粗雑な魔女11
「それで状況はどうなっている」
クリストフが咳払いをしたあと尋ねる
「市街の方にはラウルくんとフェリシアちゃん、フォルカーが行っているわ」
「団長は本部で指揮をしていることだろう、もう統制がとれているだろう。市外の方はガスパールも自分の隊を引き連れて使っている」
「バティストはどうした」
クリストフの問にベルトランは少し言うのをためらった後に答えた
「剣の王が現れてね、彼がバティストの相手をしている」
「それって、テオ君が」
「ルードウィクですよね」
ベルトランの代わりにマティアスが答える
「そうだと思う、テオ君ではなった。もしかしたら剣の国の一向が近くまで来ているのかもしれない」
「なら、行くなら市街のほうだな」
クリストフが切り出す
「バティスト顧問はどうするのよ」
「剣の王が交戦しているなら、俺達の出る幕はないはずだ」
「そうだね、それはルードウィクという人物を信じるしかないね」
「それで王女様達をどうするのよ」
「その前にどちらが王の力を継承されているかだが」
「ベルトラン、申し訳ありません。それがわからないのです」
アレクサンドリーヌがベルトランに詫びながら答える
「いや、お二人を責めるつもりは有りませんよ。むしろあの力がなければ今頃どうなっていたことやら」
周囲を見回してからベルトランは再び口を開く
「なので王女2人には私達に同行して頂きたい」
「な、何を言ってるんだよ」
「そうですよ、王女達を危険な場所にお連れするなんて」
「この国にもはや安全な場所はないと言いたいのか」
クリストフが尋ねる
「そこまで言い切るつもりはないよ、ただ今はそれを探す時間が惜しいからね」
「そうだな」
クリストフはいい終えたあと、部下の下へと行った
「イネス、マルタンそれにトーマよくやった」
「申し訳ありません」
イネスが頭を下げて謝罪をする
「トーマのことで自分を責めるな。あの場では全滅していてもおかしかったのだから、トーマはそのことをよくわかっていたようだ。だから天使たちの攻撃を自分に集めたのだろう」
トーマの遺体は鎧のお陰で原型は保たれているが、魔弾を受けたあとが数か所見受けられる
「マルタン、トーマには悪いが弔うのはもう少し後だ。今はここに置いていく、その後お前達がそれぞれ王女の警護をしろ」
マルタンとイネスはトーマの遺体を壁際に移動させる
クリストフはアレクサンドリーヌの元に行き
「アレク様、ソーニャ様これから移動しますが、よろしいですか」
「私達は別に構いませんが、それよりもクリス貴方の身体は」
「私は大丈夫です」
その返答にアレクサンドリーヌはなお心配そうな顔をしていた
「なら、私の無事を私の側で願っていて下さい。それならきっと大丈夫です」
「君も安静にしていた方がいいと思うけど」
「いいんです」
ベルトランがクリストフに声をかけたのをヨランダが遮る
ベルトランは苦笑いしながら
「それでは移動しようか。騎士団内においても誰が敵かわからない状況だ。誰が来ても油断しないように」
一同は陣形を組んで移動を始めた
ルードウィクは壁に背を預けながら、バティストの遺体と預かった剣を見る
バティストが年老いた身体だったため今回は勝てたが、もし違えば結果も変わっていたことをルードウィク自身理解していた
だからこそ解せない事があった
最後の一撃、ルードウィクが防ぐことを把握していたはずだ。それなのに何故最後あえてあの形をとった
これではまるでわざと死んだかのようだ
「さすがはルードウィク、女神の勇者に致命傷を受けることなく勝利するとは」
何もないところからソラスが現れて称賛する
「別に、それにちゃんと勝った気もしないし」
「そちらは戦利品というところですか」
ソラスはバティストの剣を見て尋ねると
ルードウィクもその剣に目を通す、これがただの剣ではないことは戦闘中も把握していた。魔剣と同じように力を授けられたであろう剣の本領を結局知ることはできなかったが
「テオに渡せってさ。テオなら女神にも会えるのかもしれないって」
「そうですか。陛下はそれを見てどう思われるのでしょうかね」
「知らないよ。それより女神の勇者って何」
「そうですね。貴方達にわかりやすく伝えるなら、六人目の王の力を持った存在といったところですかね」
「それで廻の力ってことか」
「その廻の力とは」
「多分何度死んでも生まれ変わるってことじゃないかな。それでいつか女神と廻り会うための力」
「まるで呪いですね」
「他人からしたらそう思うよな。それでもこの爺さんはそのためにわざと死んだ気がするんだ」
「直に戦った貴方がそういうのならきっとそうなのでしょう」
「それで他の状況は」
「王女2名はまだ健在です。お付の騎士が天使を退けたようです。市街の方は被害は甚大ですが、今は膠着状態ですね。ジギには早く駆けつけるよう言ってありますので、時期に使者全員が来ることでしょう」
「わかった、市街の膠着状態って何なのさ」
「それは話すより見てもらう方が早いかと、ご加減は大丈夫なのですか」
「大丈夫、まだ闘える」
それではとソラスはルードウィクの肩に触れると気づくと建物の屋根の上に出た
そこからは王都をよく見渡すことが出来る
多くの建物が破壊されている様、はるか上空にいる天使の集団
そして、王都と天使の間に存在する砂の塊
それは蛇のようにも見えたが、明の国で聞いた龍にも見える
さらにその砂の龍の中には天使たちが捉えられているようでところどころ砂の中にそれらしき姿が見える
それで天使たちは仲間を盾にされて手出し出来無いようだ
確かにこの光景を口で説明するのは難しい。仮に出来たとしても聞いた人間は信じられない
なるほど、これがフェリシア・ベルーナの力かとルードウィクは少し興奮した様子を隠すこともなく、息を飲む




