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nobody   作者: 福郎 犬猫
3章 冠のない王様
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驕り驕られ2

俺たちは森の中へと入る

森の中は静かで何も変わった様子はなかったが、

「お前ら、警戒を怠るなよ」

「大丈夫だよじいちゃん、今更獣何かに遅れは取らないね」

ルードは暢気なものだった

彼からしたら急に大きすぎる力が手に入ったのだから、仕方がないことかもしれない

本音を言うなら実戦経験を積ませたいのだが、王の力に張り合える相手などそうはいない。なんとももどかしい状況になっている

当の本人はそんなこと気にする様子はなさそうだ


森の中を進んでいると


「結局あいつは何なんだよ」

ジギが小声で話しかけてくる

あいつとはソラスのことだろう

「俺の従者になりたいそうだ。お前も知っているだろう」

「だから、どうしてそれを信じられるよだよ」

「あいつが何か考えってるって」

「そりゃ、そう考えるのが自然だろう。お前は何も感じないのか」


ソラスと始めて出会った時のことを思い出す

俺が王になることを誓った日の夜のことだっただろうか

誰もいない聖堂に1人でいると


背後に急に気配を感じて振り向くと男が片膝をついてかしこまっていた


「テオドルス・フォン・エスターヘルム様、よろしいでしょうか」

「何だよ」

「私はソラスと申します。この度は是非とも貴方様にお仕えさせて頂きたくお願いにあがりました」

「お前は、アバドンとかっていう奴の仲間なんだろう。敵討ちは考えないのか」

「そんなこと貴方様に滅相もございません」

「なぜだ」

「私とアバドンは親を同じくする家族ではありますが、目的を共にする同士というわけではありません。アバドンも貴方のような方に始末されて本望だったでしょう」


ソラスが長々と話している間に考える

たしか瞬間移動のようなことをして、天使の隊長格の存在と互角にやりあっていたと聞く

こいつは俺を殺そうと思えばすぐに殺せるはずだ


「で、お前の目的は何なんだ」

「それは新しい時代の支配者となる方の道中をこの目で見ることです」


支配者、なんとも大層な言葉だ

「その支配者はお前達の親のことじゃないのか」

ソラスは俺の言葉を聞いて、嬉しそうに目を見開いた

「やはり、貴方様はご存知でしたか。私は絶対的な存在に終止符を打つものの存在を望んでいるのです」

「それは家族を裏切ることになってもか」

「はい、大変心苦しいことですが、この熱情には逆らえないのです」

「構わないよ」

ソラスは俺を見る

「だから俺の従者になりたいなら好きにすればいい」

「なんと寛大なお方なのでしょうか。誠心誠意貴方様にお仕えする所存でございます」


「それは家族も殺すということか」

「それはご容赦願いたい。私は貴方の従者であると同時に彼らの家族でもあるのですから」


つまりこいつは自分では殺さないが、殺されることは容認するそうだ

多少問題もあるが、こいつらから接触してくれるのは願ってもないことだ




「まあ、多分大丈夫だろ」

「多分って何だよ」

ジギは俺の返答に納得はしなかったようだ


気づけば森の奥へと進んでいく

そこまで来てやっと違和感に気づいた

静かすぎるのだ

たしかに動物たちが寝静まっている時間だが馬が駈けているのだ

多少の音は聞こえてくるはずなのに、それが一切聞こえなかった

この違和感に全員気づいたようで辺りを警戒していると



「今更、自分たちの状況を理解したか」

上空から聞いたことのある声が聞こえる

月明かりだけで、しっかり顔を見ることができなかったが


チャミュエルだ

チャミュエルと4人ほかの天使が見える


やはりというか、こいつらは俺達の同行を覗っていたのか

俺たちに付けてきて、街への退路を絶って現れたようだ


「言った通り、お前を殺しに来たぞ。テオドルス」

「その割には、随分と部下が少ないじゃないか」

「剣の王の前では数など意味がない。わざわざ的を増やすだけだ」

「少なくなっても、的であることは変わらないぞ」

「この木で覆われている場所でもか」


天使たちは一斉に木々の中に身を隠した

今のルードでは、この状況で天使を狙うのは難しいだろう

俺は話している最中に準備をしていた霧の魔術を発動すると同時に叫んだ

「進め、早く前に」


俺達は一斉に馬を走らせた

霧で方向感覚が鈍ってしまうが、森さえ抜ければ王の力で迎撃できる


なんとしても早く森を抜ける俺たちに対して天使たちは木の影から俺たちに斬りかかってくる


「テオ」

ルードが叫んで、剣を俺の背後に出現して受け止める

さらに右からはチャミュエルが来る

「させませんよ」

ソラスが転移して俺の前に現れて守る


今度はレーヌの方に一人来たが、同乗していたロゼッタの盾で防ぐとすぐに木の陰にかくれた

オルティノとオルゲンは自分たちで捌く


こうしてなんども天使の攻撃を受けている内に徐々に俺へと狙いが集まる


こいつらの狙いはルードでも、ロゼッタでも、ソラスでもなく、俺だ

初めはある程度均等に狙うことでこちらの密集を避け、守備において厄介なロゼッタと俺を離す算段だったようだ


「わざわざ天使様がただの人間何か狙うのかよ」

「何度も言わせるなお前を殺すと、ほかの者はそのあとでいい」

チャミュエルは木の影からはっきりとした殺意を出してそう答えた

そう答えたチャミュエルはまた俺に斬りかかるとオルゲンが馬から飛び込んでそれを捌いた


「全員止まれ、馬の上では返ってこちらが不利だ」


オルゲンが叫んだ

オルゲンの叫びに俺たちも相手も反応した

少し開けたところに着くと

急いで集まって、陣形を組む


「これでどうなるって言うんですか」

「あのままでは奴らの思惑通りにしかならんだろ」


「ソラス、お前は先行して先に港に行けるか」

ソラスは答えず、俺を見る

「出来るのか」

「ええ、事前に地図を見ましたので可能です」

こいつは俺の言うことしか聞く気がないらしい


「なら、パウルという男に出港の準備をさせろ」

「私が行って、相手にされるとは思いませんが」

「これを持って行け」

俺は区長の奥方からもらった書状を取り出して、ソラスに渡した

頼むというとソラスはわかりましたと言って姿を消した


「じいちゃん、船の出港を急がしたからって、あいつらをどうにかしなきゃ意味ないだろ」


オルゲンはルードをじっと見たあと、俺を見て口を開いた


「ワシが残る」

「何言ってるんだよじいちゃん」

「そうですよ。あなた一人が残ったところで素通りされるのが落ちです」

ルードとロゼッタが抗議の声をあげる


「ちゃんと考えてある、奴らがワシを狙いたくなるようにな」

「それだと死ぬことになるじゃないですか」

「そうよ、オルゲンさん馬鹿なことを言わないで」

「馬鹿なことを言っているのはお前達だ。俺達がこれから相手にしようってのは天使やら魔人とか言う化け物どもだ。それにそいつ等にも親玉がいるだろう。そんな相手に誰も死なずに勝てるってのか、戦争はそんな甘いもんじゃねえぞ、若造」


オルゲンの言葉にジギとレーヌはだまった


「俺は行くべきだと思う、今優先すべきはテオとルードの命だ。動きながらじゃジリ貧になって全滅しかねない」


「そうだ、それに海にさえ出れば奴らが隠れる場所もないしな」

オルゲンはオルティノの援護にキブンを良くしたようだ


「わかった、オルゲンお前はここに残れ」

「はい、承知しました」

「ただ一つだけ言っておく。俺はお前を諦めるつもりはない」

オルゲンは不思議そうな顔で俺を見る


「死んでもお前は俺の臣下だ」

「なんともったいないお言葉を」


俺たちはオルゲンを残して、先に行くことに決めた

オルゲンの言った通り、この先何の犠牲もなく俺たちが勝てることが出来ないのは、俺が貧弱だからということを心に刻む


例え誰が死のうと俺は前に進まなければいけない、それこそが俺が彼らの命に返せる唯一のものなのだから

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