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nobody   作者: 福郎 犬猫
2章 少年は我が身で世界に跡を残す
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戴冠7

あれから3日ほど経っていた

建物の被害は甚大だったが、死傷者は比較的少なかった言える

アバドンはこの街に来てからしばらくは俺の名前を叫んでいたらしく、その間に逃げることが出来た者が大勢いたらしい


ただ亡くなった者は大勢いる

アンソニー・ローラン区長

ノルベルト・クレマン

他、騎士が26名で市民が17名

これは俺が犠牲にした数字だ

全てが思い通りではないが、俺がこの街に戦いを持ち込んだ。それを仕方がないことだと割り切って

そんな俺がまた生き残ることになるとはな


今から区長の家の一角で話し合いの場が設けられる

話し合いといっても、俺が全員に事情を説明するだけなのだから

問題はどこまで話すべきかだが



部屋には

オルゲン、ジギ、オルティノ、ヒューゴ、レンナルト、レーヌ、アロイスことルードウィク

反対側に

マティアス、ラウルが、ソーニャ、ジゼル

と国に別れて座っていた

どこに座ろうか考えていると

「あらテオさん、いやテオドルスさんはこちらに」

区長の奥方に上座に通される

「テオで構いませんよ」

と言ってから座る


奥方もマティアスの隣に座る

「さてと何から話そうか」


誰も話す気配がないので、とりあえず言ってみたが、誰も続かない


「あの、よろしいですか」

ロゼッタが手をあげた

「テオドルス・フォン・エスターヘルム、あなたは何者なんですか」

「それどういう意味だ」

「何故あなたが我が主しか使えないはずの言語を使えるのですか」

「何でって勉強したからだよ」

「そういうことではなくて」

「お前も心当たりくらいあるだろ、そういうことだよ」

ロゼッタは少し、納得がいかないようだが口を閉じた

「で、お前はなにもんなんだよ」

今度はマティアスからだ

「ディートリヒ・フォン・エスターヘルム。つもりは先代の弟の息子だよ。血はつながっていないけど」

「母親は、レオノール・クレマンなのか」

「ま俺、拾われただけだから、そっちとも血の繋がりはないけどな」

つまり俺はディートリヒとレオノールに育てられこそしたが、その実血縁関係ではないので王族の血は受け継いでいない


「それじゃあ、今度は俺についてだ」

ルードウィクが言うので、オルゲンを見るとまだ何か悩んでいるようだった

俺が見ていることに気づいて覚悟を決めたようだ

オルゲンは話し始める

「お前は先代の剣の王の子だ、アロイスとは俺が仮初でつけた名前だ。本当の名前は

ルードウィク・フォン・エスターヘルムだ」

「どうしてそんな大切なこと話してくれなかったんだよ」


「本当にすまない。ただ何も知らないお前との生活が楽しくてな、それを壊すのに躊躇しちまったんだ」

「だからって、俺に力があるなんて最初から知っていたら、こんなことには」

「その辺にしてやれ」

二人の仲裁をオルティノがする

「俺にはオルゲンの気持ちがわかる。息子に何もかもを背をわせる決断なんてそう簡単にできるもんじゃない」

「でも」

「正直こちらとしては家族関のことはあとにしてほしいんだけど」

ラウルがわざと空気を読まずに切り込む

「結局は、ルードウィク様が剣の王でまだ幼いからオルゲンとテオが匿っていたってことでしょ」

「概ねそうだよ」

ラウルの総括に正しいと伝える

「それよりもグシオンやアバドンとかっていう化け物とあの天使は何なのさ」

「アバドン達のことは正直俺もよく知らないんだ。天使の方は」

とロゼッタを見る

「構いませんよ。この人達はあの子の仲間なのでしょう」

「天使は女神の従順な下僕ってところかな、俺もロゼッタ以外の天使を見るのは始めてだけど」

「だからその天使って何なんだよ」

マティアスがしかめっ面で言う

「目的までは分からない、女神が作った人形だよ。お前もあのお伽噺は知っているだろ」

「それはあんなのお伽噺だ。しかも千年以上前の話が事実とでも」

「俺はそう考えている」

「根拠は」

「あの光景を見て、全くの洞話とも思えないだろ」

「お前もあんなのは始めて見たんだろ。なのに前から知っていたそれは何故か聞いているんだよ」

「ごめん。それはまだ話す気にはなれない」

「何だよそれ」

「それならこの子に聞くしかないけど」

ラウルがロゼッタを見る

ルードウィクがロゼッタを隠すようにするが、それをロゼッタが押しのける

「私も話すつもりはありません。私は目的があって彼らと共にしていただけなので、仲間というわけではありませんし」


「お父様については」

「そうだな、ブレイズの死因は知っているよ。でも話せない」

「話せないじゃないぞ、こっちは次の王も現れていないってのに」

「でも、代わりのものは用意したはずだ」


代わり、マティアスはその意味がわかったらしい

「代わりって、あいつを物みたいに言うなよ」


「オッケー、了解。よくわかった」

ラウルは立ち上がった

「おい」

「マー坊、諦めろ。俺等だけじゃ判断できない。報告して上に指示を仰ごう」

「テオのことはどうするんだよ」

「それも含めてだ。今やテオドルス殿は血縁はないにせよ、剣の国の王族だ

それにこの人達が何もせずに見守ってくれるとも思わないだろうし」

マティアスはまだ諦めきれないようだ

「期を見て、使者を送るよ。それで勘弁してくれ」


「馬車は明日の朝に手配した。関所までだがな」

ジギが言うと

「お前、ジャンだろ」

マティアスが叫んだ

「それは潜入していた時の名だ、今はジギと呼んでくれ」

「くそ、わけがわからない」

「この事は全部報告していいってことでいいんだよな」

「ああ、好きにしろ」

ラウルが他の人間を促して部屋を出る

といってもこいつらは今日のところはここで寝泊まりするのだが

区長夫人も何かと忙しいので席をはずす


「さてと今後についてだが」

オルゲンが切り出す

「俺は少ししたら、この街を出るよ」

「何でだ」

ジギが尋ねる

「俺は天使にも化け物にも狙われているようだからここにいるとこの街がまた戦場になる」

「なら俺も行く」

ルードウィクが声をあげる

「お前は王としてこの街を守るんだろう」

「俺、王にはならないよ」

ルードウィクの言葉に、皆が驚いた

特にオルゲン、レーヌ、ヒューゴ、レンナルトの反応は大きかった

「何を言っているのですか、貴方が王にならなくてはこの国はどうなるのですか」

「そうだ、今まで俺たちはなんのために耐えてきたのか」

ヒューゴとレンナルトが反対する

「テオが言っていたじゃないか、王や神がいなくても自分たちだけでやっていけるって」

確かに本心から言ったが

ヒューゴとレンナルトは少し怯んだ。二人も思うことがあるのだろう

「それに俺に王は務まらないよ、もっとふさわしい人がいる」

ルードウィクは俺を見ながらそう言う


「いや、しかし王の力を継承しているのはルードウィク様なのですよ」

レンナルトは食い下がらない

「その俺がテオを推薦したんだ、それじゃ駄目か」

ルードウィクも折れない

「あのさ、悪いけど王になろうがならまいが、俺はこの国を出るぞ」

「何処へ行くというんだ」

「とりあえずはアカシの国バングラフかな」

「どうしてだ」

「どちらにせよ。全ての国にこのことを伝えないといけない。それなら明の国を拠点にするのが都合がいい」


この世界は西大陸に理と剣の国があり、東大陸には命と牙の国がある

明の国はどの大陸にも面していない海上の中心に位置している島国だ


「そういうことか」

「それよりも誰が王をするかだが、オルゲン二人のことをよく知るお前の意見を聞きたい」


ヒューゴがオルゲンに言う

オルゲンはしばらく考えてから話す

「正直俺にも何がいいのか分からん、王の力がないならばテオが王になるべきだと思う」

「実際、アバドンとかいう化け物を倒せたのはテオがいたからだしな」

オルゲンにジギが続く

「でも彼がいくら魔術に長けていたとしても、限界があるわ。現に彼はそれで一度命を落としたのだから」

レーヌが反論する


「だからさ、強いだけが王じゃないだろ。力以外ならテオの方がずっとすごいんだ」

「それもそうですが、王の血族でないと」

「テオはディートリヒ・フォン・エスターヘルムの息子ではあるが」

「問題は血よ。彼が王家の血を継いでいない以上、将来似たような混乱が起きるわ」


「それについていいか」


俺は皆の意見を一通り聞いて口を開く

「王の力をなくすかもしれない」


全員が俺を見る

「どういう意味だ」

ジギの問に答える

「俺はこれから女神と邪神両方を敵にする。その過程で王の力がなくなるかもしれない」

「お前の話が本当ならどうして女神はお前を狙うんだ」

「詳しいことは分からない。ただ俺の両親のディートリヒとレオノールが死んだ原因は女神の使徒だ」 

「それは本当か」

「ああ、恐らくそいつは理の国にいる。騎士の誰かだ」

「だからお前騎士をしていたのか」

「理由はそれだけじゃないけど、残念ながらそいつが誰かまでは特定できなかったがな」

「そのことは理の王は」

「知っている、というか俺が教えた」


また全員が黙る

「邪神の方は」

またも質問したのはジギだった

「邪神はとっくに復活しているんだ。恐らくアバドンやグシオンは邪神が作り出した化け物何だろう」

「どうしてお前がそれを知っている」

「両親が、二人が死んだ日に会ったからだよ」

「それは本当なのか」


「そうだよな、ソラス」

「お呼びでしょうか、我が主よ」


何もないところから男が現れる

「こいつ、天使と戦ったやつだ」

「ソラスと申します。この度はテオドルス様に御使している身でございます」

「こいつは敵じゃないのか」

「どうなんだ」

「私はテオドルス様の忠実な下僕ではありますが、特に人間の味方でも敵でもございません」

「お前はこいつを配下にするのか」

ソラスは二日前、あの戦いの次の日に俺の所に現れた

何でも俺に強い興味があるらしく、俺の側で行く末を見届けたいとか。その間は俺の従者として仕えたいそうだ

戦力が心許ない現状では、ありがたい話なので快諾すると

こいつは少し意外そうにしていた。従者になるにあたっていくつかの取り決めを決めて、こいつはそれを遵守するらしい


「もう既に俺の配下だ」

「でも、こいつはあの惨状を起こした奴の仲間なんだぞ」

「それは違います。アバドンやグシオンも生まれを同じですが、仲間ではございません」

「どういうことだよ」

「何度も申しておりますが、今はこのテオドルス・フォン・エスターヘルム様の従者でございます」

「その証拠にあいつらの情報をくれるんだな」

「それは出来ません。仲間ではありませんが彼らは家族も同然、そんな彼らを売ることなど出来ません。それにこれは既に主様からお許しを貰っております」


また、全員が俺を見る


「信じるかは好きにしろ。俺が何をするかはもう決まってるんだ。着いてきたいやつだけ来たらいいさ」


そういってこの場を立ち去る

ルードウィク、王の力を持つ者に知らせるべきことは教えた


皆の前では啖呵を切ったが、本当はあのとき死ぬはずだった。それを祖父や仲間たちが救ってくれたんだ

それが偶然が重なったとはいえ生き残った

これもあいつが言っていた神の恩恵なのだろうか。だとしたら随分趣味の悪い呪だ



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