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nobody   作者: 福郎 犬猫
1章 少女は世界を知る
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王を伐つ1

騎士に連れられて俺は騎士団が管理する王都の牢獄の檻の中にいる

この牢獄は上の階に行くほど、その罪は重い

最上階に連行された俺に対して騎士団上層部はよっぽどの確信があるようだ


王都にについてすぐに俺は剣の残党との関与を疑われて逮捕された

調査隊の面々は抗議の声を挙げてくれたが、王の捺印がある書状を前に何もすることが出来なかった


一刻ほどたっただろうか

その時に看守に呼ばれる手を縛られて連行される

そして一つの部屋に連れられるそこで取り調べを受けるようだ


取り調べの相手は

クリストフ・ド・ルクレール

確かヨランダの騎士学校時代の後輩で若くして隊長になったとか

その年でガスパールに並ぶ役職とは立派な者だと関心する


「何か弁明はあるか」

「何を疑われているかわからないのに、どうしたらいいんだ」

ふざけるなとクリストフは机を叩いた

それに驚いたのは俺ではなく、同席していた騎士だった


「連行した時に言った通りだ。お前には他国に情報漏洩した疑いがある」

「剣の国は、今は国じゃなくて自治区だろ」

クリストフは俺を睨む

「じゃあ、最近夜な夜な何をしていた」

「何も、自室で勉強してたくらいかな」

「お前がここのところ毎晩寮を一人で抜け出しているという証言が取れている、何をしていた」

「さあ、夜の散歩だよ」

「更に王城の使用人がお前が怪しげな連中といることを見たと言う物がいる」

「そいつが嘘をついている可能性もあるだろ」

「そうだな、なら毎晩何をしていたか。教えてくれ」

クリストフが勝ち誇った顔をしていた

「娼館に行ってた」

「な」

予想外の顔にクリストフは間抜けな声をあげる

「納得してくれたか」

「どの店だ」

「まさかそこの女に俺と何をしていたか、聞くわけじゃないだろうな。騎士様は紳士でないと」

時間になったようで取り調べは終わった

クリストフは最後まで俺を疑いの目で見ていた。いや確信していた言ってもいい



朝何もないのに起こされて朝食を食べる

昼前から取り調べを受けて、長い時は夕方まで行われる、そして夕食を食べて寝る

そんな一日を数日過ごす


ここでの食事はやはり牢屋の飯という感じで簡素で味がしない

取り調べもほとんど同じ内容を聞かれるので

同じ返答を毎日する

数日を過ぎて、この生活にも慣れ始めたある日


「よう、兄ちゃん久しいな」

奇妙な隣人が出来た

フォルカーは話には聞いていたが、本当に生きていた。重罪人なのは間違いないのだからさっさと死刑にでもすればいいのに

迷惑なことにフォルカーはやたら俺に話しかけてくる。その内容はどれも他愛のない物で安心するが、その度に看守が怒鳴り声を上げながら俺達のところにくる

本当に勘弁してほしい


その晩

この牢屋には一応窓がある

といってもとても俺の手が届くような高さにないし、届いたとしても鉄格子があるので出ることが出来ない

仮に出ることが出来てもここは地上のはるか上だ、落ちたら間違いなく死ぬ


星を見るぐらいしか出来ない窓からバイアーが牢屋の中に入ってくる。

バイアーが俺のところに現れるのは久しぶりだ

久しぶりの再開に心が暖かくなるような気がした

バイアーの足に紙が括り付けられていたので開いて中を確認する

どうやらこの牢獄生活ももうすぐ終わるらしい

その紙がを丸めて窓から捨てる

用が済んだバイアーは珍しく今日は俺から離れないようだ

バイアーを看守から見えないようにして横になる


次の日の朝看守の声で起きるとバイアーの姿は既になかった。あいつは結構賢い鳥だ


それでいつも通り取り調べが始まる

今日の相手はがガスパールだった

これには流石に驚いた俺と親交のあるベルトランとガスパールが来ることはないと踏んでいた

「やあ、元気にしているか」

ガスパールが言葉を探しながら問いかける

「ああ問題ない、ここでの生活にも慣れてきたよ」

「そうか、すまなかったな」

「何が」

「こんなところに入るはめになって」

同席していた別の騎士が咳払いをした

ガスパールはあくまで俺を取り調べに来たのだ

恐らく無理矢理ねじ込んだのだろう

「済まないが、始めさせて貰う」

「どうぞ」

「オルゲンを筆頭にモンタグ村の村人が全員行方不明だ、何か知っていることは」

「何も、俺はヴェストにいたんだぞ。それも騎士団の命令で、知りようがないだろ」

「そうだな」

ガスパールはあっけなく認めた

「次にお前が夜に寮を抜け出していた件だが、今までの調書では一貫して娼館にいたと言うがこれは本当か」

「嘘だよ」

ガスパールの目が大きく見開く

「なぜそんな嘘を」

「腹が立ったんだ。こんな仕打ちをされているんだぞ」

「では、本当はどこで」

「アースレンに行っていた。馴染みの店なんだ」

「そこで何をしていたんだ」

「何って、酒を飲む以外であの店ですることがあるのか」

「酒って、お前はまだ子供じゃないか」

この国で酒が許されるのは18からだ

「まあいい、王城の使用人が見た怪しげな男について心辺りはあるか」

「そこの店の店主だろ。あの男はそうとう変な格好だから」


ガスパールは何かを考え込んでいるようだ

「違うんだよな」

ガスパールは確認した。恐らく信じているというよりかは否定してほしいのだろう


たしかに俺が密告者という確固たる証拠はない、証言といってもあやふやなものばかりだ。かといってやっていないと証明するほうが大変だ。騎士は俺の出自を調べているはずだ

俺がフェリシアの家に行ったのが、9歳の頃だからそれ以前の経歴は不明だ

もちろんそれだけで密告者と決めつけるのは馬鹿げた話だが、騎士団の動きはどうもおかしい

ガスパールもそれに違和感があるようで、俺がここで否定すればきっと力になってくれるのだろう

「さあな、どう思う」

ガスパールの目がまた大きく開いた

「お前は一体何を考えている、今お前がやっていることはまるで時間稼ぎだ。何かを待っているように取られるぞ」

「それではお前の疑いが濃くなるだけだ。今調査隊でお前の無実を証明するために動いているんだ」

そこまで言ってガスパールは黙ってしまった

俺の様子が変わらないことを理解したガスパールはまた来ると言ってその場を後にした





牢獄から出ると旧友が出迎えてくれた

彼はずっと自分を待っていたようだ

「どうだった」

「元気そうにしていたぞ、まるでこれが当たり前のようにだ」

「違う何を話していたんだ」

普段は飄々としている旧友が珍しく焦っているようだ

こいつは昔から仲間思いのやつだった。だから出世よりも仲間と忠義を選んだのだ


「おい、ガスパール」

「落ち着けよベルトラン、場所を変えよう」

まるでいつもとは逆の立場のようなやり取りをした


「俺にはわからない、あいつが何を考えているか」

「どういう意味だ」

「言葉通りの意味だ、あいつは自分の無実を証明する気がないようなんだ」

「そんな事あるか、あの子はあまり自分の考えていることを悟られないにする節はあるが」

「あいつ、何かを待っているようだ」

「お前は、テオ君が密告者だと判断しているのか」

「わからんと言っただろ、それはお前も同じはずだ」

本人のあの様子からその是非を判断することは出来ない

「フェリシアの方はどうなんだ」

「彼女も何も知らないようなんだ」

フェリシアも現在取り調べを受けている。テオとは違い騎士団本部で行われており、軟禁のような状態だ

テオ・クレマンは7年前から彼女の家で世話になったと聞く。では生まれてからの9年間はどこで何をしていたか誰も知らない

本人も語ろうとはしない

ただ彼はまだ16なのだ、そんな子供がだいそれたことを出来るとは思えないが

「話を聞くなら、彼女の家族の方が適切なのかもしれない」

ベルトランは言う、何か知っているのなら彼女の祖父母だろうか

フェリシアも両親を早くに失っているようだから

私達は身動きが取れない状況になった

王はどのようにお考えなのだろうか

夕日をただ見つめることしか今の私には出来なかった





夜になると窓からまたバイアーが来た

昨日は同様足に紙が巻き付いていたので、それを読む

そして横になる

バイアーこいつにも色々と苦労を賭けた

主に連絡役としてだが、こいつのお陰で長距離の連絡がたやすくなった

今となっては俺の本当の名を知る唯一の家族

寝静まる時間になるとかすかに足音が聞こえた

それは見回りの看守の物ではなく、急ぎながらもあまり足音を立てないようにしているものだった

それがどんどんこちらに近づいてくる


「起きろ、時間だ」


声がするので振り向くとそこに立っていたのは、モンタグ村のときに情報を提供してくれた使用人のジャンだった

そこにはかつての明るい表情はなく、苛立ちを見せていた


「おい」

「わかってるから、早く開けてくれ」


ジャンはどこから入手したがわからないが鍵を持っており、俺の牢屋の扉を開けた


「ようジャン、久しぶりだな」

声をかけると、ジャンことジギは俺を睨む

ジギは、俺と同じく王都に潜入していた仲間だ

上手く取り入って城の使用人となっていた

真面目な性格が災いして、だれも知りやしないのに彼は普段とはかけ離れた性格を演じていた

といってもこいつとジギとして会うのはこれで2度目なので、ほとんどはバイアーによる連絡しかしてこなかったので、彼のことはあまり知らない

「早く脱出するぞ」

彼の言葉に従い歩き始めた


「俺も連れて行け」

隣の牢屋にいるフォルカーが俺たちに気づいて声を掛けた

「やだね」

「そうか、ならいい」

以外にもあっさり引き下がった

「教えろ、お前は何者だ」

「教えるわけ無いだろ」

そう言って立ち去ろうとしたが、フォルカーの真面目な顔につい足を止める

「お前は何者なんだ、まさか本当に剣の王とだとでもいうのか」

あまりにも真剣に聞かれるので、それが可笑しくてつい口が開く

「それを確かめたいなら、フェリシアを守れ」

「フェリシア誰だ」

「お前を2度ぶっ飛ばした魔術師だよ」

「そいつを何で」

「自分で考えろよ」

その場を立ち去る

俺たちはその後牢獄を出て、王城へと向かう

王に会うために

「本当に上手く行くのか」

ジギが信じていない様子で尋ねる

「約束も取り付けたし何とかなるだろ」

ジギはまだ信用していないようだ


一刻も早く王の元に行かなければ、邪魔が入ると計画が頓挫する


俺たち静かな王都を走り抜ける

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