粗雑な魔女2
騎士団の調査
奇妙な話だ
私達で内部調査をするということなのだろうが
それは、テオがこの国を出た時に既に行なわれている
結果としては騎士団の人間には彼の脱獄や国外逃亡に関わった者がいないというものになった
わかっているのは王城の使用人であるジャンが手引をしたことだけだが、彼1人で行えることとは到底おもえないが何の証拠も見つからなかった
「今回のテオドルスとは関係ないよ」
私達が考えていることを察してかベルトラン隊長が言った
「ならなにを」
「今朝に王の手記が見つかったんだ」
「その内容が今回の調査と関係があるんですか」
「そうだね、そうなんだが」
「どうしたんですか」
「その手記は私室の棚にあったんだ」
「どうして今更こんなところに、とっくに調べた場所でしょ」
「それが、わざわぞ見つけてくれと言わんとするところにあった。要するに誰が最近本棚に入れたと私も考えている」
「誰がなんのために」
「おそらくは手記の内容をこの時期に知らせるためだろうね」
おそらくその誰かとは私の肩に止まっているこの鳥だろう
もし想定外なら何かしら私に知らせるはずだ
「手記にはなんと」
「掻い摘んで話すとこの国には何十年も前から女神の傀儡がいると記してあった」
女神の傀儡
要するに女神の密偵者ということだろうか
「それはあの天使たちということなんですか」
マティアスとラウルさんは天使を実際に見ているんだ。彼らなら何か気づくかもしれない
「いや、手記には人間だとあった。王は少なくとも天使の存在を把握していたらしい、それに敵対心があったようだ」
人間といってもただの人間ではないのだろう
魔人なのだろうか
「あの、オルニアスの仲間なんでしょうか」
「それは分からない、ただラウルくん達の話では双方は敵対していたのだろうから可能性は低いだろうね」
するとブレイズさんが私の頬を2回つついた
否定の意味だ
二人で決めたことで、人前で意志の疎通をはかるときに1回なら肯定、正しい、2回なら否定、間違っている
「それじゃあ、王が魔人の味方みたいじゃないですか」
冗談とわかるようにラウルさんが言う
当然ブレイズさんは2回つつく
「手記にはその人物についての手がかりはなかったんですか」
ヨランダさんが話をもとに戻す
「いや、王も誰かまでは特定できなかったようだ。たださらに先王からの代からいる人物らしいことは書いてあったよ」
革新派の誰かと言うことだろう
それは全員わかったようで、誰も口を開こうとしない
「ということは、改革派の誰かの可能性が高いということですね」
それを言ったのは、マリーだった
彼女の父は改革派の騎士だ。自分の父親も可能性があるのに不安を感じさせることもなく彼女は言い切った
「でも天使って敵なんですかね。もしかしたら王様とテオ某が悪者ってこともあるんじゃないんですか」
「それはないよ」
考えるよりも、先に言葉が出た
「そうだぞ。あいつは命がけで魔人と戦ったんだ」
マティアスも叫ぶ
「でも、それが私達の味方っていう証拠にはならないじゃないですか」
マリーは容姿や言動と違い冷静というかさっぱりとした性格だ。彼女の言うことも一理ある
結局テオは何も明かしていない
ブレイズさんからある程度の話を聞いていないと、私も彼女に言い返せなかったことだろう
「たしかに味方とは、言い切れないけど敵じゃないのは確かだよ。その証拠にマティアスに情報を渡しているんだから」
「でも」
マリーはそれにも納得しないようだ。そのことに対してもテオの思惑ははっきりとしていないのだから
「はいはい、それでどう調査するかですけど」
またもヨランダさんが話を戻すため手を叩きながらそう言った
私達で革新派を調べるのは難しい、私達はソーニャの護衛騎士だ要するに根っからの穏健派だ
まともに話を取り持って貰えそうにないだろう
「それなら私が行きますよ、父の知り合いくらいなら話はできると思いますし」
マリーが立候補した
「私も行きます。天使や魔人が出てくるかもしれませんし」
私も続いた
「そうね、あなた達二人が適任なのだろうけど」
何故私が適任かというと今の私なら天使や魔人と多少なりとも対抗できるからだ
それでもヨランダさんは悩んでいる様子だ
「なら俺も行くさ」
フォルカーが言った
「何で貴方が」
「俺も適任だろ、その派閥争いの蚊帳の外なんだから」
そう牢獄にいたフォルカーは騎士団での発言権はまったくないし、彼が穏健派にいるのはただの成り行きだ
他の騎士が行くよりも警戒はされないだろう。不審者としては警戒されるだろうが
「そうだね、僕もそれがいいと考えていた」
「なら最初に行って下さい」
ベルトラン隊長の了承も受けて3人で行うことになった
「君たちくれぐれも深入りはしないように、これはあくまで件の人間への牽制が主な目的だから」
穏健派が天使の内通者を把握していることを知り渡せるのが、目的だそうだ
その時ブレイズさんが3回つついた
3回は話しがあるということだ
「あの申し訳ないんですけど、お手洗いに行ってきますので待っていてください」
返答も聞かずに私は人のいないところに走った
「それにしても変わったよな」
「何がだよ」
「フェリシアちゃんのことだよ。前はいつも自信無さげで不安そうだったのに」
「それが返って心配だわ、無理してないといいのだけれど」
「あのー」
「どうしたんだよ、マリー」
「フェリ先輩は何であんなにテオ某のことを信じられるんですかね。何か確信があるみたいな」
「そうね、古い付き合いだからこそわかることがあるんじゃないのかしら」
「それにしてもですよ。そんないい男なんですかね」
「俺に劣るのは間違いないけどね」
「なんですかね、よっぽど顔がいいんですかね」
「確かに顔はいいよ、女装したときも女の人にしか見えなかったし」
「なんですかそれ、でもフェリ先輩は面食いなのかな」
「そういうことじゃないと思うけど」
「ま、変わったって言うならバイアーもだよな」
「ああ、前はあんなに喧しくて姿もろくに現さなかったのに、今じゃフェリシアちゃんにべったりだ」
「バイアーっていつもフェリ先輩といる静かな鳥ですよね、私鳴いているところ見たことないですよ」
「もとはテオが飼ってたんだけど、飼い主が変わるとこうも変わるものなのかね」




