粗雑な魔女6
ルードウィク・アルマン
今はそう名乗っている
エスターヘルムの名は俺には重すぎる
テオにこそふさわしい
そんなものは建前でやっぱり俺はモンタグ村のオルゲン・アルマンの息子であることに誇りがあるので
生みの両親に名を、育ての親には姓をもらうことにした
眼の前の男、バティスト・カブァリエ
テオが気をつけろと言っていた男、俺にしか相手ができないと言っていた男
こいつは今まで見た誰よりも強い、じいちゃん、レンナルト、ジン、チャミュエル、アバドン
誰と比べてもこいつのほうが上に感じる
そうただの感だ
それでもここでこいつをどうにかしないと、この国が、皆が終わってしまう
それはテオの、王の本意ではない。
そう思うと恐怖に体が動かないこともない、きっと勝てるのだと確信があるから
交わされると分かっているが、また何本もの剣を飛ばす
今度は剣と共に前に出る
この人は剣を交わしながらも、俺の剣を受け止める
そしたら、俺はバティストに向けて剣を放つ
バティストは当然それを裂けて、今度はあちらから来るが
俺はバティストに向けて剣を出す、空中で静止させるとバティストは剣を振るぬいた、空中にあって剣はすべて斬られたのだ
それには驚きはしたものの、事前にバティストの剣が教えてくれたから俺はあの人のところまで行き剣を振るう
純粋な切り合いではまだこの人の方が上だ
それでも俺には剣の声が教えてくれるから何とか形にはなっている
剣の声
これは俺が勝手に言っているだけだが、力に目覚めてから何故か相手が武器をどう来るかわかるようになった
それは相手の動きを見抜いているとかではなく、相手の持つ武器がどう動くか教えくれる
何故声というと、俺の視覚にある武器や隠されているものでもわかるからだ
それがあってどうにか相手とご確認やり会えることができる
テオやユージン王が言っていたが、王の力はけっして無敵でも最強でもない、その言葉が理解から実感へと変わった
バティスト以外にいる騎士は、王族側の人間か
呆然としている1人を含め4人とも強いのはわかる。特にそのうちの二人はじいちゃんやジンと同じくらいだ
だが、束になってもバティストには勝てないだろう
ここは
「騎士たちここは俺に任せて、王族を守れ」
そう叫ぶと
「少し遅かったな、ルードウィク。もう殺したのだよ」
バティストは首と胴体が切り離された死体を剣で指す
服装からして騎士ではなく、余程の偉いさんなのは、間違いない
「これが、ジュリアン王子だ」
最悪だ、ジュリアン王子といえばおそらく次の王となるのはこの人だと聞いていた
「他の王族は」
「2人の王女はこの部屋からは逃がした」
「君はテオくんの臣下何だね」
1人の騎士が尋ねてきた
「そうだよ、テオの指示でここに来た」
「行きましょう」
「いや、しかし」
「わからない人たちですね、貴方方がここにいても足手まといなのですよ」
痺れを切らしたのはソラスだった
ソラスは呆然としていた騎士とともに転移していた
「貴方方は騎士なのでしょう」
ソラスは多少の苛立ちを感じる口調で言う
「ルードウィク殿ここはお任せした。ベルトラン、ガスパール、お前たちはクリストフを追え」
「団長は」
「私は騎士たちに指示をだして、市民を守る」
騎士たちはすぐに動き出した
「それでは私も行きますが、ルードウィクあなたなら理解しているでしょうが、この男もただの人間ではない」
そう言ってソラスも消えた
俺はバティストかは目線を戻し
「ありがとう」
「いや構わない、俺も下手に動けなかっただけだ」
「ならそういうことにしてもらうよ」
「それよりルードウィク、お前はやはり剣の王で間違いないじゃないか、嘘は良くない」
「嘘じゃないさ、剣の王はもういない、でも王ならちゃんといるさ」
「テオ・クレマンいや、今はテオドルスと名乗っていたか、王都で数回見たことがあるが、俺にはあの男がそこまで優秀でも王になるだけの器があるようにも見えなかった」
「それはお前の目が節穴なだけだろ」
「そんなこと今となっては、どうでもいいことか」
そう言って、バティストはこちらにくる
何度とも剣戟を重ねてわかったが、先ほどよりも鋭くなった
騎士たちを警戒していて力を温存していたのか
それにその老体でどうしてここまで動けるんだ
俺も雑念を振り払い、剣を操る
お互い口を開くことはなく、ただ剣を交わす
時折痛みを感じた気もするが、そんなことに構うことはできない
剣の声がなくてもわかる、少しでも隙を与えると死ぬ
広い部屋の中で鉄がぶつかる音だけが響く、ルードウィクの多彩な攻撃にも致命傷を避けながら、その唯一の剣には未だ刃こぼれ一つ、傷一つなく、まるで新品の剣のようだった
それに反して老人は傷だらけで、裂けた衣服も赤く滲んでいた
この激しい攻防のなか先に動きが止まったのはバティストだった。彼の剣に、魂に、彼の体はもはやついてこれなくなったのだ
当然その隙をルードウィクは逃さない、ここに来て始めて剣がバティストを捉える
だが、バティストはそれをなかったことかのように倒れることなく、剣を向ける
「どうしてこんなになってまで」
「鈍いやつだな。あれだけ剣を重ねればわかるはずだ」
ルードウィクは何も言わない、それはバティストの言葉を理解してのことかは定かではないが
「やはり王は強いな」
「王と戦ったことがあるのか」
「ああ、何度もある。その度に殺されたものだ。剣の王に殺されたのは2度だったかな」
バティストはもはや掠れたような声で話す
「どうしてそこまで」
「なら、先に聞かせてくれお前の存在について、お前は何者だ」
「俺は王の剣だ、だから王の敵は斬る」
「なら俺は女神の剣といったところか、そのために廻の力でいつかあいつと出会える日が来ることを信じて剣を振るう」
両者、口を閉じて最後の一撃のために剣を構える
一斉に前に出る
相手の剣戟を気にすることなく、ただ殺すために
血しぶきが飛び散る
ルードウィクの剣がバティストの体を深く斬り込んだ
バティストの剣は、空中にある剣がそれを受け止めてルートに届くことはなかった
バティストは仰向きに倒れた
「ルードウィク驕るなよ、お前はまだ未熟だ。今まで戦ったどの王よりもお前は弱いのだから」
ルードウィクは何も言わない
「しかし怯えることはない。お前ほど剣に気に入られる者は見たことがない」
「これで今回は終わりか、またあいつに会いに行ってやれなかったな」
「ルードウィク、この剣をテオドルスに渡せ」
「わかった」
「女神の剣だ、あの男ならもしやあいつに会うことがあるかもしれない。その時は代わりに返してくれ」
「わかった、ちゃんとつたえる」
「ありがとう、何度も死んで、殺されたが、結局俺は間に合わなかったか、でもどうしてこんなに穏やかななの」
老人の口から声が発せられることはなかった




