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nobody   作者: 福郎 犬猫
2章 少年は我が身で世界に跡を残す
34/86

戴冠2

俺達は関所の町についた

この町は特に変わった様子はない

以前ベルトラン隊長が調査した時も、モンタグ村については山火事のせいで住めなくなったので移り住んだという情報しかなかったと聞いている

関所の衛兵も同じことしか言わない。あの村が山火事の被害がないことくらい一目確認すればわかるのに衛兵は上からの指示で誰かが確認したと聞いていると言っていた

その確認したという衛兵は誰かなど誰も知らない

ここで聞き込みをしてもいいのだが、関所の手続きが終わったので先を急ぐことにする

ジュリアン様が通行許可証を用意してくれたので、自治区にも難なく入れる

まずは父上に会って事情を聞くべきだ、父上なら何か知っているはずだ


道中はこれと行って何もなく進むことができた

多少道の整備が行き届いておらず、馬車が揺れることにソーニャ様は文句を垂れていたが、ジゼルとノルベルト先生に窘められるくらいだった


「うかなそうな顔だな」

ラウルが声をかけてくる

「別に」

「無理するなよ、自分の父親が何をしているか心配だって顔に書いてるぞ」

「そんなこと」

「ないわけ無いだろ。そこまでお前の目は節穴じゃないだろう」

「でも」

「気楽に考えようぜ、案外俺達の都合のいいようになってるのかもしれないし」


悔しい、慰められたことではなく

父も仲間も信じられずにいる自分が

父上は昔から真面目で優しくて、人の嫌がるようなことでも笑って引き受けるような人だった

影では風見鶏なんて心無いことを言われているのは知っているが

全ては王と国のためだからと自治区の区長になったことを誇らしく思っていたはずなのに


テオについてもそうだ

年下だったけど、頼りになるあいつにどこか憧れのようなものを感じていたし、友達のように思っていたはずなのにあいつを信じていいか悩んでいる自分が嫌だ


「マティ」

名前を呼ばれたので俯いていた顔を上げると両頬を力強く引っ張られる

「ふぉーにゃふぁま」

頬を引っ張る相手の名前を呼ぼうとするがうまく発音できない

「マティ、事情は知らないけど、せっかく一緒に出かけられるのよ。もっと楽しそうな顔をしなさいよ」

彼女は笑顔で言う

正直馬鹿らしいことを言われていると思うが、自分が考えていることも馬鹿らしいことなのだの思えた

「ふぁい」

彼女は返事に満足したようだった

そうこうしている内にスタッドの街についた


スタッドの街に着くとまず父上たちのいる家に行く予定だ

行ったことはないが、この街で一番大きな家なので、すぐに分かった

家に向かう途中に周囲に注意しながら移動するが、特に変わった様子はない


両親の家に着くとベルを鳴らす

しばらく待つと家の中から足音が聞こえてくる

扉を開けたのは母だった

「マティなの、どうしてあなたがここにいるの」

両親にはここに来ることを伝えていないので、何故自分がいるのかわからないという反応に普通なら納得するだろう

ただ母なら自分との再開を驚きながらも喜んでくれるはずだ

この反応はおかしい、その違和感に嫌な想像が頭をよぎる


母を押しのけて家の中に入る

呼び止められる声を無視して応接室であろう部屋の扉を開けると


そこにいたのは

いつかモンタグ村で出会った少女とバイルの町に出会った獣人がいた

確かロゼッタという名前で何故かやたらフェリシアに懐いていた子だ

獣人の方はオルティノでジョディと言う息子がいたはずだ


こいつらがどうしてこの街によりにもよって両親の家にいるんだ

「どうして、こんなところににいるんだ」

「それは私のことですか。だとしたら簡単です。ここの家主に招かれたからです」

少女にはかつての面影はなかった

人形のように何の感情もなく、こちらの質問に答えているかのようだった

それに家主とは父上のことなのは明白だ

だとしたら父上とオルゲンは繋がっているのか

「おい、そんな言い方はないだろう。この人は俺の恩人なんだ」

オルティノの様子は前回あった時とあまり変わらないようだ

モンタグ村に行くようテオが言っていたから、もしやと思っていたが


「もうマティどうしたのよ、叔母様びっくりしていたじゃない」

「来るな」

思わず大声を出してしまった

それにラウルとジゼルが反応してソーニャ様の前に立つ

「何を警戒しているつもりかわかりませんが、あなた達に危害を加えるつもりはありませんよ」

ロゼッタはやや呆れ気味にいう

「状況を説明しろよ」

ラウルが叫ぶ

「こいつら、モンタグ村の住人だ」

その一言で俺の言いたいことをラウルは理解したようだが、眼の前にいるのが少女しかいないことに

「この子達二人ってわけじゃないんだろ」

「今は私達二人ですよ」

ラウルの問に少女が答えた

「他の村人は」

「街を見て回るそうですよ」

「なんで観光なんかしてんだよ」

「私が知るわけないじゃないですか」

オルゲンのような大柄な人間は嫌でも目につくだろう。そんなリスクを考えないのか

「なるほど、街の人間もグルってことか」

ラウルの言葉に気づく

そもそもこの街にいるのは剣の国の人間だ

オルゲンは元々剣の国の有名な戦士だ。この街の人間で知っているひとも当然いるだろう

この街が剣の残党を受け入れている

それは父上たちも含めてということか

そもそもがおかしな話だったんだ

よその国から来た区長をそう簡単に受け入れられるものじゃない

その状況に察するに父上とオルゲン達剣の残党とのつながっている

「ちょっとマティ、いきなり何なのよ。お客様に失礼じゃないの」

「母上も何を言っているんだ。この子はモンタグ村の子だ」

「だから何って言うの、女の子相手に情けないわよ」

「他に仲間がいるかもしれないだろ」

「いてもあんた達を狙ったりしないわよ」

根拠を聞こうと思ったがやめた

俺が今何よりもしなければいけないことは、ロゼッタとオルティノから情報を得ることだ

あと、これ以上母上の口から何も聞きたくないってことも正直あるが

「取り乱してすまなかった」

「いえ、気にしてませんので」

「ありがとう」

少女は本当に気にしていないようだった

「ソーニャ様お久しぶりです」

「オバサマも元気そうで何よりですわ」

「今お茶の準備をしますので、人数は6人でよろしいですか」

母上は俺達を数えながら言った

「わしの分は結構です。ずっと馬車の中にいたので体が凝って仕方がない少し周囲を歩いてこうと思います」

「あら、そうですか。お一人で大丈夫ですか」

「何これ以上若い人の邪魔を支度ありませんので」

「でも始めての街で1人は危険だわ。内の兵を1人つけます」

「これはかたじけない」

すると母上が家にいる使用人に声をかけるとすぐに騎士がきた

「悪いけど、この人に道案内をしてあげてくれないかしら」

騎士はかしこまりました奥様とすぐに了承した

「お嬢さん一つお聞きしたいのだが、その村人の中にはテオという赤髪の男は含まれているのかね」

「はい、テオは今オルゲン達と共にいます」

先生はありがとうと言って騎士と外に出た


何より驚いたのは、テオの手掛かりをあっさり見つかったことだ。自治区内にいるとは思っていたが、まさかこの街とは


2階からなんの騒ぎだと父上が降りてきた

「マティじゃないか。久しぶりだな。いきなりどうしたんだ」

父上は俺との再開をただ喜んでいるだけのように言うが、すぐに事態を察して

「休暇を取って遊びに来てくれたわけじゃなさそうだな。他の方も立ち話ではなんだ。部屋の中へどうぞ」

俺達は応接室の中に入っていった


「さて、要件は何だね」

まず最初に父上が口を開く


聞きたい事が山程あるが、何から聞いていいかわからない

それにもし父上が良からぬことをしていると知ってしまうのが怖い


「父上は、俺や王や国の敵ではないのですよね」


この質問に父上は目を丸くする

その様子に内心焦りが生まれる


「私が、マティやソーニャ様、王を裏切る訳がないじゃないか」

「ならこの状況はなんですか」


この街にはモンタグ村の人間がいて、テオがいてこれを区長であり、騎士である父上が認知しているこの奇妙な状況はなんなんだ


「全ては、我が王のためだよ」

父上は真面目な表情で言う

「王とは誰のことですか」

「それはこの国の王、ブレイズ・ルネール=ド・シュヴァリエ様のことだよ」

こちらの意図を察してか、フルネームで答える

「あの方はもう殺されたんだ、しかもそれにテオが関わっているんですよ」

「その辺の事情もテオ君からいろいろ聞いているよ」

「なら、どうして」

「我が王は本当に殺されたのかね」

「どういうことです」

父上が意味ありげな質問をする

「ブレイズ様は、私に剣の国が立ち直る手助けをしてほしいとご命じになられた」

「え」

「あの方は元々戦争に心を痛めておられたのだよ。報復による戦争を仕掛けた先王を必死に止めようとしていたんだ」

そんなこと考えたこともなかった

俺が生まれて間もないころの話で、ずっと当たり前のことで良いか悪いかなんて考えたことがなかった

「だから先王がなくなり、即位した後すぐに私を区長に任命した」

「私の区長としての仕事は1つだ。もうあんな悲劇を繰り返さないためにも、この国の人を支援することだとね」

その結果大規模な暴動もなくこの自治区は安定していた

それが王の本当の狙いかは分からないが、俺くらいの年齢だと戦争についてあまり考えないでいいくらいにはなったということか

「それにテオ君はお前の友達なのだろう、なら信じなくてどうする」

「俺だって信じたいさ、でも俺はあいつのこと何も知らないんだ」

「知りたいと思ったなら、これから知っていけば良い」

父上の目はずっと優しいままだ

王の死のこと、テオがそれに関与していることはほぼ間違いないそれでも父上は俺にテオを信じて良いという


「王の死についてはどうなんです。誰も王の力を継承出来なくて国民にすら公表できてないのですよ」

言ったすぐにしまったと思い、ソーニャ様を見た。彼女は辛そうに俯いていた

何て声をかけていいか分からないでいると


「ソーニャ様、息子の無礼をお許しください。何、あなた達ご兄弟は皆素晴らしい方だ。力がないからと自分を責めてはいけませんよ」

父上がソーニャ様を励ましてくれた


あのーとラウルが気まずそうに手をあげた


「結局、区長殿は王の死について何か知っておられるのですか」


「いや何も分からない、テオ君が教えてくれないからね」

切り詰めていた空気が一気に緩む

「どういうことですか」

「だから、何も知らないのだよ」

ならと言いかけてやめた

父上が真面目な顔で何か言うのがわかったから

「1年ほど前かなブレイズ様かれ書状が来てね。そこには自分がもうすぐ亡くなるであろうことと、自分を殺したという男を助けてやってほしいという内容が書いてあったのだよ」

殺した

「テオが王を殺したのですか」

「彼はそう言っているが、私は違うと考えているんだ」


理由を尋ねようとしたところで、ボンっと遠くとこの家の近くで大きな爆発のような音がした

何事かと窓から様子を見ると土煙であまりよく見えない


玄関の方から激しい音がなった

家の中に無理やり誰かが入ったようだ

すぐにソーニャ様を扉から遠ざけると

廊下から男がやってきた

男は2メートルほどの身長としっかりと鍛え込まれた体をしており、ただ者ではないことは一目見て分かった


その騒ぎに護衛の騎士たちも気づいたようで男を取り囲む

「あなたが区長殿か」

父上を指さして言う

「そうだが、なかなか礼を欠いた入り方だな」

「何分時間がないもので、申し訳ない」

男は騎士に取り囲まれても平然としている

そして、口を開いて尋ねる


「テオ・クレマンはどこにいるのだ」

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