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nobody   作者: 福郎 犬猫
2章 少年は我が身で世界に跡を残す
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会敵2

しばらくしてソーニャが落ち着いた

「ありがとうフェリシア、ちょっと元気出た」

そうニコリと笑う彼女に私も安心する

「お父様も亡くなってしまうし、次の王様も決まらないしいろいろ参っていたから」

申し訳なさそうに言う言葉が引っかかる

「王様が決まらないってどういうこと」

「あ」

彼女は口を滑らせてしまったらしい

「いいんだソーニャ、彼女は君の友人だ変に隠し立てしなくていいよ」

「実はね、僕たち兄妹は誰も王の力を継承していなくてね」


王の不在

そんな事があるのだろうか

いやそれよりも王がいないということは、別の国の王に対抗する術がない

剣の国のようにこの国も滅びてしまうかもしれないことだ

「だから、この会議室で聞いたことは他言無用で頼むよ。フェリシア君の」

「言ったら、懲戒ものだがな」

ベルトラン隊長とガスパール隊長が横から注意をする


テオを探すだけでいいと思っていたが、事態はもっと深刻だ

私はこの国にいるおじいちゃん、おばあちゃん、コレット叔母さん、調査隊のみんなや騎士団の人、ソーニャにノルベルト先生

大切な人がたくさんいるのだ。そのために出来ることをしよう

まずはフォルカーに会おう


会議室を出る前に先生の様子を見に行く

先生は何か思いつめているようだった

「先生、大丈夫ですか」

「ああ、すまない。心配ないよ」

私が声をかけるとハッとして反応する


「私のことなぞどうでもいい。君は君の仕事をしなさい」

「そんなこと言わないでください」

「すまない。気が動転いるようだ」

先生は私を見る

「君はドミニクとはあまり外見は似ていないと思っていたが、目はそっくりなんだな」

いきなり父の話にうまく反応できない

「結局君には魔術をちゃんと教えてあげられなかったが、これだけは覚えてくれ。君はもっとワガママでいい。そのために魔術を使いなさい」

「どういうことですか」

「特に君の父がそうだった。自分のために魔術を使う時はどこか後ろめたそうにしていた。だから、みんなのためだけじゃなくて君のために魔術を使いなさい」

先生に次もあると何故か言えなかった

今の私に先生が言いたいことの全てがわかるわけではないでも、なぜかその言葉はしっかりと刻み込まれた気がする

それだけ先生の目は優しい目だった


会議室をあとにした私はヨランダさんとベルトラン隊長とまずは部隊室に行く


「フェリシア、戻ってこれたのか」

マティアスが入ってきた私に嬉しそうに駆け寄ってくる

「フェリシアちゃんがいないから、俺とても悲寂しかったよ」

ラウルさんが冗談のように大げさに言う


二人の反応で自分がいつもの環境に戻って来たのを実感できる


「何か変わったか」

「え」

「いや、いつもより堂々としているというか」

「いろいろあったからかも」

マティアスの顔が少し暗くなる

テオのことは彼らも知っているのだろう

「さ、みんな席について任務の話をします」

ヨランダさんに促されて私達はそれぞれの席につく

「皆も知っている通り、王殺害の犯人を我々で調査する。そのためにも重要参考人であるテオ君の足取りを探る」

ベルトラン隊長が話し続ける

「まず彼がどのようにして牢から出たかだが、それを知っているの可能性があるのはフォルカーだ。彼は理由はわからないがフェリシア君をご指名だ」

「それよりあいつはもう王を出たんでしょ。何処に行ったか探したほうがいいんじゃないですか」

「彼は十中八九自治区にいる。関所からの報告では昨晩関所の周りだけ霧がかかっていて、門番二人が眠らされたとのことだよ」

「なら早く自治区に行ったほうが」

「それは出来ないわ。自治区に行くには王の承認が必要なの」

王が不在ということは、どこで処理するかわからないということなのか

「そんな悠長なこっと言ってていいんですか」

「仕方がないわ、私達だけが勝手をするわけにはいかないもの」

これにはマティアスはともかくラウルさんも不満があるようだ

「それに、テオ君のことを知るということは真実に近づくことだと僕は考えているんだ。地道に確実に行こうじゃないか」

他の隊員は渋々納得したようだ


フォルカーへの尋問は、私とヨランダさんとマティアスで行うことになった

「そういえば、私フォルカーとはまともに話したことないんですけど、どんな人なんですか」

「えっとね、私も会ったのは一回きりだからそこまで詳しいことはわからないけれど、勝負好きで、一目見ただけで相手の情報を読み取る観察眼に優れていて、とにかく強いということくらいかしら」

「観察眼ってなんのことですか」

「相手の動きや立ち姿を見るだけで、武器や正体がわかるらしいの」

「それ本当なんですか」

呆れた口調でマティアスが尋ねる

「本当よ、現に私も剣すら抜いていないのに騎士だってバレたくらいだし」

「本当なんですか」

マティアスは今度は真面目な口調で言う

「あの、テオについては」 

「そうねたしか悪い意味で完成されているとか言ってたわ、あと剣以外の武器も使えるって」

前半の内容に関してはよく分からないが、剣以外のものを扱っているテオは見たことがない

私と会うまでに習得したということだろうか

「意味がわからないですね」

「それも含めて本人に聞くしかないわ」

答えてくれるかはわからないけどと言うヨランダさんについて、フォルカーのいる牢獄を目指す


牢獄につくと入口の前で止められる

事前に手続きをしていたようで、特に問題もなく入れた

牢獄の中はよくある石造りでベルヌーイの屋敷の牢に似ている。といってもあそこまで環境は劣悪でないが

私達は看守に案内されて上の階に上がる

どの階も看守は定期的に巡回しているようで、仮に牢を抜けたとしてもそう簡単に出られそうにない

「昨日もこんな感じだったんですか」

「ああ、いつもこんな感じだ」

「それならあいつが出てもすぐに気づきそうなものだけど」

「テオ・クレマンの牢の鍵はしっかりしまっていたさ。中の本人だけがいなくなっていた。ご丁寧に寝具を丸めてな」

鍵が閉まっていたのなら、どうやって出たのだろうか

「それでどうやって出たんですか」

「そんな難しいことはしていない、鍵を開けて出てから自分で閉めたんだ。どうやって鍵を入手したかは分からないが」

「それって協力者がいるかもしれないってことか」

マティアスが声をあげる

そうだテオとはいえ針金などで牢屋の鍵は開けられないだろうし

「鍵は何処に」

ヨランダさんが尋ねる

「地下の部屋に予備がある。それをやられたらしい。朝確認すると5本ほどなくなっていた」

「それなら他の脱走者」

「それはいない、今日急いで全牢屋を調べたから間違いない」


そうなると協力者が地下の鍵を入手して、誰にも見つからずテオの牢屋を開けたということになる

そんなこと出来る人がいるのだろうか。少なくともテオは調査隊以外ではまともな交流はない

「それって密偵が複数いたってことですか」

「断定はできないけど、そう考えるのが妥当ね。でも少なくとも王城や騎士団には行方不明者は確認されていないわ」

「王都にいる人間はそれだけじゃないしな」

話している内に最上階につく

そこがフォルカーのいる場所

テオがいた場所だ


「フォルカー、起きろ尋問の時間だ」

へいへいと牢の中のフォルカーは起き上がり、こちらを見る

「おお、なかなか速いご対面だな。外で何か会ったのか」

私を見るなりフォルカーが言う

図星だが、教えるわけには行かないので何も言わない

「そう身構えるなよ。見ての通り俺は牢の中だ。それにしても嬢ちゃんは話すのは初めてだな。お、騎士のねえちゃんもいるのか、そっちの男は知らない顔だな」

フォルカーは楽しげに一人で話している


「あの、そんなことよりテオのことを聞きたいんですけど」

「ああ、そういえばそれでフェリシア嬢ちゃんを指定したんだっけ」

「どうして私なんですか」

「それよりも聞きたいことがあるんじゃないのか」

尋問みたいなことは、もとより得意ではないのでペースが掴めない

「それでテオ君はどうやって牢を出たの」

「俺は嬢ちゃんにしか話せないって言ったんだが、まあいい」

フォルカーはニヤけた顔をやめる

「テオは協力者がいてよ、そいつが鍵で開けた。俺も連れてけって行ったのに断られちまったよ」

協力者やはりそうみたいだ

「その協力者が誰かわかりますか」

「若い男だったぞ。少なくとも戦場にいたような年齢じゃない」

「他にはなにかわからないんですか」

「そうだな。たしか、ジギとかジャンとかって呼ばれてたっけ」

ジャン

以前調査に協力してくれた使用人のジャンのことだろうか

「それはどんな人ですか」

「無茶言うなよ、俺が王都の人間なんか分かるはずないだろ」

自分で確かめるしかないのだろう

ねえとヨランダさんが声をかける

「あなたは知っているんじゃないの、テオ君が剣の王って」

それを聞いたフォルカーはガハハと大きな笑い声をあげた

「あいつが剣の王って、それはない。絶対ない」

「どうしてそんな事が言えるの」

「見たら分かるはずだ、剣の王が俺より弱いわけねえ。それにあいつが剣の王なら俺はあのとき殺されていた」

「どういうことですか」

「そうか、嬢ちゃんは気絶してたんだったな。あいつはあのとき俺を殺すつもりだったんだよ。騎士に邪魔されたがよ」

テオがどうして、絶対ないとは言い切れないが

少なくとも理由はないとしないはずだ

「どうしてか、わかりますか」

「さあな、もし知っていたとしても教えない。俺をここから出してくれたのなら考えてもいい」

「そんな馬鹿みたいなこと出来るわけ無いだろ」

「そう難しくないはずだ。騎士に俺を牢屋に入れる事ができるだけの理由がない」

「どういうこと」

「今はこいつは危険人物として勾留してるだけなの。こいつの罪の証拠は何もないの、ミッテランも保身のため話さないし」

ミッテランか立場は弱くなってもそれなりに影響力はあるらしい

「なあ、いいだろ。ここから出してくれるなら嬢ちゃんの下僕としてでも何でも働くからよ」

そこでどうして私なのだろうか

「さあ、次の行き先も決まったことだしここに用はないわ」


私達がここを離れようとすると

「待て」

フォルカーが真剣な口調でそれを止める

彼の方を見ると

「テオに会うなら急いだほうがいい、あいつは他人の命も自分の命も何とも思っていないような顔をしていた。あいつ目的のたまなら死ぬぞ」

「どうして」

「理由までは知らねえよ、でも俺を側に置けばわかることは多いぞ。それに戦力にもなる」

フォルカーはにいっと笑った


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