驕り驕られ9
しばらく馬車に揺られていると町並みが変わっていき王城に近づいていることがわかる
馬車の窓から見た王城は理の国に比べると塔のような高い建物もなく、赤色という派手な装飾をした広い建物だった
馬車が止まり
王城へと続く階段には兵士が両脇に整列していた
その状況に一同緊張の色を隠せていないが、ジンとレイが前を歩いて誘導する
王城の中は、外観に比べると落ち着いた印象を受けた入口正面に階段があり、その先に大きな扉があるそこが謁見の間なのだろう
扉の前でジンが
「剣の王とその一行をお連れしました。」
すると扉が開くと謁見の間の奥に王座があり、それまでの道のりには外と同じように兵士が整列していた
王座の方に歩くと椅子が2つあり、一つには男性がもう一つには女性が小さな姉妹を抱えて座っていた。
「ユージン様、お連れしました」
「ご苦労だったね、ジン、レイ」
二人は片膝をついて頭を下げる
「テオドルス殿、ルードウィク殿、長旅でお疲れだろうに仰々しくてすまないね」
今、こいつは俺とルードの名前を言った
その意図は王と力を持つものが別だと理解しているようだ
「驚かせるつもりはなかったんだけどね」
「あなた、自己紹介も済ませていないのに失礼だわ」
「そうだね申し訳ない。私が明の国にバングラフが王、ユージン・アラム・レイゼイだ。隣にいるのは妻と娘たちだ」
「明の王よ。お招きに感謝します。剣の王メディスカルが王、テオドルス・フォン・エスターヘルムと申します」
「ご丁寧にどうも、若いのにしっかりされている」
そう言うユージン王は30前後といったとこで、そっちも王にしては若い部類に入る
「それじゃあ、テオドルス殿。私達は別室で二人で話そうか」
いきなりの申出にこちらでなく、向こうの臣下も混乱しているようだ
「何を考えているんですか、剣の王と二人でなんて」
「大丈夫、この方は王の力を継承していない、王の力を継承しているのはそこのルードウィク殿だよ」
「力なきものが王などありえません」
「こら、失礼だよ。彼らには彼らの都合があるのだ」
向こうの混乱ももっともなものなので
「ルード、力を見せてやれ」
そういったあとにルードの周りに十本ほどの剣が表れて数秒後に消えた
当然兵士たちは俺よりもルードを警戒する
「さあ、行きましょうか、ユージン殿」
「はは、テオドルス殿は本当に若いのにしっかりしておられる」
俺とユージンは謁見の間のさらに奥に向かった
「今のすごかったね」
「剣がいきなりばーって出て消えちゃった」
后の膝のうえで姫たちが王の力に興奮していた
それとは他所に兵士たちの間には緊張感が和がれている
向こうからしたら自国の王無しで他国の王と相対しているのだから無理もないか
「もうお客様が来られているんだから、いつまで立ててせているの」
王妃が口を開くと
ジンが
「失礼しました。部屋のご用意をしておりますので、会談が終わるまでお寛ぎください」
俺たちはそれに案内されて謁見の間を出て、客間に通された
中は今まで入ったどの部屋よりも綺羅びやかで逆に寛げそうにない
俺達全員とジンとレイが入って扉が閉じられると
「あんた達何なのよ。普通、力がある人が王になるんじゃないの」
レイが今までとは別人のような口調でいった
「よさないか、レイ。この方たちは他国の要人なのだぞ」
「どう見ても要人というより、冒険者一行って感じじゃない」
レイの言うことは正しいがカチンとくるものがある
「いえこちらこそ申し訳ない。船を出てすぐのことでしたのでろくな支度が出来ませんでしたので」
ジギが二人に割って入る
「それって私達が急かしたと言いたいの」
「よさないかレイ」
「ジギもやめない、密入国の私達が王城に招いてもらっているのだから」
ジンとレーヌがそれぞれたしなめる
「失礼、どうして二人での会談何でしょうか」
「それは私達もわからない。あの方がそういうのなら貴殿らに敵対心はないことが明白だ。それまでの間自由に寛いでくれ」
「お気遣い感謝します」
ジギとレーヌとジンで会話が一段落しかけたところで
「私の質問はどうなったの」
レイが不満気に言うが誰も取り入らない
通されたのは王の私室のようだ
「着いてそうそう、すまないね。本当は謁見の間で済ませるつもりだったんだけど、君の事情はあまり他の者に聞かせられなかったからね」
ユージンが有効的に話す
「どこまでわかっているのですか」
「私の力はせいぜい目の前の人間が何を考えているかわかる程度さ」
「それなら何故俺達がこの国に来たことがわかったか説明になっていないでしょう」
「あとは、千里眼のようなことができるんだよ。といってもその状態でひとの考えていることは分からないがね」
自分の力について包み隠さず話さす
嘘でなければ
「嘘ではないよ」
思考を読むことが出来るのは本当のことのようだ
「それでは君のはなしを聞こうか」
そんなことをせずとも全て心を読めばいいはずだ
「そう便利なものじゃないんだ。私が読めるのは心の表面だけ、一目見て全てを理解出来るというものではないんだよ」
ユージンに今まで起きたことと、これから起こることを話した
それを聞いたユージンは黙っていた
「君が嘘をついていないことはわかっているんだが」
「妄想の思い込みと区別出来ないと」
「そうだね。さっきも行った通り、私が見れるものはその人間の表面だけなんだ。事実か理解出来るものじゃない」
「あんたの王の力はそれだけじゃないんじゃないのか」
「そうだね、その人間の頭に触れると記憶を覗くことが出来る。それなら事実と妄想の区別は出来るけど」
「なら早くしてくれ」
「いいのかい、それは君の全てを知るに等しいんだ」
「構わない、そんなことだけであんたの協力が得られるなら安いもんだ」
俺はユージンに近づき、片膝をついて頭を下げた
「そうか君はそれほどまでに、わかったよ」
頭の上に手が置かれたことがわかった
そこから頭の中に今での記憶が映像のように流れている
これじゃまるで走馬灯のようだと少し愉快に思った
どれくらいの時間が過ぎたか分からないが、過去を思い返すと死んだ者達にまた会えたような気がして悪い気がしなかった
頭から手が離れたので顔を上げるとユージンは頭を抱えていた
窓を見ると日が暮れていたので、何時間もあの状態でいた事に驚いた
「で、どうだった」
「今日は待ってくれ、いきなりあれだけの物を見せられたんだ飲み込むにも時間がかかるんだ」
頭を抱えているユージンを眺めながら、すっかり冷めたお茶を飲んでいる
理の国の物とは違い緑色をしているが、味も大きく変わらないような気がする
「よし」
ユージンが声を上げたので、そちらを見ると
「夕食にしようか。回答は明日にするよ」
なんとも暢気な物言いにこちらの力も抜ける




