幕間 自ら翼を折る
私は何故こんなところにいるのだろうか
そうだ姉さんを追いかけて来たのだった
姉さんは変わった人だったけど、誰にでもやさしい人だった
ただ人何かに興味を持つのは、当時から辞めるべきだと思っていた
誰も外界にましてや人に興味を持つような者は誰もいなかった。私達は多少の姿形は違えど主から作られたのだから、当然のことだった
でも姉さんだけは違った
いつも外界はどんなところだろうとか、人とはどういうものかなどと思いを馳せていた
姉さんと呼んでいるのもそう呼んだ方が姉さんが嬉しそうにしたからだ、この私の感情も何かおかしいのだろうか
姉さんも私も主から認められていない感情を持ってしまったのだろうか、それとも既に認められているのだろうか
感知しているであろう方は、何もおっしゃってはくれない
それでも私は姉さんとの生活に幸せを感じていたので、何の文句もなかった
ある日姉さんが外界に行くと言うときまでは
そんなことをすると二度とここには戻れない。もしあの方がお怒りになられたのなら、存在ごとなくなるかもしれない
私は必死に止めたが、姉さんはそれでも己の好奇心と人との共存という理想に抗えなかったのだ
姉さんはどこで学んだかは分からないが魔術を嗜んでいた。そのことを知っているのは私だけだったので、ねえさんが魔術を使用して外界に行ったのは想像に容易かった
姉さんが消えてから数年がすぎた
誰も姉さんの消息はわからなかった、あの方でさえ
それとは別に外界で戦争が起こった
私が生まれてから数百年が経つが王の死ぬ戦いは初めてだった
その時に姉さんのことを思い出した
姉さんはどこで何をしているのだろうか
何か手がかりがあるかもしれないと姉さんが使っていた部屋にいく
そこは既に片付けられて何も残っていないのかもしれない。姉さんを諦めるにちょうど良い理由が欲しかったのかもしれない
その何もない部屋
私達は個別に部屋を用意されているが、特に何もする必要がない
睡眠も食事も汚れることもない私たちには本来必要のないものだ
ほとんどはその趣味の物を飾っているに過ぎない。これではまるで人の真似事のようだ
姉さんの部屋に行くと、そこは昔と何も変わっていかった
何処で手に入れたか分からない外界の書物に溢れていた。その中に魔術書があった
これはあの方の言語を用いたもので間違いない
その中の一文だけ読み方が書いてあったので、なんの気無しにそれを読み上げてみると、気づけば私は何処か知らない森の中にいた
しばらく歩いて人の集落を見つけたことで、ようやく私が外界に来ていたことに気づいた。そこからは姉さんの足取りを探したが、見つかることはなく
数年を彷徨ったころ私はある少年に出会った
あろうことかその少年は私を見るなり、ペネムエの仲間かと言った
外界で姉さんを知っている人間がこんな少年だとは
少年に姉さんのことを尋ねるともういないと答えられて、私は深い絶望とともに少しの安堵を感じた
少年は姉さんに子供がいることを教えてくれた。少年の計らいでその子を一目見るとなんとも言えない懐かしさと愛おしさが私を襲った
まるで姉さんの、いやあの方の生き写しのようなあの子を守りたいと姉さんが望んだことの行く末を見守りたいと思った
そのためにはあまり私がその子の側にいることが都合が悪いことは分かっていた。そして天界に戻るすべもない
途方に暮れている私に少年はある村の場所に行くことを勧められた。不審に思っている私にその村なら私でも生活が出来ると運がよければあの子と自然に出会うことができるという
不思議な少年だった
この子は人よりも何処かに私たちに近い何かを感じる
しばらくは彼の言うことに従うことにした
当時の私はあの子の行く末を見守るというのがどういうことかまるで理解出来ていなかった




