアスの話では、テオは魔人の核を破壊することで勝利したとあったが、マティアスもラウルも実際にその現場を見たわけではないとのことだ


やみくもに攻撃しても意味がないことは理解できたが、その核がどこにあるかも検討がつかない

頭か、心臓か、それとも全く別のところか


「フェリシア、落ち着け」

ガスパールがフェリシアに声をかける

「ルードウィク殿がいるということは、騎士団はもう大丈夫だ」

「よくわからないけどガスちゃん、人が集まったとしても相手が毒を使う以上むやみに近づけないわよ」

「そんなこと言われなくてもわかっている」


ガスパールは言い終わると懐に入れていた短剣をボティスに向かって投げた

その短剣はボティスに当たるとその部分に風穴が開くが、すぐに閉じられた


おかしい

核さえ無事なら問題ないとはいえ、このボティスという魔人はこちらの攻撃を避ける素振りをしない。偶然当たる可能性もあるはずなのに

核を傷つけられることがないと確信しているかのようだ


「ゴン・ジバン(石の飛礫)」


無数の石がボティスの身体を貫いていく

やはりボティスは痛みに苦しむ素振りも核を守るような動きもしない


「ガスパール隊長、もしかしたら核は別のところにあるかもしれません」

「お前もそう思うか」

「それじゃあよ、この毒男の相手をしながら、その核とやらを探すのか」


「いやはや、皆さん感が鋭い。そうですとも私はただの分身です。毒で出来たと毒人形とでもいったところでしょうか」

「毒を自在に操れたとして、そんなことが可能なのか」

「可能ですとも。まあそれには人体を理解する必要があったのでそれには中々苦労しましたが」

「それじゃあ、まるで本物を見たかのような言いぶりね」

「ええ、何人か用意しましてな。人体の構造はとても複雑だ。それに私の毒の作用を知る必要もありまして」

「外道が」

ガスパールはボティスを睨む

「そう言わないで下さい。集落単位でも良かったところを数人で抑えたのですから」


「オルゴグラフ(火炎よ)」


再びボティスを炎が包む


「諦めが悪いお嬢さんだ。いや、思考を放棄したのか」

何事もないようにボティスは言う


「ガバダ・ギゴクス(持続しろ)」


ボティスを燃やす炎の勢いは衰えることなく燃え続ける


「なるほど、消えない炎といったところですか」

なおもボティスは感心するかのように自分の身体を燃やす炎を興味深そうに見る仕草をしている


「ガスパール、フェリシア君」


背後からベルトランの声が聞こえてくる

そこには王女たちや調査隊の姿も確認できる


「どうしてお前たちが外に」

「それよりも状況を」

「あの火だるまになっているのは、敵だ。本体が別にいるようでどんな手段を使おうとよまるで意味がない。全身毒で出来ているようで近づくことすら困難だ」


「オルゴグラフ(火炎よ)」


フェリシアは既に燃えているボティスに向かって、なおも火を放ち続ける


「アサダヨ」

甲高い鳥の声が響く

それには集中しているフェリシアも視線が行く

アレクサンドリーヌの肩に派手な色の鳥を確認したフェリシアは叫ぶ


「アレクサンドリーヌ様、敵に向かって手をかざし続けてください」

「え」

「すいません、早くお願いします」

アレクサンドリーヌは理由もわからず、言われた通りに手をかざす


彼女の周囲からフェリシアのものよりも大きな火炎が現れ、ボティスを燃やし続ける


「そろそろ限界ですかな。それに王を一度に2人相手にするのも分が悪い。お嬢さんも今日はありがとう、また」


ボティスはたちまち燃え尽きるとそこには何も残らなかった

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