傾慕3
マティアス達は一息ついたので、報告をはじめた
スタッドの街であったことを
モンタグ村の住人がいた事
テオがいて彼は血こそ繋がっていないが、レオノールとディートリヒの息子であること
オルニアスの仲間ではあるグシオンとアバドンが現れて、グシオンはマティアスの父親であるアンソニー区長を殺して、アバドンはテオと差し違えてたこと
ノルベルト先生がテオのために自分の命を引き換えにテオを生き返らせたこと
天使のような翼を持ち空を飛ぶ人間が現れてテオを連れ去ろうとしたこと、ロゼッタがその天使の仲間であったが今はテオ達と共にいること
アロイス君が剣の王であったが、テオを王とすることが決まったこと
テオが古代魔術である詠唱術と新魔術である刻印術を扱える
ソラスというオルニアスの仲間がテオの従者になった
理の騎士の中に天使と繋がっており、その人がテオの両親であるレオノールとディートリヒを殺したこと
いきなりこれだけのことを言われるとすぐに飲み込むことは出来そうにない
ただ真っ先に気になるのは、テオのことよりもノルベルト先生のことだ
あの先生が亡くなるなんて
「本当にノルベルト先生は死んだの」
誰も何も答えてくれない
「そうだよ、一時は死んだテオのためにノルベルトさんは自分の命をかけたんだ。でもそれは自分の孫のためだったんだ」
「テオ君が死んだってのはどういうことなの」
「ノルベルトさんは魔力切れが原因だって、それでも先生は助けられるって言って本当に助けたんだ」
「ノルベルトさんとアンソニー区長の遺体はどうしてあるんだい」
「剣の国の魔術師が防腐のための魔術をかけてくれて、そのまんまです。ただ区長の方は爆発で巻き込まれたことで個人が特定出来る状態じゃないですけど」
私達の質問をラウルさんが答えてくれる
ノルベルト先生が亡くなった
そのことがまだ信じられない。やっとテオが家族だとわかったのに
でもだからこそ先生はその唯一の家族のために命を落としたのだから
「まとめるとオルゲンを筆頭にモンタグ村やテオ君が剣の国の関係者で、そこに王の力を持つ者、天使のような存在、人知を超えた怪物がスタッドの街に集結しているということなんだね」
「現状の話ということならそうですね」
「あとはその天使が私達の敵かどうかだが」
「でもあいつらはテオを狙っていたんですよ」
「テオ君の敵かもしれないが我々の敵とは限らないんじゃないかな」
「それはそうですけど」
「まあ、天使の目的がわからないから警戒は必要だけど」
「あと、天使と魔人は少なくとも協力関係でないことは確かです。ソラスは戦いましたし、グシオンは天使が現れるからって退避していきましたし」
「その魔人もソラスという者が異端に思えるよ。少なくとも魔人の目的は全ての国の王の殺害だったはずだ。それなのにソラスは王の力を無視して、何故テオ君の従者になったかだが」
「それは、わかりませんけど」
「いや、このことをこれ以上ここで話しても仕方がない。それにソーニャ様」
急に呼ばれたソーニャの体がビクついた
「貴方様はもう少し、ご自身の立場を考えて行動してください。私は各所での対応で胃に穴ができそうですよ」
ソーニャは俯いたまま
「ごめんなさい」
「お嬢様を責めないでください。お止めしなかった私にこそ非があります。責任は私が取りますので」
その光景を見ているベルトラン隊長は笑顔だった
「別に誰かを責めるつりはないんですよ。ただ姫様がどうしてもというのなら、協力してほしいことがあるんですよ」
ソーニャとジゼルさんは顔を見合わせた後、ベルトラン隊長を見るのだった
今、私は以前取り調べを受けた会議室にいる
ベルトラン隊長には今回の調査についての報告なので参加するように指示を受けた
私よりもヨランダさんの方が適任でなのにどうして私なのだろうか
私の他にはマティアスもいた
彼には申し訳ないが、彼よりもラウルさんの方が適任である気がするが隊長の意図は読めない
目の前には前の時のように騎士団の団長と各隊長と顧問、王子と王女が並んでいる
今回は騎士団長ではなく、バティスト顧問が口を開く
「今回の自治区への遠征は、ベルトラン君の独断と聞いておるがそれは本当かね」
ベルトラン隊長の独断
それはおかしい騎士団長からの指示でだったはずだ
それでも隊長の回答を待たずに顧問は話し続ける
「いくら王自ら組織した部隊とはいえ、このような勝手をして許せるのかのう」
「その通りだ。お前の隊はあのテオ・クレマンがいたんだぞ」
「それに何故ソーニャ様を連れ出して何を考えている」
「何を企んでいるのだ」
顧問を筆頭に私達を凶弾するかのような言いようだった
「皆さん落ち着いてください。こちらにも理由がありまして」
「ほう、理由とは何だね。内容によってはこの部隊の解散も考えねばならな、オーギュストよ」
顧問に名前を呼ばれた騎士団長は難しい顔をしながらベルトラン隊長を見た
「ベルトラン、話してみろ」
「ちょっと待って」
それを遮ってソーニャが叫んだ
「全部、私のわがままなの」
それを見て騎士たちは静まり返った
ある1人を除いては
「姫様、友人をお庇いになられているつもりかもしれませんが、もしここで彼らが良からぬことでも考えていたらこの国は本当に終わりになるかもしれない。それにローラン区長とノルベルト殿死について、どのようにご説明するおつもりですか」
「それは」
「それは私からお話しましょう」
ベルトラン隊長がやっと口を開いた
「まず、ソーニャ様とノルベルト殿が自治区に行った経緯ですが、ノルベルト殿はテオ君が自分の孫か確かめるためにここにいるマティアスとソーニャ様に相談されたのです」
「何故我々にしなかったのだ」
「当然反対されると考えたのでしょう」
「だとしてもだ。そこにいる区長の息子は騎士だろう、そいつには報告する義務があるはずだ」
「ええ、彼はちゃんと私に報告しましたよ」
「貴様の独断と言うのではあるまいな」
「いえ、私も騎士団長とジュリアン王子には報告して許可を得ております」
「それは本当ですか騎士団長、王子」
聞かれた二人は静かに驚いているように思えた
「さっきから何なのよ。私が自分の騎士をどうするかなんて私の勝手でしょ」
ソーニャがまた大声で行った
「どういう意味ですか」
「だから、どうして私の護衛騎士をどこに連れ出すのに誰かの許可を貰わなきゃいけないのよ」
全員がまたもソーニャの言うことを飲み込むのに時間がかかっていと
「どういうことですかな」
「だ、か、ら、独立部隊は私の護衛騎士になったんだからいいじょない」
「姫様、勝手を言ってはいけません」
「ちゃんとお兄様とオーギュストには行ったわよ」
「どういうことだ、オーギュスト」
「オーギュストに言ったのは僕なんだ」
ジュリアン王子が言った
「オーギュストに相談していたんだ。ソーニャにも護衛騎士をつけるべきではないかと」
「だからといって何故よりにもよって独立部隊なのです」
「ソーニャの性格を考えると当然のことだろう、だけどマティアス1人に務めさせるわけにはいかないと思っていたところに」
「私が独立部隊をソーニャ様の護衛騎士にすることをジュリアン様に進言したのだ」
騎士団長もそれに続くと周囲には混乱の声が広がる
「なるほど、ソーニャ姫と独立部隊が共にいた理由はわかった。では自治区へ行く許可をしたことにはなんと説明する」
混乱の声が止み、皆が騎士団長を見る
「私がそれが最善だと判断したに過ぎない。彼らの報告を聞いて、なお内輪で終わらせられる気でいるなら首でもなんでも差し出そう」
騎士団長がいささか強引な物言いであるが、言い切る彼に誰も責めることはなかった
「さあ独立部隊よ、報告を始めてくれ」
ベルトラン隊長がマティアス達から聞いた報告を話した
ベルトラン隊長は私達が聞いたものをより順序だてて説明する
だが、その場では騎士団に天使と通じているものがいるということやテオの側に天使と魔人がいることも話はしなかった
「どういうことだ、剣の王が現れたというのは」
「それにテオ・クレマンが王族の縁者でさらに王になったとは」
「天使とは、魔人とはなんだ」
「デマカセではないのか」
次々に説明を求める声があがる
「今、お話したことはそこにいるマティアスとソーニャ様が実際に体験したことです。そうですよね姫様」
「ええ、ベルトランの言うことに間違いはなきわ」
「それでも信じられないと言うなら、一度ご自身の目でで確かめに行かれてはどうですか」
ベルトラン隊長の言葉に誰も応えなかった
「今我々は何一つ確かな情報がないことはわかったか。顧問の言うように軽率な行動が国の滅亡に繋がることを理解したことで今後について決めようではないか」
騎士団長の言葉に各隊長の顔つきが変わった
私達の調査報告のはずが、この国の今後を話し合う会議に変わった




