表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
nobody   作者: 福郎 犬猫
3章 冠のない王様
52/86

驕り驕られ6

「皆さん、起きてください。大変なことが起きました」

ニクラスが大声を出しながら、部屋に入ってきた

その大声に起こされて、頭が回らないなか何が起こったのか尋ねると

「船内の人間が誰もいなくなってしまったのです」

言葉の意味が理解できずにいる俺たちにしびれを切らしたニクラスが再度言う

「私達以外の人間の姿がいなくなってしまったんですよ」

「どういうことだ」

「ですから」

「とりあえずこの部屋に全員がいるか」

といいながらジギ、ルード、オルティノがいることが確認できた

「他の部屋はすべて見たのか」

「まだですけど、操舵室や甲板に誰もいないんです」

「ロゼッタは」

ルードがロゼッタ達の部屋の方に駆けていったので、俺たちはそれについて行く

ロゼッタ達の部屋の前につくとルードがノックもせず

「ロゼッタ」と声を上げて扉を開けて中に入る

中ではロゼッタもレーヌも寝ていたようでいきなり入ってきた声に対して抗議の声があがるが、それを遮って

「他の船員はどうした」

暗くて見えづらいが、ロゼッタとレーヌ以外の人影があるように見えなかった

「どうしました、私達の他に二人いたはずだけど」

レーヌの言葉に耳を疑う

この部屋の灯りをつけると二人以外の人はいなかった

「何か聞いていないのか」

「いえ、たしかに同じ時間に床についたはずなのだけれど」

とりあえずこの部屋で全員が集まって現状の把握をする

「ニクラス、お前が見たものを教えてくれ」

「はい、寝る前に積荷の確認をしていて終わって部屋に戻るところ妙に人影がないことに気づきましてあたりの部屋に誰もいなかったので、不安になって操舵室にも行くと誰もおらず。それで手当たり次第に部屋の確認をしていたら貴方達はいたということです」

「他に何か気づいたことはないのか」

「そうですね。甲板に出るとやけに霧が濃かったことくらいですかね」

「霧か、まさか幽霊船に呪われたとか」

冗談を言うルードをレーヌがげんこつを下ろす

「争った痕跡とかはなかったんだよな」

「はい、人だけが消えている状況で」

それで俺達だけが残されているということは

「魔人の仕業か」

つい口に出してしまった

「そういえばソラスはどうしたんだ」

「たしかにいないわね」

「まさか、あいつが」

皆が口々にソラスへの疑いを向けるが

「それはないよ」

「どうしてわかるんだよ」

「ソラスは魔人との戦い以外では俺に仕えるそうだから姿がないということは」

「魔人の襲撃があって、あいつはそれを見物してるっていうのかよ」

「そういうところだろな」

魔人の襲撃というのは間違いないだろう

問題はそいつの能力だが、この大人数を俺たちだけを残して攫うことも消すなんて能力では無いだろう

もし、そんな単純な能力なら物音や大掛かりな仕掛けが必要だろう

と言っても魔族の能力で知っているのは、鋼鉄化と転移だけだから脳力についてはここで考えても仕方がないか

「あの」

戸惑うような声が聞こえる

「さっきから話している魔人とかなんとかって何なんですか」

ニクラスが俺たちに問う。彼からしたら当然の疑問だろう。

「落ち着いてくれ、ニクラス」

「こんな状況でどうして皆さん冷静なんですか。それに質問の答えは」

ニクラスには何も教えないというのも酷なのである程度のことは伝える必要があるだろうか。

「世の中には魔人っていう。人知を超えた存在がいる。自治区で区長を殺したのもその一人だ」

「そんな、我々はどうなるのです」

ニクラスは簡単に飲み込めそうにはないようだ

「とにかくどう動くかだよな」

ジギが困惑するニクラスをほっといて話を進めようとする

「あのそれよりレーヌが」

今度はロゼッタが声を荒げる

「レーヌがどうしたんだ」

「どこにもいないんです」

あたりを見回しているとこの部屋にいるのはロゼッタ、ジギ、ルード、オルティノ、ニクラスがいる

俺たちが部屋の入口側にいるので、勝手に出たこともないだろう

「どういうことだよ」

「ロゼッタ見ていなかったのか」

「たしかにあなた達が部屋に来た時はレーヌと二人でした。気づいたら」

だれにも気づかれることなくレーヌがつれさられた、もしくは消されたそんなこと王でもできないはずだ

本来ならソラスから情報を引き継ぎたいところだがあいつは今どこにいるかさえ分からない

どうしていいかわからず立ち尽くしていると


キャーーーー

女性の悲鳴が聞こえた

レーヌの声で間違いない

「食堂の方からだ」

ジギが先に行くので

「何があるか分からない、全員付いてこい」

急いで食堂に行くと扉の前でジギが立ち尽くしていた

「どうした、ジギ」

扉の前から動こうとしないジギをどかして食堂の中を見るとそこにはレーヌがいた


そのレーヌは壁に磔にされており、喉元にはナイフが刺さっていた


なんだこれは何が起きている

「ソラスのやつだ、ソラスがレーヌを転移してこんなことを」

ジギの言葉を他所にルードとロゼッタがレーヌに近づく

「触るな」

レーヌに触ろうとする二人を制止する

どうしてというような顔をする二人に対して

「何があるか分からない、もしかしたらこれすら罠かもしれない」

それを聞いている二人の顔は恐怖で染まっていた

それは俺を見ているのでなく、その先を見ているようだ

後を振り向くとオルティノが壁に磔にされていた。レーヌと違うのは全身が剣で刺されていることだ

これには言葉が出なかった

いくらレーヌに集中していたとはいえ、だれにも気づかれること無く、あのオルティノにここまでのことが出来るのはソラスでも無理なはずだ

「もう、いやだ、巻き込まれるのはゴメンだ」

ニクラスは一人で走っていってしまった

残ったのは俺とジギ、ルード、ロゼッタだけになってしまった

「一体どういうことなんだ」

「ロゼッタ何か気づくことはないのか」

「少なくとも天使にはこんなことはできません」

落ち着け、思考を止めるな

一連の騒動には何かカラクリがあるはずだ

なぜ他の船員の死体は見つからないのに、レーヌとオルティノには死体がある

これは俺たちへの挑発のつもりか、それともまやかしでも見せられている気分だ


「あははは、人間てのは本当に脆弱何だね。こんなんだとこっちが可哀想になるよ」


食堂に一人の少女が入ってくる

その少女はロゼッタよりも幼い見た目をしており、髪は肩ほどまで伸ばしている

こんな少女は船内では見たことはない

「お前がレーヌとオルティノを」

「ああ、この女の人と獣人のこと。あまりにもあっけなくてこっちも驚いているんだよ」

「こいつめ」

ルードが剣を数本出現させて、少女に向けて飛ばした

少女は軽やかな身のこなしでそれをすべて避けるが、ルードの追撃は止まらない

「面倒だな」

少女は飛んでくる剣に向けて手を伸ばすと剣がすべて消滅してしまった


王の力が通用しないこんな事あるのか

それでも俺とジギは左右から剣に気がそれている少女に斬りかかる


「ざーんーねーん」

少女は誂うように愉快そうに言うとかざした反対の手で空を切った

すると俺の左腕が切られて飛んでいた


この痛みが現実であることを教えてくれる

それでもジギの方を確認するとジギは体と首が切り離されて息絶えていた

ルードは剣を飛ばして応戦するが、すべての剣が少女に当たる前に全て生滅してしまう


「王様っていってもこんなもんか、つまんないな。じゃあね」

ルードに向かってまた手で空を切る

「させません」

ロゼッタが盾を出現させてかばうが

盾ごとロゼッタは切られてしまった

「ロゼッタ」

「いけません、早くあれをなんとかしないと」

「でもお前を見捨てるなんて」


少女が二人に近づく

「君たちは仲良しなのかな、感動的だね。だから一緒に殺してあげるよ」

少女が両手を振り下ろすとふたりの首がおちた


ルードもジギもロゼッタもオルティノもレーヌもオルゲンも死んでしまった

俺が巻き込んだからだ

だからせめてこいつだけでも

その思いとは別に体が動かない

少女がゆっくりと近づいてくるのをただ待つだけだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ