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nobody   作者: 福郎 犬猫
3章 冠のない王様
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驕り驕られ3

「隠れてないで出てきたらどおだ、羽虫ども」


大声を上げてみたが、まるで反応がない

こちらの反応を木陰で伺っているようなので、仲間に目配せをしてから手榴弾を上空へと思いっきり投げた


闇夜に明るい閃光が灯る

仲間たちはその隙に森を抜けるために駆け抜ける

明かりが消えてまた静かなくらい木々の中に向けて再び叫ぶ

「剣の王は邪神に殺されたんだぞ」

静かな森がより一層静かになったように感じた

「女神の人形こどきじゃそんなことも知らないのか」

何もおかしくはないが笑い声を上げる

木々の中から一人の天使が出てくる

たしかチャミュエルとかいう天使の隊長格のやつだ

「自分が何を言っているのか理解しているのか」

その問いに安心した。どうやらこいつらの狙いは俺になったようだ

「理解も何もお前らはあの戦争に何も不思議に思わなかったのか」

天使達は黙ってこちらを見ているようだ

「その裏に邪神がいるってことだ。お前らのおとぼけな主様はこんなことにも気づかないのか」

「その馬鹿げた話を私達が信じると思っているのか」

「知らねえな、早くお家に帰ってママに聞いたらいいんじゃないのか」


もう一度手榴弾を投げる

爆音とともに閃光が走る

すかさず俺はチャミュエルのもとに駆け寄り斧を振り下ろす


その場には既にあいつはおらず、上空にいた

「天使様ともあろうものが逃げるなよ」

「安い挑発を」

そういったのはチャミュエルではなく、ほかの天使だった

気づけば四方を天使に囲まれていた

その状況に思わず笑みがこぼれる

「なあ、聞かせてくれよ。どうして女神様は俺たちを助けてくれない」

「お前ごときが教えられると思うなよ。全ては主の御心のままだ。それで世界は良い方向に行く」

チャミュエルに向かって言ったつもりだったが、また他の天使が答えた

「こちらも一つ問おう、お前はここで死ぬんだ。それなのに情報を引き出して何の意味がある」

チャミュエルは虫でも見るかのように言い捨てる

「そりゃあ、冥土の土産に決まっているだろう」

「そうか、何も持ちえず死ね」

それを合図に天使が一斉に襲い掛かる

奴らは全員剣を持っていて飛び回りながから斬りかかる

斧で応戦するがまるで当たらない。なんとかこいつらの攻撃の回数を減らすのにやっとだ

持っている手榴弾はあと一つ

それだけでこいつら全員を倒せはしないだろう

特にチャミュエルとかいうやつは、ソラスとの戦いぶりを見るに一対一で戦っても勝てるかどうか怪しい

今はとにかく致命傷を受けないように時間を稼ぐ

せめて彼奴等が森を抜ける時間は作らないと

天使たちは攻撃の手を緩めないが、こちらの斧を警戒してのことか、ヒットアンドアウェイで連携している

そんな中チャミュエルは何もせずこちらをただじっと見ている

時間が稼げるので都合がいいが、なんとも不気味だ


何度目かの攻防の時に天使の一人の剣を斧で弾いた。その天使は体勢を崩したので、さらに追撃を入れた

斧は天使に届くことがなかった

斧と天使の間には黄色がかった透明の盾がそれを遮った

ロゼッタと同じ技だ

ぬかったあれはやはりこいつらも使えたのか

そう思いこの場を去ろうとした時に天使たちに一斉に剣を突き刺された

背中に、脇腹に、左足に

力を振り絞って斧を振り回すことで、やつらと距離を開けることはできたが


「これでもう貴様は終わりだな。それとも仲間に託した気にでもなっているのか」


託す

そうかあとは彼奴等に託すしかないのか


託す、俺が彼奴等に何を託すことができるというのか

思えばずっとそうだ。俺は彼奴等に嫌なことを押しつけていたにすぎない。

アロイス、ルードウィクに王の力を話さなかったのもこの一時の平和に浸りたかっただけだ

それを言うことで変わるあいつを見たくなかっただけだ

戦いは避けられることがないということは分かっていたのに、それに備えてやらなければならなかったこともたくさんあったのに

ただ村の相談役を気取っていい気になっていただけだ。こんなことじゃあの子を託してくれたあの方達に顔向けが出来ない

テオはその戦いを見据えて、幼い時から暗躍していた。あいつこそ何もかも忘れて生きても誰も責めはしなかったのに

そんな俺があいつらに何を託せる、何も託せやしない

年寄がこれからを生きる若いやつに苦労を押しつけるなんてなんと愚かなことだ


後悔なら死んだあとにしたらいい、今は一秒でも一瞬でもあいつらのために何かしないとと心を鼓舞してなんとか体を動かす


「チャミュエルさんよ、いつまで高みの見物をしているつもりだ。降りてこいよ」

チャミュエルは何も反応しない

配下の天使たちはこちらに向かってきた

それを剣を受けるのを覚悟に斧を振り下ろす

天使は剣で受けず盾で受けた


ハァァァァァァァ

すべての力を込めるて斧を振るうと盾にヒビが入り割れて天使を切り裂いた


その天使は声をあげながら、気づけば泥の塊になっていた

その隙にまた切られた。もうどこをどれだけ切られたかはわからない

どうでもいいことだ


「チャミュエルさんよ、早く来いよ。早くしないとこいつら全員ぶっ倒すぞ」

仲間を殺されたことでかチャミュエルの顔は怒りで歪んでいた


天使たちは先ほどの光景を見ていたためか、迂闊に近づいてこなくなった


そのまま時間を過ぎ去るのも待つのも良かったのだが、体がどんどん冷えていくのを感じてそれは悪手だと感じたのでうまく動かない体を必死に鞭を打ち奴らの方に足を進める


「何をしている。あいつはもうまともに動けやしない、早く止めをささないか」

「そうだチャミュエルさん、一つ教えといてやるよ。託すってのはな簡単にできることじゃねえんだよ。必死にやって、精一杯やって、やっと出来るものなんだ」


我王テオに、我が子ルードウィク、アロイスに出来るせめてものことを今からやる


「ビビってないで、早く来いよ」

こう叫んでやると

奴らはこちらに斬りかかるもう斧を振るう力はないので動かずそれを受け止めようとする

天使たちがそれに油断をして盾を発動してないのを確認して

「俺は負けない、俺に負けはないんだよ」

手榴弾を爆発させた


テオがアロイスが皆がいるのだ

彼らならきっとうまくやってくれるはずだ

俺の死は敗北にはならない

そう思うと死への恐怖が少し安らいだ気がした



今までより、大きな爆発のあと周囲に煙がたった

煙が次第に晴れていくと人影が一つだけ見えてきた

それがあの大柄な斧男の物だと判別するのに時間はかからなかった

あの爆発のなか膝をつかなかったことに感心して近づくと男は全身黒焦げで生きていないと判断した時

斧を私に向けて掲げたが、私に振り下ろされることはなくその場所で斧を地面に落ちた


それに私は素直に感心した

今回は私の敗北だ、この男に免じてここは引くことにしよう

死してなお、主のために戦い続けようとしたこの男に

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